表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第III部: 試練と葛藤

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/160

第98話: 嫉妬と独占

侯爵様の警護が始まって二日目。


今日は、避けられない社交の場があった。王都の貴族たちが集まる午後のサロンだ。


「エリアナ、行く準備はいいか?」


侯爵様が尋ねた。


「はい」


私は頷いた。正直、こういう場は苦手だ。でも——侯爵様が傍にいてくれる。それだけで、少し心強い。


「何かあったら、すぐに私に言ってくれ」


「はい」


私たちは馬車に乗り、サロンへと向かった。


---


会場は華やかだった。


色とりどりのドレスに身を包んだ貴婦人たち、礼儀正しい貴族の男性たち。優雅な音楽が流れ、シャンデリアの光が会場を照らしている。


「侯爵様、お久しぶりです」


「やあ、元気だったかね」


侯爵様は社交辞令を交わしながら、常に私の傍にいてくれた。


「エリアナ様、お綺麗ですね」


若い貴婦人が話しかけてきた。


「ありがとうございます」


私は礼儀正しく答えた。


「そのペンダント、素敵ですね」


「これは......侯爵様からいただいたものです」


「まあ!お幸せですね」


貴婦人は嬉しそうに微笑んだ。


しばらく会話を楽しんでいると——


「失礼します」


若い貴族の男性が近づいてきた。


「エリアナ様、初めてお会いします。私はカイル・ラングレイと申します」


「初めまして」


私は礼儀正しく頷いた。


「噂はかねがね。王都一の美女と伺っていましたが、噂以上でした」


カイルは笑顔で言った。


「そんな——」


「よろしければ、少しお話ししませんか?」


カイルは私に手を差し出した。


---


その瞬間——


侯爵様の雰囲気が、変わった。


空気が、ピリッと張り詰める。


「カイル卿」


侯爵様の声は、低く冷たかった。


「侯爵様......?」


カイルは戸惑った表情で侯爵様を見た。


「彼女は、私の大切な人だ」


侯爵様は私の腰に手を回し、そっと引き寄せた。


「他の男は——近づくな」


その言葉は、明らかな警告だった。


「し、失礼しました」


カイルは慌てて頭を下げ、去っていった。


私は驚いて、侯爵様を見上げた。


「侯爵様......?」


侯爵様の目は、深い青色に燃えていた。


「すまない。少し、過保護だったかもしれない」


でも——その表情は、全く謝っているようには見えなかった。


---


サロンを出て、馬車に乗り込むと——


「エリアナ」


侯爵様が私の手を取った。


「さっきは、少し強く出すぎたかもしれない」


「いえ......」


私は首を横に振った。


「どうしてですか?」


「どうして......?」


侯爵様は私の目を見つめた。


「君が他の男に触れられるのが——我慢できなかったんだ」


その言葉に、胸がドキドキした。


「嫉妬、ですか?」


「ああ」


侯爵様は率直に頷いた。


「初めて感じた。こんなに強い独占欲を」


独占欲——。


私は、独占されている。


その実感が——どこか、嬉しかった。


「エリアナ、君は私のものだ」


侯爵様の声は、低く熱かった。


「誰にも渡さない」


「......はい」


私は頷いた。


顔が熱い。心臓が激しく鳴っている。


「君だけを見ていたい。君だけに触れていたい」


侯爵様は私の頬に手を添えた。


「それは——わがままだろうか?」


「いいえ」


私は首を横に振った。


「私も——侯爵様だけを見ています」

その言葉に、侯爵様の目が優しく緩んだ。


「本当か?」


「はい」


「それを聞いて——安心した」


侯爵様は私をそっと抱きしめた。


馬車の中、二人きりの空間。


温かい。彼の胸は、いつも温かい。


「君は私のすべてだ、エリアナ」


侯爵様の声が、耳元で囁く。


「私も——です」


私は彼の胸に顔を埋めた。


---


屋敷に戻ってから、侯爵様は私を庭園に連れ出した。


「少し、歩かないか?」


「はい」


私たちは並んで、庭園の小道を歩いた。


夕暮れの光が、優しく木々を照らしている。鳥のさえずりが聞こえ、花の香りが漂う。


「エリアナ」


「はい」


「さっき言った言葉——本心だ」


侯爵様は立ち止まり、私の手を取った。


「君を独占したい。君のすべてを、私だけのものにしたい」


その言葉は——あまりにも率直で、熱かった。


「それは——重いだろうか?」


「いいえ」


私は首を横に振った。


「重くなんて、ありません」


「そうか」


侯爵様は安堵の表情を見せた。


「むしろ——嬉しいです」


「嬉しい?」


「はい」


私は頷いた。


「愛されている、と感じます」


侯爵様の目が、優しく輝いた。


「愛している——その通りだ」


「侯爵様......」


「君を愛している、エリアナ」


侯爵様は私の両手を取った。


「この気持ちを、受け取ってくれるか?」


涙が溢れた。


「はい」


私は頷いた。


「私も——愛しています」


その言葉を聞いて、侯爵様は優しく微笑んだ。


「ありがとう」


彼は私を抱きしめた。


庭園の静けさの中、私たちはただ——抱き合っていた。


風が優しく吹き、花の香りが漂う。鳥が歌い、木々が揺れる。


全てが——幸せだった。


---


夜、侯爵様は私に紅茶を淹れてくれた。


「はい」


「ありがとうございます」


私たちは窓辺に座り、星空を見上げた。


「綺麗ですね」


「ああ」


侯爵様は私の肩を抱いた。


「でも、君の方が綺麗だ」


「もう——」


顔が熱くなる。


侯爵様は優しく笑った。


「エリアナ」


「はい」


「今日、カイル卿に嫉妬してしまった」


「分かっています」


「恥ずかしいことだが——これからも、きっと嫉妬するだろう」


侯爵様は私の目を見つめた。


「それでもいいか?」


「はい」


私は頷いた。


「むしろ——嬉しいです」


「嬉しい?」


「はい」


私は微笑んだ。


「私だけを見てくださっている、と感じるから」


侯爵様は優しく微笑んだ。


「その通りだ。君だけを見ている」


「私も——侯爵様だけを見ています」


私たちは手を繋いだ。


温かい。彼の手は、いつも温かい。


「ずっと、このままでいたい」


私は小さく呟いた。


「私もだ」


侯爵様の声が、優しく響いた。


星空が綺麗だった。無数の星が、私たちを見守っているようだった。


しかし——この平和な時間の裏で。


暗い影が、確実に近づいていた。

**次回予告**


平和な時間の終わり。結社の襲撃が、ついに始まる。エリアナと侯爵様を待ち受けるのは——。


第99話「襲撃」に続く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ