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異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第III部: 試練と葛藤

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第93話: 認められる

「エリアナ様、今夜のパーティーにぜひお越しください」


「あの魔法、もう一度見せていただけませんか?」


「侯爵様とお似合いですわ」


魔法実演の翌日から、私の元には次々と招待状が届いた。貴族たちからの招待、社交界への誘い、そして——賞賛の言葉。


以前は冷たい視線を向けていた人々が、今は笑顔で話しかけてくる。


「変わったものね」


リリーが呆れたように言った。私たちは宿舎の部屋で、山積みになった招待状を見つめていた。


「本当に......」


私も苦笑するしかない。人の評価なんて、こんなにも簡単に変わるものなのか。


「でも、良かったじゃない。これであなたも堂々と侯爵様の隣に立てるわ」


「そうね......」


私は窓の外を見つめた。今夜は、最も格式の高いディロン侯爵様家のパーティーに招待されている。侯爵様が同行してくれると言ってくれた。


「頑張ってらっしゃい」


リリーが背中を押してくれる。


「ありがとう」


私は深呼吸をして、ドレスに着替える準備を始めた。


---


ディロン侯爵様家の邸宅は、王都でも屈指の豪華さを誇っていた。


大理石の柱が立ち並ぶ広間、シャンデリアの煌めき、そして優雅に響く弦楽の調べ。貴族たちは美しい衣装に身を包み、グラスを傾けながら談笑している。


「緊張しているか?」


侯爵様が私の耳元で囁いた。彼は黒のフォーマルな服装で、いつもより一層凛々しく見える。


「少し......」


「大丈夫だ。私が傍にいる」


侯爵様は優しく私の手を取り、エスコートしてくれた。その温もりが、緊張を和らげてくれる。


広間に入ると、視線が一斉に私たちに集まった。


「あれが侯爵様の——」


「エリアナ・フォレスト様ですわ」


「昨日の魔法、本当に素晴らしかったわね」


ささやき声が聞こえる。でも、以前のような悪意は感じない。むしろ、好奇と称賛の眼差しだ。


「エリアナ様!」


一人の貴婦人が近づいてきた。


「昨日の魔法実演、拝見いたしました。あのような美しい魔法は初めて見ましたわ」


「ありがとうございます」


私は丁寧にお辞儀をした。


「ぜひ、私のサロンにもお越しください」


「光栄です」


次々と貴族たちが話しかけてくる。魔法について、侯爵様との関係について、様々な質問が飛んでくる。私は一つ一つ丁寧に答えながら、侯爵様の視線を感じていた。


彼はずっと、私の傍にいてくれる。


---


パーティーが進むにつれ、雰囲気は和やかになっていった。


「侯爵様、エリアナ様、お二人は本当にお似合いですわ」


年配の公爵夫人が笑顔で言った。


「ありがとうございます」


侯爵様が答える。彼は私の肩に優しく手を置いた。


「彼女は私の誇りです」


その言葉に、胸が高鳴る。周囲の貴族たちも、温かい視線を向けてくれている。


「では、お二人の未来に——乾杯!」


公爵夫人がグラスを掲げると、周囲の人々も一斉にグラスを上げた。


「乾杯!」


私と侯爵様も、グラスを合わせる。クリスタルのグラスが触れ合う、澄んだ音が響いた。


「君の努力が、実を結んだ」


侯爵様が小声で言った。


「侯爵様のおかげです」


「いや、これは君自身の力だ」


彼の言葉に、涙が溢れそうになる。でも——今は笑顔でいよう。この幸せな瞬間を、しっかりと心に刻み込もう。


---


パーティーが深夜に差し掛かる頃。


侯爵様は私を静かな控え室へと案内した。


「少し、二人で話そう」


「はい」


控え室は小さな図書室のような造りで、壁一面に本が並んでいる。暖炉の火が優しく揺れ、部屋を温かく照らしている。窓の外には、月明かりに照らされた庭園が見える。


「疲れたか?」


侯爵様が尋ねた。


「少し......でも、嬉しい疲れです」


私は正直に答えた。侯爵様は微笑み、ソファに座るよう促してくれた。私もその隣に腰を下ろす。


暖炉の火が、パチパチと音を立てている。その音が心地よい。


「今日は特別な日だった」


侯爵様が静かに言った。


「はい」


「君が貴族社会に認められた。そして、私との関係も——」


彼は言葉を切り、私の目を見つめた。


「公に祝福された」


「......はい」


私は頷いた。胸がドキドキしている。侯爵様の視線が、いつもより深い。


「エリアナ」


侯爵様は私の手を取り、そっと持ち上げた。そして——その手の甲に、優しくキスをした。


「君は私の誇りだ」


柔らかい唇の感触。温かい息遣い。私の心臓が、激しく鼓動している。


「侯爵様......」


「これからも、共に歩んでいこう」


「はい」


私は力強く頷いた。侯爵様は微笑み、私の手を優しく握りしめてくれた。


暖炉の火が揺れる。窓の外では、月が静かに輝いている。この瞬間が、永遠に続けばいいのに——。


---


控え室から出ると、パーティーはまだ続いていた。


でも、私の心はすでに満たされていた。貴族たちの祝福、侯爵様の優しさ、そして——認められたという実感。


「エリアナ」


侯爵様が私の名を呼んだ。


「はい」


「今夜は、本当にありがとう」


「こちらこそ......」


私たちは並んで、広間を後にした。馬車に乗り込み、宿舎へと向かう。


窓の外を見つめながら、私は今日一日を振り返る。魔法実演の成功、貴族たちからの称賛、そして侯爵様との親密な時間。


前世の私には、想像もできなかった幸せだ。


「幸せです」


私は小さく呟いた。


「ん?」


「いえ、独り言です」


侯爵様は微笑み、私の手をそっと握ってくれた。その温もりが、心に染み込んでいく。


馬車が静かに揺れる。


夜の王都を、私たちは二人で帰っていく。


---


宿舎の部屋に戻ってから、私はベッドに横たわった。


今日は——本当に特別な日だった。


貴族社会に認められ、侯爵様との関係も公に祝福された。これから先、私はもっと堂々と彼の隣に立てるはずだ。


窓の外を見ると、星が綺麗に輝いている。


「ありがとう」


私は誰に言うでもなく、呟いた。


この世界に転生して、たくさんの苦労もあった。でも、それ以上に——たくさんの幸せをもらった。


「これからも、頑張ろう」


私は目を閉じた。


温かい幸福感に包まれながら、深い眠りに落ちていった。

**次回予告**


認められたエリアナに、束の間の平和な日々が訪れる。友人たちとの楽しい時間、そして——。


第94話「束の間の平和」に続く。


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