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侵された怪物

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更新不定期で1話1000字前後の予定です

 ユーリ=ブリタニカ。元テラー派将校でテラー派きっての過激派でテラー派に仇なす者に対しての世界最強の暗殺者。暗殺任務は実行1週間前に必ず当人に予告される。1週間を私兵を雇うのに費やそうが、逃げに徹そうが、諦めて余生を楽しもうがそれは本人の自由だ。だが必ず予告通りユーリは殺す。例え武装した100の傭兵も皆殺しに遭い、世界の果てに逃げようとも奴の手からは逃れられず、家族と団らんしていようとも容赦ない。果てに厄介なのが奴は必ずターゲットの後ろめたい事の証拠を握り表向きは”粛清”扱いになっていることだ。

 だが当然我々アース派も黙ってはいなかった。我々は”何度も”奴を死刑に処した。だが現行奴を殺すことはできなかった。絞首刑で1月吊るしても奴の鼻歌は止まらなかった。電気椅子は彼をうたた寝から目覚めさせることもできなかった。ガス室では『水が出ない』と看守に文句を言った。火刑では『冬場には心地いい』と嘲笑った。

 奴は罪をでっち上げられ死罪になる度、処刑から耐え抜きそして逃げ出して自身の無罪を証明してきた。血の粛清をもって。

 当然奴は最早人間じゃない。奴の兄姉も人間離れしていると言えどもまだギリギリ人間の枠組みに当てはめることはできる。だが38口径マシンガンではもう傷1つ付けられない奴は最早人間じゃない。『悪魔体質』、奴の特別な体質を研究者はそう呼んでいる。原理は本人すら全く分からないし、その機能も全て把握しているわけじゃない。だが奴の性質を一言で言ってしまえばとても高いレベルの適応資質だ。暑い所に行けば暑さに耐えうる素質を獲得し、寒い所に行けば寒さに慣れる。毒を食らわばすぐに抗体が出来、身体に不都合が出ればすぐに回復する。弾丸で蜂の巣になろうともすぐに塞がり、2度と同じ攻撃で怪我を負わない。

 奴は世界史上最強最悪の怪物だった。




「お待ちしておりました、ナオ=レンド大佐。大佐の帰郷の航海はこのユーリ=ブリタニカが艦長を務めるタイタニカ号で行います」

「アナタNoアン全HaホショウしマSU」

 副官とおぼしき男が紹介するのは震える足腰のせいでもう杖を手放せないこの男がかのユーリ=ブリタニカ、私が殺したくて仕方のなかった男だ。最早言葉をろくに話すこともできない醜い姿だ。奴が世界最強と言われたのも5年前から2年前の話。奴がテラー派を抜けて中立派となってから酒に、薬に、女に溺れてかつての強さなど夢のまた夢に消えてしまった。杖を突く右手がアル中で震えているのがその証拠だ。

「宜しく頼んだ、ユーリ少佐」

最早奴の様な小物には興味ない。奴からテラー派を礫壊させる証拠を手に入れる。それが帰郷に見せかけた私の本当の任務だ。

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