表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

おとぎばなしのはみ出しもの

ぼんでーじじぞう

作者: 浮月重月
掲載日:2026/07/07

あるさびれた寒村のはずれにある小さな家に、じいさまとばあさまが二人で暮らしておった。


子供たちも巣立ち、二人とも足腰が弱ってしまい、畑仕事がきびしくなったため、

季節を問わず日銭を得るために、オトナの夜の楽しみに使う道具を手作りしだしたそうな。


鹿の角を、使った時にケガしないようまあるく削って磨いたり、

猪の皮を、上手くなめして肌に無理のかからぬ拘束具に仕上げたりと、

使い勝手を高めるのに夢中になり、昼も夜も充実していたそうな。


村ではあまり理解も得られなんだが。

街ではいっとき、金子に糸目をつけないお妾を持つお大尽や、花街で飛ぶように売れたのだと。


しかしながら、耐久性が良すぎたせいで市場はすぐ飽和してしもうた。

魅力的な新製品開発力に乏しかったのじゃな。売った道具の調整でしのぐしかなかった。


そんなこんなで、とある凍えるような日。


逆転の一手を賭けて、舶来から取り寄せた「えなめる」やら「らばー」やらを使った見本品を

じいさまは街に売り込みに行ったのじゃが、斬新すぎて引かれてしまい、今ひとつ受けんかった。


仕方ない、ばあさまともう少し使用した際の魅力や商品価値について詰めねばならんの、と

見本品を抱えて村へ戻る途中、まずいことに天候も崩れ吹雪いてきてしまった。


動かぬ足を速め白い息を吐きつつ、ふとかたわらを見れば。

六体のお地蔵さまが雪になかば埋もれて立っておられた。


穏やかな顔つきながら、しかし寒そうに見えたお地蔵さまたちを見ていて、

じいさまはあわれに思い、見本品をお地蔵さまに着せていったのだと。


残念ながら見本品は五つしかなく、あと一体のお地蔵さまには着せるものがなかった。

仕方なくじいさまは日ごろばあさまと共に育んだ技を活かし、

見本品を押さえていた荒縄を使って最後のお地蔵さまを縛って差し上げた。


じいさまは、自らの技の冴えにうむ、うむとうなずき、手ぶらで村へ帰ったそうな。


家に帰ってきたばあさまは、手ぶらで戻ったじいさまを見るや、

持っていった見本品が完売したのかと大喜びしたのじゃが、事のあらましを聞いて、

ため息をつきつつも、それは良い仕事をされました、とほほえんだそうな。


その日の真夜中の事。


おおおおお、という怒声が町へ続く道から家の方に近付いてきたそうな。


じいさまもばあさまも、この夜はおとなしく寝ていたのじゃが、何事じゃと戸を開けてみると、

そこにはあられもない恰好をしたお地蔵さまが六体、憤怒相で仁王立ちしておった。


お地蔵さまたちはみな、どこから仕入れたのか鞭やらろうそくやらを持ってきておった。

慈愛の地蔵菩薩が助走付けて殴り込みに来る程の無礼だったんじゃろうなぁ。

無論お地蔵さまの一体は、荒縄で縛られたままじゃったそうな。


何ということをしてくれたのじゃ、己が身にこの責め苦を味わうがよい、とお地蔵さまたちの言葉に、


「わしらの業界では、この上なきごほうびですじゃ」


と返したじいさまとばあさま。


この夜じいさまとばあさまは責め苦を心行くまで味わい、この世の地獄か極楽を感じたそうな。


二人にとっては、めでたしめでたし。

こんな話を書いても、うちには幸い地蔵菩薩は殴り込みに来られてません。まだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ