隠せない心
今回は山場です!
作者がらにもなく頑張りました!
少「……。」
ここは村から少し離れた湖。
その湖に足をつける少年。
チャプリと走り続け、火照った足を水のなかに入れれば痛いほど冷たい水がさす。
少年の表情は曇ったまま。
少「…あ。」
少年は気づいた。いつも身につけているペンダントが首に掛かっていないことに。
探しにいこうか迷っている少年。
そこに…我「ここにいたか。」
少「…あ……。」
また現れた銀髪の男。
沈黙が流れる。
だがその沈黙を破ったのは少年だった。
少「…ありがとな。」
我「…?」
突然の謝礼に疑問を浮かべる我狼。
少「あんたのおかげで…村を救えた。」
少「俺1人じゃ…何も出来なかったから…。」
少年の表情は相も変わらず曇ったまま。
そんな少年に我狼は言う。
我「…俺は何をしたのでも無い。」
我「最も…お前が命をかけるほどの村だったのか…?」
少「!」
我狼の言葉に少年の肩がピクリと動く。
我「お前と俺は違うが…」
我「自らの村を救ってもらって、その恩人を追い出す様な所…俺は救う気にはなれんな…。」
尚も続ける我狼の言葉にうつむく少年。
だが…
少「しょうがないんだ…。」
少年の呟き。
少「騙され続けてるのに…信用する事なんて出来ない…。」
少「俺も…普通に生きて、普通に暮らしたかった。」
我「…!」
我狼が少年を見ると今まで見たことの無い寂しそうな顔。
少「俺…昔からずっとそうなんだ…。」
少「ずっと欲しかった物や…やっとてにいれた物を…すぐに無くしちゃうんだ。」
少「記憶も…ペンダントも…」
少年の顔には微笑み。
哀しい…哀しい…
微笑み。
我「お前…記憶が無いのか…。」
少「…ああ。」
少「俺…力が無いから…何も持っていない方が…無くす物がない方が…楽なんだ。」
我「…ならば。」
少「…?」
我狼の呟きにも似た言葉に顔をあげる少年。
我「強くなれ。」
我「大切な物があるのなら…。」
我「逃げているだけでは…奪われるだけだ。」
そう言って突き出した我狼の手の中には…
少「…これ…!」
少年のペンダント。
我「闘うことで、取り戻せる物もある。」
少「…!!」
少年の表情に変化が表れる。
驚きと歓喜。
少「教えてくれ…」
我「?」
少「なんで…あんたはそんなに強いんだ…?」
少年の問いに我狼は…
我「俺は…」
我「俺は…強くなど…無い…。」
我「俺より…弱い奴は…いないだろう。」
我「お前はまだ取り戻せるが…俺はもう…取り戻せない。」
失った左目も…失った心の強さも取り戻せない事は…我狼が1番知っていた。
少「そんなの…。
辛くないのか…?
悲しく…ないのか…?支えて欲しく…ならないのか…?」
少年の声が震えている。
そんな少年に我狼は…
我「辛さ…悲しみ…か。」
我「そんな物…とっくに捨てた…。」
我「それに…支えてもらうなど…
そんな資格…俺には無い。」
今まで沢山の物を奪ってきた。
何をやってもそれは…くつがえせない事だった。
少「そんな事言うなよ!!」
我「!」
少年の怒声。
少年を見ると瞳には涙が溜まっていた。
少「俺は!あんたに助けてもらったんだ!!それなのに、なんであんたがそんなに苦しむ必要があるんだよ!!」
少年の瞳から涙がこぼれ落ちる。
我狼は戸惑いを隠せなかった。
何故…
何故、涙する…
何故、俺にそこまで尽くせる…
何故…?
少「あんたが苦しみを隠すっていうなら、俺は苦しみごとあんたを支え続ける!!」
少「それでいいだろ!?」
少年の真っ直ぐな瞳に我狼は負けた。
我「…好きにしろ。」