第99話: 襲撃
侯爵様と愛を確かめ合ってから、数時間後。
私は自室で休んでいた。侯爵様は隣の部屋で書類に目を通している。いつでも駆けつけられるように——彼はそう言っていた。
静かな夜。
窓の外では、月が綺麗に輝いている。
——このまま、平和な夜が続けばいい。
そう願っていた。
その時——
キィィィィィン!
甲高い警報音が、屋敷中に響き渡った。
「!」
私は飛び起きた。
扉が勢いよく開き、侯爵様が駆け込んできた。
「エリアナ!」
「侯爵様!」
「襲撃だ。結社の刺客が侵入した」
侯爵様の表情は、厳しかった。
「私から離れるな」
「はい!」
私たちは廊下に出た。
---
屋敷の中は、混乱していた。
メイドたちが避難し、衛兵たちが警戒している。
「侯爵様!」
フィリップさんが駆けつけてきた。刀を抜き、臨戦態勢だ。
「状況は?」
「刺客は5名。全員、結社の戦闘員です。目的は——エリアナ様の捕獲と思われます」
私の捕獲——。
背筋が凍った。
「エリアナを守れ。最優先だ」
「承知」
その時、窓ガラスが割れた。
「!」
黒い服を着た人影が、飛び込んできた。
刺客だ。
「エリアナ!」
侯爵様が私を庇った。
刺客は鋭い目で私を見つめ、短剣を構えた。
「転生者——いただく」
低い声が響いた。
「させるか!」
侯爵様が魔法を放った。炎の球が刺客に迫る。
刺客は素早く避け、壁を蹴って跳躍した。
「くっ——」
侯爵様が追撃しようとした瞬間、別の刺客が現れた。
「侯爵様、後ろ!」
フィリップさんが叫んだ。
---
戦闘が始まった。
侯爵様とフィリップさんが、刺客たちと戦っている。
私は——何もできない。
ただ、震えることしかできない。
「エリアナ様!」
リリーが駆けつけてきた。彼女も剣を抜いている。
「リリー!」
「大丈夫ですか?」
「はい——でも」
その時、刺客の一人が私に向かって跳躍した。
「危ない!」
リリーが私の前に立ちはだかった。
ガキィン!
刺客の短剣と、リリーの剣が交錯した。
「エリアナ様は——渡さない!」
リリーが叫んだ。
「リリー......」
私は語り箱を取り出した。こんな時こそ——。
> 敵の動きを予測する方法は?
【ことり】
*************
確率: 65%
戦闘分析を開始します。敵の攻撃パターンから、次の標的は左側からの奇襲が予測されます。
3秒後、窓際から追加の侵入者が来る可能性が高いです。警戒してください。
*************
[魔力: 140/150] (-10)
「左側——窓際!」
私は叫んだ。
「!」
侯爵様が振り向いた瞬間、窓から新たな刺客が飛び込んできた。
「やはり!」
侯爵様は即座に魔法を放った。炎の壁が刺客を遮る。
「エリアナ、よくやった!」
「はい!」
ことりの助言が——功を奏した。
---
しかし、刺客たちは訓練されていた。
次々と攻撃を仕掛けてくる。
「くっ——」
リリーが刺客の攻撃を受け止める。
でも——その瞬間。
別の刺客の短剣が、リリーの腕をかすめた。
「!」
血が飛び散った。
「リリー!」
私は叫んだ。
「大丈夫——かすり傷よ」
リリーは強がったが、明らかに痛みを堪えている。
「リリー......」
「心配しないで。エリアナ様を守るのが、私の役目だから」
リリーは笑顔を見せた。
でも——その笑顔の裏に、痛みが見える。
「もう——」
私の中で、何かが弾けた。
「もう、誰も傷つけさせない!」
私は魔法を放った。
光の矢が、刺客に向かって飛んでいく。
刺客は避けようとしたが——
光の矢は、正確に刺客の武器を弾き飛ばした。
「!」
刺客が動揺する。
その隙に、侯爵様とフィリップさんが攻撃を加えた。
「撤退だ!」
刺客のリーダーが叫んだ。
刺客たちは素早く窓から飛び出し、闇に消えていった。
---
戦闘が終わった。
静寂が戻る。
「リリー、大丈夫?」
私はリリーに駆け寄った。
「はい——少し痛いですけど、大したことないです」
「そんな——血が......」
「本当に大丈夫です」
リリーは微笑んだ。
「エリアナ様が無事なら、それでいいんです」
その言葉に、涙が溢れた。
「ごめんなさい——私のせいで」
「違いますよ」
リリーは私の手を取った。
「エリアナ様は何も悪くない。悪いのは、結社です」
「リリー......」
「だから——泣かないでください」
侯爵様が私たちの傍に来た。
「リリー、手当てを受けろ」
「はい、侯爵様」
リリーはメイドに連れられて、医務室へ向かった。
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私は侯爵様の胸に顔を埋めた。
「侯爵様......」
「大丈夫だ。もう終わった」
侯爵様は私を優しく抱きしめた。
「よく頑張った。君の助言のおかげで、被害を最小限に抑えられた」
「でも——リリーが......」
「彼女は大丈夫だ。軽傷だ」
侯爵様は私の頭を撫でた。
「君が無事で——本当に良かった」
「私も——皆さんが無事で、良かったです」
私たちはしばらく、抱き合っていた。
戦闘の興奮が冷めていく。
代わりに、疲労が押し寄せてきた。
「エリアナ、休もう」
「はい」
侯爵様は私を部屋まで送ってくれた。
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部屋に戻り、ベッドに横になると——
侯爵様が隣に座った。
「今夜は、ここにいる」
「え......」
「君を一人にはできない」
侯爵様は優しく微笑んだ。
「安心して眠ってくれ」
「......ありがとうございます」
私は目を閉じた。
でも——頭の中は、さっきの戦闘でいっぱいだった。
リリーの血。刺客の冷たい目。襲撃の恐怖。
「エリアナ」
侯爵様が私の手を取った。
「大丈夫だ。私がいる」
その言葉に——少しずつ、心が落ち着いていった。
「侯爵様......」
「ん?」
「もう誰も——傷つけさせたくない」
「私もだ」
侯爵様の声は、強かった。
「これから——結社を止める」
「はい」
私は頷いた。
「もう——逃げない」
「君は強い、エリアナ」
侯爵様は私の頭を撫でた。
「今日の戦いで、それがよく分かった」
「ありがとうございます」
私は侯爵様の手を、強く握った。
温かい。彼の手は、いつも温かい。
この温もりが——私を守ってくれる。
「おやすみ、エリアナ」
「おやすみなさい、侯爵様」
私は目を閉じた。
侯爵様の手を握ったまま——私は、ゆっくりと眠りについた。
**次回予告**
襲撃を退けたエリアナたち。しかし、これは始まりに過ぎなかった。屋敷に戻り、最終決戦への準備が始まる——。
第100話「第III部終章」は今夜19時公開予定です。




