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【第III部 開始】異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第III部: 試練と葛藤

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第76話: 決断

夕暮れの応接室に、緊張が満ちていた。


私は、隣に座るセレスティアさんを見つめた。彼女の瞳には、今までに見たことのない決意が宿っていた。窓から差し込むオレンジ色の光が、彼女の金色の髪を淡く照らしている。


「アレクサンダー様、フィリップスさん、エリアナ様」


セレスティアさんの声が震えることなく響いた。


「私は、家族と一時的に距離を置きます。友人たちと共に、結社と戦う道を選びます」


侯爵様――いや、アレクサンダー様が、深く頷いた。その瞳には、セレスティアさんへの信頼と、覚悟を認める色が浮かんでいる。


「お前の決意、受け止めた」


フィリップスさんも、真剣な表情で口を開いた。


「セレスティアさん、その決断は容易ではなかったはずだ。君の勇気を尊敬する」


セレスティアさんは、一瞬だけ目を伏せた。それから、胸元から小さな革袋を取り出した。


「これを、お渡しします」


---


「それは?」


アレクサンダー様が尋ねると、セレスティアは静かに答えた。


「父の書斎から見つけた書類です。結社の本拠地に関する手がかりが、ここに」


私の心臓が、一気に高鳴った。


フィリップスさんが立ち上がり、革袋を受け取った。中から取り出した書類を広げると、彼の表情が一変する。


「これは...東の森の地図だ。そして、この印は――」


「遺跡の位置です」


セレスティアさんが言葉を継いだ。


「父は、そこに結社の本拠地があると言っていました。魔法陣の核も、そこに」


アレクサンダー様の瞳が、鋭く輝いた。


「東の森の遺跡か。あそこは、300年前の大魔法戦争で放棄された場所だ」


フィリップスさんが地図を指差した。


「ここの印を見てください。複数の魔力反応点が記されています。これは、大規模な魔法陣の配置を示しています」


私は、地図を凝視した。前世のSEとしての知識が、自然に頭の中で情報を整理していく。魔法陣のネットワーク構造。制御ノードの配置。これは、まるで分散システムの設計図のようだ。


「確かに、結社の本拠地で間違いなさそうですね」


私がそう言うと、アレクサンダー様が私の手を取った。


「君の分析力は、本当に助かる」


その言葉に、頬が少し熱くなるのを感じた。


---


「セレスティアさん」


私は、彼女に歩み寄った。そして、静かに抱きしめた。


「あなたの勇気に、心から感謝します」


セレスティアさんの体が、わずかに震えた。それから、彼女は静かに微笑んだ。


「ありがとう、エリアナ。あなたの言葉が、私に勇気をくれました」


私たちは、しばらくそうしていた。夕日が少しずつ沈んでいき、部屋の中が薄暗くなっていく。


フィリップスさんが、地図を机に広げた。


「では、詳細な戦略を立てましょう。この地図を基に、侵入ルートを検討します」


アレクサンダー様が頷いた。


「東の森は広大だが、この地図があれば迷わない。まずは偵察部隊を送り、状況を確認するべきだ」


「父の情報によれば、遺跡は三つの層に分かれているそうです」


セレスティアさんが説明を続けた。


「最上層は監視拠点、中層は研究施設、最深部に魔法陣の核があります」


私は、その構造を頭の中で整理した。


「最深部に到達するには、上から順番に突破しなければならないということですね」


「その通りです」


フィリップスさんが地図に線を引いた。


「ここから侵入し、この通路を通れば、監視を避けられる可能性があります」


会議は、夜まで続いた。


---


「そろそろ、休憩しませんか」


マーガレットさんが、温かい紅茶とサンドイッチを運んできてくれた。その香りが、緊張していた心を少しだけ和らげてくれる。


「ありがとうございます」


私は、紅茶を一口飲んだ。ベルガモットの香りが、優しく鼻に抜けていく。温かい液体が喉を通り、胃に届くと、ほっとため息が漏れた。


アレクサンダー様も、紅茶を手に取った。


「無理をしすぎてはいけない。今夜はここまでにして、明日また続きを話そう」


セレスティアが、サンドイッチを一口食べた。


「マーガレットさんの作る料理は、いつも美味しいですね」


「ありがとうございます、お嬢様」


マーガレットさんが優しく微笑んだ。


フィリップスさんも、紅茶を飲みながら微笑んだ。


「こうして皆で食卓を囲むのは、久しぶりですね」


その言葉に、私は思わず笑顔になった。


そうだ。私は一人じゃない。仲間がいる。家族のような温もりがある。


前世では、SEとして忙しく働き、こんな風に誰かとゆっくり食事をする時間さえなかった。この世界で得たものは、魔法や知識だけじゃない。人との繋がりだ。


「家族っていいな」


思わず、その言葉が口から零れた。


アレクサンダー様が、優しく微笑んだ。


「そうだな。君のおかげで、仲間が増えた」


その眼差しに、私は胸が高鳴るのを感じた。この人の傍にいると、不思議と勇気が湧いてくる。


「明日から、また頑張りましょう」


私がそう言うと、皆が頷いた。


夜の静けさが、部屋を包み込んでいく。窓の外には、満天の星空が広がっていた。


---


応接室を出て、自室に戻る廊下。


アレクサンダー様が、隣を歩いてくれた。


「今日は、よく頑張ったな」


「いえ、セレスティアの勇気に、私も励まされました」


「君は、本当に優しい」


その言葉に、私は少し照れてしまった。


「おやすみなさい、エリアナ」


「おやすみなさい、アレクサンダー様」


部屋に入り、ベッドに横になると、今日の出来事が頭の中を巡った。


結社の本拠地が判明した。東の森の遺跡。これから、本格的な戦いが始まる。


不安もある。でも、私には仲間がいる。アレクサンダー様も、フィリップスさんも、セレスティアも。


私は、明日への決意を胸に、目を閉じた。


この世界を、守りたい。大切な人たちを、守りたい。


そのために、私は戦う。

**次回予告**


結社の真の目的が、ついに明らかになる。それは、想像を遥かに超える、恐るべき計画だった――。第77話: 内部情報、次回もお楽しみに。

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