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プロローグ

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新暦2014年。人は地球のみならず太陽系すら飛び出した。新技術、アーシング技術によって人はどんな星でも生命体が住める環境に変えることができるようになったのだ。 人々は数多の星に住み着き、その数を爆発的に増やした。

そうした動きの中でできた宇宙連邦。その役目は全宇宙の平和維持だ。時には対話で。時には武力をもってして。だが宇宙連邦も一枚岩ではなかった。幾つかある派閥の中でもアース派とテラー派の二強がいがみ合っていた。




私はとあるアース派上層部の別荘の警護にいた。

「ナオ=レンド少尉、異常ありません!」

ナオ=レンドバトルマン開発室室長、それが私の名前と肩書きだ。いや、宇宙連邦軍少尉という肩書きもあるが私はもっぱら開発室に籠りきりだ。

私は少し貧しい家庭に生まれた地球生まれの普通の女の子だった。しかし5歳に転機を迎えることになる。

ある日テレビを見た。アニメだったか特撮だったかSFドラマだったかは忘れてしまった。ともかくそこで私は画面の中の鉄の怪物、バトルマンに魅せられた。バトルマン、正しくは遠隔操作型自立人形。その鉄の巨人は人を圧倒する起動力と怪力、そして武装で悪の組織を壊滅させていた。現実の世界でもあれらの活躍はよく耳にしていた。

私はその後記憶には無いがフラフラと父の仕事場、廃鉄処理場に向かったらしい。そしてバトルマンを造り上げた。いや、それをあのテレビのバトルマンと呼ぶには余りにお粗末で脆い代物だった。それこそ成人男性1人にすら勝てないような脆弱な代物だった。それでも回路とプログラミングは完璧、自動人形と呼ぶには十分な作品だった。

その事が話題となり私は5歳で有名大学に入学、翌年には卒業し、そのまま宇宙連邦に引き抜かれエリートの名を欲しいままに研究室で過ごしてきた。

そんな私が任務で違う星に出向くことなんてあり得ないはずだった。出向いた理由は勿論ある。ユーリ=ブリタニカ、彼がこの上層の人間の襲撃又は誘拐に絡んでいるという情報が入ったからだ。ユーリとは私と同じ時期に軍に入った同期のエリートらしい。らしい、というのは彼の情報が極端に少ないからだ。

ブリタニカ家はとても有名な名家でユーリの二人の姉と兄も軍で少将、中将に上り詰めている。彼の父親は裏社会を牛耳っていると言われている。だがブリタニカ家が有名なのはそんな理由ではない。この家は合法的な人間創造に成功したからだ。より優秀な個体を、雄と雌を掛け合わせる。それを新暦が始まる前から行ってきたブリタニカ家は最近になって遂に人の域を越えつつある。長女ユニ=ブリタニカは近代スポーツの世界記録を全て塗り替えたし、長兄ユリア=ブリタニカは素手で8m級のヒグマを仕留めたことで有名だ。

そんな有名家系で話題性十分の次男坊ユーリ=レンドと同期で当時から共に天才ともて囃された私は密かに彼に対抗心を抱いていた。そして何より周りに私が彼よりも優れていることを証明したかった。私が手塩をかけて造り上げたこのバトルマンで。

ピピピピ!

けたたましい警戒音が端末から鳴る。近くを不審車が通った事を伝える音だ。

「A班、B-4地点を不審車が通過。身元を確認せよ」

数秒後、無線からは銃撃戦の音。しかし彼らは囮だろう。何せこんなところを目立つように移動しているのだ陽動としか考えられない。

私の予想は的中する。がさごそと中庭の草むらが揺れる。玄関に立っていた私はコンピュータ端末からバトルマンを四機呼び出す。

私特製のこのバトルマンは従来の物とは全ての性能において一線をを画す。そして何よりも特筆すべきなのはバトルマンが纏っている青白い光、非実体シールドだ。私の発明したそれは核シェルター並みの防御力を誇る。

「そこにいる者、出てこい!さもなくば撃つ!」

私は同時に4機のバトルマンを操りながら警告する。任務は大物アース派の警護と脅威の排除、できれば生け捕りにして情報を絞りたいが最悪殺してしまっても構わないだろう。

 バトルマンの操縦は一機ですら難易度が高い。特に高速かつ精密な動きは遠隔操作では難しいのだ。そのために操縦の難易度が低いバトルアーマー、つまりバトルマンを纏う兵器も他の星ではよく見られるほどだ。そんなバトルマンを4機も同時にそして十全に扱えるのは世界広しと言えど私だけだろう。

「ちくしょう!」

計画がばれていたのが悔しかったのか他に原因があったのか知らないが10人ほどの男が銃を片手に私に向かって発砲してくる。私はすぐさま1機のバトルマンに非実体シールドの展開をさせる。38口径じゃシールドは破れない。同時にもう1機には攻撃指令を出す。指先を奴らに向ける。

ダダダダダ!

指先から弾丸を発砲。直径5cmの鉛の雨は彼らの肉体を引き裂くには十分な火力だった。だがこれで終わりではないだろう。奴らは多分セカンドプランを用意しているはずだ。

周りにもう敵がいないことを確認してから上空に飛ばしてあるバトルマンのカメラ報告に目を向ける。不審車両が4台。移動中なのが3台で残り1台が停止している。その4台の車に入っているのが残りの全戦力だろう。他の工作員らも全員制圧されたようだ。このまま1台に1機バトルマンをぶつけてもいいのだが時間の無駄だ。早く済まそう。部下から連絡は入っている、何人かの捕虜は手に入った。だがこれ以上捕まえても口を割りそうにないし、牢屋にぶちこんでもこういった輩はすぐにコネで出てくるだろう。・・・残りは殺すか。

上空にいるバトルマンが車をロックオンした瞬間に小型ミサイルが4つ発射した。クイックショット。バトルマン操縦では中々できないAクラスの技術。当然狙いは車だ。火力は充分に手加減した、爆ぜた車からは運よく生き残った者が何人か這い出てくるだろう。まあ、全身火傷かしょうは免れんだろうがな。

「ちっ、どういうことだ!?」

 しかし車から弾き出されたのは死体だけだった。それも顔面を鈍器で打ち抜かれたような酷い死体だ。私のバトルマンで負った傷じゃない。・・・他に誰かいる。

 そう確信した私はすぐさま端末を操り上空でサーチさせているバトルマンを透視・サーモグラフィーモードに切り替える。いた、私の真後ろの塀に座っている私と同い年ぐらいの少年。

「何者だっ!」

 すぐさまバトルマン2機が銃口を向ける。

「・・・・・・ナオ=レンド。階級は俺と同じ少尉。そして俺と同じエリートで俺と同じ天才・・・。期待外れだな」 

「もう一度言う。両手を頭の後ろで組み、うつ伏せになれ。そして名前と階級と所属を言え!さもなくば撃つ。2度目は無い」

 軍服から奴がテラー派だとは分かった。

「ユーリ=ブリタニカだが・・・投降の意は無い。そもそも拘束される言われも無い。・・・いや、むしろお前を公務執行妨害で逮捕する」

「ユーリ=ブリタニカ!貴様を誘拐未遂犯として逮捕する!!」

 いや、逮捕と言ったが捕まえる気は無い。この場でこいつは殺す。こいつの目を見れば分かる。こいつは異常だ。瞳には何も映ってない。多分息を吸って吐くように人殺しができるような奴だ。加減して生け捕りにしようとするとこっちが危ない。たとえ相手の武装が地球の旧日本に伝わる日本刀だけだとしてもだ。

 私はバトルマン2機をあいつを蜂の巣にすべく操る。

「死ねぇっ!」

 ドドドドドド

 毎分2000発の鉄の豪雨が奴に降り注ぐ。が、

「速すぎる!?」

 怪物は全てかわした。1発もかすらずに。奴の動きは軍で習う『対重火器用回避行動』じゃなかった。つまり奴はこの鉛玉を目で見てかわしているということか!?

「ならば!」

 バトルマンの照準設定をマニュアルからオートに切り替える。狙いは雑になるが、これで弾数は毎分2500発にまで増える。あまりの弾数に舞った砂埃で前が見えなくなったが気にしない。バトルマンが勝手にやってくれるはずだ。狙いが雑になる、ということは何も悪いことだけじゃない。むしろ弾数が多いときは周りごと掃射した方が痛手を負わせられる。

 



 ようやく薬莢の火薬が爆ぜる音から空砲を撃つ音に切り替わる。弾を全て打ち出した合図だ。

「・・・やったか?」

「いいや、その程度の弾数じゃ俺は貫けない」

晴れた砂埃から浮かび上がるシルエットからは怪我は何1つない。擦り傷切り傷かすり傷すらもだ。

「ちっ」

 私はすぐに操縦をマニュアルに戻して武器を変更する。グレネードランチャー、そう呼ばれる兵器だ。だが奴はそれが発射される前にバトルマン2機を破壊した。双拳で。核にも耐えるシールドを拳で突破したというのか!?

「罅イったな・・・硬い」

 労わるように両手をさするが普通はそれどころじゃ済まないはずだろう!だが今度はそうもいかない。上空に待機させておいた1機のエネルギーチャージが終わった。『超エネルギー光子砲』。今現在の科学力で発揮されうる最高火力の砲撃。そのエネルギーは理論上ウランの数千倍にも匹敵する。その火力から『クリーンな核兵器』と呼ばれるそれを最初で唯一実用化したのがこのバトルマンだ。まだ実験段階のそれだがもう威力は折り紙付きだ。

「灰に消えろ・・・!」

 目の前のバトルマンに非実体障壁と実体障壁を展開させて私の身の安全を確保する。その一瞬だった。奴は非実体障壁と実体障壁をまるで小石かのように放り投げた。重さは数トンある鉄の塊をだ。そして私の身を守る1機も投擲して空中にある固定砲台と相殺した。

「・・・・・・まさかここまでとは」

 もうこの時点で十分おかしいが、それでも人が住めないほど野生が発展した惑星ならばバトルマンの破壊が可能だ。例えば100m級の龍なんかには手も足も出ないだろう。それはシュミレーション済みだ。だが私の最終手段は違う。

「だがこいつは絶対に倒せない」

億(10の8乗)ある惑星、予(10の24乗)以上いると言われる全生物と比べても最強。通常の3倍以上ある15mの巨体。燃費の悪さから3分しか活動できないが、そのパフォーマンスはバトルマンの3倍なんてかわいく見えるほどだ。

「・・・なるほど」

 速すぎた。私の目、いや高性能のカメラをもってしても拾えたのは納刀の音だけ。文字通り神速で15mの私の最高傑作が刃渡り1m余の刀に両断された。

「あの老人どもが騒ぐわけだ『過去(匠の技)現在(最先端の科学)未来(偶然の産物)三位一体の最高の業物ができた』と。・・・凡人のあがきかと思ってたが科学技術に対する認識を改めるか。あいつらに対しても、お前に対しても」

 そういって奴は私に目もくれず別荘から抜けてゆく。

「ああ、そうだ。お前はもう少し体を鍛えて格闘技をした方がいい。それであれの操縦は随分良くなるだろう」

 門を抜けたところで奴の放ったアドバイスは絶対に忘れない。これが2つある私の人生を大きく変えた経験の1つなのだから。




 兎も角あいつは最早人間じゃない

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