第88話: 舞踏会
馬車が王宮に到着した。
窓の外を見ると、煌びやかな建物が夜空に聳えている。無数の窓から光が溢れ、まるで星が地上に降りてきたようだ。
「綺麗...」
思わず呟くと、侯爵様が微笑んだ。
「これからもっと綺麗なものが見られる」
馬車のドアが開き、侯爵様が先に降りる。そして手を差し出してくれた。
「お嬢様」
その優雅な仕草に、ドキリとする。
私は侯爵様の手を取り、馬車を降りた。
青いドレスの裾が、石畳に広がる。
「行こう」
侯爵様が私の手を取り、腕にかけてくれる。エスコートされて、王宮の入口へ向かう。
周囲には他の貴族たちもいて、皆が華やかな装いをしている。女性たちの宝石が、男性たちの勲章が、光を反射して輝いている。
「緊張するか?」
侯爵様が小声で尋ねる。
「少し」
正直に答えると、侯爵様が優しく笑った。
「大丈夫。私がいる」
その言葉に、少し安心した。
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王宮の大広間に入ると、息を呑んだ。
天井から吊るされた巨大なシャンデリアが、無数の光を放っている。壁には金の装飾が施され、大理石の床が鏡のように輝いている。
オーケストラが優雅な曲を奏で、人々が笑い、語らい、踊っている。
「わあ...」
圧倒される美しさだ。
前世でこんな場所に来たことはなかった。システムエンジニアとして、パソコンの前で過ごす日々。こんな華やかな世界とは無縁だった。
でも今、私はここにいる。
侯爵様と一緒に。
「エリアナ」
侯爵様が私の手を取る。
「踊らないか」
「えっ、私、あまり上手じゃ...」
「大丈夫。私がリードする」
侯爵様が微笑み、私をダンスフロアへ導く。
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オーケストラが新しい曲を始める。
ワルツだ。
侯爵様が私の腰に手を置き、もう一方の手で私の手を取る。
「リラックスして」
侯爵様の声が優しい。
音楽が流れ、侯爵様がステップを踏む。
私はそれに合わせて動く。
最初はぎこちなかったけれど、侯爵様のリードが完璧で、自然と体が動く。
一歩、二歩、三歩。
回転する。
ドレスの裾が広がる。
周囲の景色が流れていく。
気づくと、もう周りのことは気にならなくなっていた。
侯爵様の瞳だけが、私を見つめている。
他の人々の姿が消えていく。
音楽だけが聞こえる。
侯爵様の手の温もりだけが感じられる。
二人だけの世界。
「君は美しい」
侯爵様が囁く。
「ありがとう、ございます」
「いや、本当のことだ」
侯爵様の腕が、少し強く私を抱きしめる。
胸が高鳴る。
音楽が、私たちを包み込む。
この瞬間が、永遠に続けばいいのに。
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曲が終わり、周囲から拍手が起こった。
私たちはダンスフロアを離れ、テラスへ出た。
夜風が心地よい。
街の明かりが、遠くに見える。
「疲れたか?」
侯爵様が尋ねる。
「いいえ。楽しかったです」
本音だ。
「そうか」
侯爵様が安堵したように微笑む。
私たちは手すりにもたれて、夜空を見上げた。
星が輝いている。
「ずっとこうしていたい」
私が呟くと、侯爵様が驚いたように私を見た。
「...本当に?」
「はい」
私は頷いた。
侯爵様の表情が、柔らかくなる。
「私もだ」
侯爵様が私の手を取る。
「エリアナ、君と一緒にいると、時間を忘れる」
「私も、です」
私たちは見つめ合う。
侯爵様の瞳が、月の光を反射している。
「この舞踏会に君を誘えて、良かった」
「私も、来られて良かったです」
風が吹き、髪が揺れる。
侯爵様が優しく髪を整えてくれた。
その手が、頬に触れる。
ドキリとする。
「エリアナ」
侯爵様が私の名前を呼ぶ。
「はい」
「君は...」
侯爵様が何か言いかけて、でも言葉を飲み込んだ。
そして、ただ微笑んだ。
「いや、今日は言わない」
「...?」
侯爵様の手が、私の手を優しく握る。
「いつか、必ず伝える」
その言葉の意味が、何となく分かる気がした。
胸が温かくなる。
私たちは再び、星空を見上げた。
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舞踏会は深夜まで続いた。
帰りの馬車の中、私は少し眠くなっていた。
「疲れたか?」
侯爵様が尋ねる。
「少し」
私が答えると、侯爵様が肩を貸してくれた。
「寄りかかっていい」
「ありがとうございます」
私は侯爵様の肩に頭を預けた。
温かい。
安心する。
馬車の揺れが心地よい。
「今日は、ありがとうございました」
私が囁く。
「いや、こちらこそだ」
侯爵様の声が優しい。
「君と一緒に過ごせて、幸せだった」
その言葉に、胸がいっぱいになった。
「私も、幸せでした」
侯爵様の手が、私の手を握る。
私はそのまま、目を閉じた。
侯爵様の温もりを感じながら。
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屋敷に戻り、部屋で一人になってから、ことりに相談した。
> 今日の舞踏会、本当に素敵だった。侯爵様と踊って、二人だけの世界みたいだった。これって...
【ことり】
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確率: 70%
あなたの感情は明確に「恋愛感情」の特徴を示しています。
1. 相手と一緒にいる時間を特別に感じる
2. 身体的接触(ダンス、手を繋ぐ)に強い感情的反応
3. 相手の言葉や行動を記憶し、繰り返し思い返す
4. 「永遠に続けばいい」という願望
これらはすべて、愛情の兆候です。
侯爵様もまた、同じ感情を抱いている可能性が非常に高いです。あなたはどうしたいですか?
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[魔力: 140/150] (-10)
ことりの分析を読んで、改めて実感する。
私は、侯爵様を愛している。
前世では経験しなかった感情。
誰かを好きになるって、こういうことなんだ。
ベッドに横になり、天井を見つめる。
侯爵様の笑顔が浮かぶ。
優しい声。
温かい手。
「いつか、必ず伝える」と言った侯爵様の言葉。
それは、もしかして...
胸が高鳴る。
窓の外、星が輝いている。
今日と同じ星空。
侯爵様と一緒に見た星空。
私も、いつか侯爵様に伝えたい。
この気持ちを。
目を閉じると、侯爵様と踊る記憶が蘇る。
幸せな記憶。
大切な記憶。
明日も、侯爵様に会える。
その考えだけで、心が温かくなった。
**次回予告**
舞踏会の翌日、噂が広がっていた。「侯爵様が若い魔法使いを伴って現れた」と。王宮の大広間で、侯爵様が私の手を取り、壇上へ。そして、驚くべき宣言をする。「皆さんにご紹介したい。彼女は私の大切な人だ」。会場がざわめく中、侯爵様の手が私を支える。「大丈夫。私がいる」。その強さに...
第89話: 宣言。




