第8話: メイド長の鍵
朝食の準備をするメイド長を見ながら、ふと気づいた。
腰に下げている鍵。
他の使用人たちは普通の鍵を持っているけれど、メイド長の鍵は違う。
古びた銀色で、複雑な魔法の文様が彫られている。
魔法使いとしての感覚が、その鍵に反応する。
「これは、特別な鍵だ」
侯爵様も、その鍵を見ているけれど、何も言わない。
不思議だ。
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午前中、廊下で掃除をしているメイド長に声をかけた。
「メイド長、少しお時間よろしいですか?」
「何でしょう、エリアナ様」
「長くこの屋敷で働いているんですか?」
メイド長は手を止めて、考えるように目を細める。
「30年以上になります」
「そんなに...」
「ええ。ルシア様...以前この屋敷におられた方にも仕えました」
ルシア、という名前に反応する。
「ルシア様って...」
メイド長の表情が、柔らかくなる。
「優しく、聡明な方でした。この屋敷を明るく照らしてくださった」
懐かしむような、でも少し悲しいような表情だ。
「15年前のあの日以来...」
言葉を濁す。
何か、聞いてはいけないことのような気がして、それ以上は聞けなかった。
「失礼しました」
「いえ。エリアナ様も、ルシア様と同じように、この屋敷を明るくしてくださっています」
メイド長の言葉に、少し驚く。
「ありがとうございます」
メイド長は静かに微笑んで、掃除を続けた。
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図書室で、ことりに相談する。
【ことり】
*************
何かお悩みですか?
*************
[魔力: 45/60]
> メイド長とルシア様の関係について教えてください。メイド長は何か特別な秘密を守っているのでしょうか?
【ことり】
*************
確率: 85%
メイド長は重要な秘密を守っています。ルシア様の残した何かを管理している可能性が高いです。
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[魔力: 35/60] (-10)
やはり、そうなのか。
> それは西棟と関係していますか?
【ことり】
*************
確率: 72%
推測の範囲ですが、可能性があります。西棟には特別な場所がある可能性が示唆されます。
*************
[魔力: 25/60] (-10)
前世のSE経験から思い出す。「アクセス権限」という概念。
メイド長は、特別な権限を持っている。あの鍵がその証だ。
探求心が湧く。でも、勝手に調べるのは良くない気もする。
「どうしよう...」
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夕方、侯爵様との訓練。
でも、メイド長のことが気になって、集中できない。
「エリアナさん」
侯爵様の声で我に返る。
「何か心配事ですか?」
優しい声だ。
「いえ、大丈夫です」
「無理をしないでください」
侯爵様は訓練を早めに切り上げてくれた。
そして、温かいココアを用意してくれる。
「疲れているようですね。今日はゆっくり休んでください」
カップを受け取る。甘くて、温かい。
「ありがとうございます」
侯爵様の優しさが、心に染みる。
この人は本当に、私のことを心配してくれている。
「何かあれば、いつでも相談してください」
「はい」
侯爵様の言葉に、心が温かくなる。
でも、メイド長のことを聞くのは...まだ早い気がする。
自分で、もう少し考えてみよう。
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夜、眠れなくて窓の外を眺めていた。
すると、西棟の方向から微かな光が見える。
「誰かいる...?」
好奇心に負けて、部屋を出た。
廊下を慎重に進む。足音を立てないように。
西棟の入口近くまで来ると、人影が見えた。
メイド長だ。
例の鍵で、扉を開けている。
扉の奥から、魔力の気配がする。
メイド長が中に入り、扉が閉まる。
「やっぱり...何かある」
近づこうとした時、床がきしんだ。
「しまった!」
慌てて柱の陰に隠れる。
心臓が激しく鳴る。
しばらくじっとしていると、扉が開く音。
メイド長が出てきた。
私の方を一瞬見るけれど、何も言わずに去っていく。
気づかれなかった...のかな?
扉を見る。複雑な魔法の紋様が刻まれている。
あの鍵がないと、開けられないようだ。
「中に、何があるんだろう」
でも今は、入るわけにはいかない。
そっと自分の部屋に戻った。
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ベッドに座り、今日のことを考える。
メイド長は、ルシア様の何かを守っている。
西棟の中に、それがある。
でも、なぜ隠すんだろう。
そして、侯爵様はそれを知っているのだろうか。
疑問ばかりが浮かぶ。
ことりを起動する。
【ことり】
*************
眠れませんか?
*************
[魔力: 35/60]
> メイド長が西棟に入るのを見ました。中には何があると思いますか?
【ことり】
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確率: 55%
ルシア様の遺品か、または重要な研究資料が保管されている可能性があります。ただし推測の域を出ません。
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[魔力: 35/60]
「ルシア様の遺品...」
だとしたら、メイド長が守るのも理解できる。
大切な方の思い出を、守っているんだ。
そう思うと、勝手に探すのは良くない気がする。
「でも、知りたい」
この気持ちをどうすればいいんだろう。
明日、図書室でルシア様についてもっと調べてみよう。
そう決めて、ベッドに横になった。
窓の外では、星が静かに輝いている。
この屋敷の秘密は、まだまだ深い。
でも、少しずつわかってきた気がする。
焦らず、ゆっくりと。
侯爵様の言葉を思い出す。
そうだ、焦らずに。
いつか、全ての真実が明らかになる日が来る。
そう信じて、目を閉じた。
**次回予告**
図書室でルシアの残した研究資料を発見するエリアナ。そこには驚くべき内容が記されていた。そして、侯爵との関係がさらに深まる重要な会話が...
第9話「図書室の秘密」をお楽しみに!




