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【第III部 開始】異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第III部: 試練と葛藤

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第70話: 立て直し

 翌朝、私は書斎に呼ばれた。侯爵様とフィリップスさんが、すでに待っていた。


「おはよう、エリアナ」


 フィリップスさんが資料を広げていた。


「調査の結果が出た」


「本当ですか?」


 私は机に近づいた。


「ああ。結社が偽情報を検証中だということが分かった」


 フィリップスさんが地図を指した。その指先が、王都の東側をなぞる。


「王都の東側で、不審な動きが観測されている。人の出入りが増えている場所がある。おそらく、彼らの連絡拠点だ」


「完全な成功ではないが」


 侯爵様が続けた。


「時間は稼げた。それに、敵の動きも少し見えてきた」


 私は安堵のため息をついた。完全な失敗ではなかったのだ。


---


 フィリップスさんが別の地図を広げた。


「さらに興味深いことが分かった」


 彼の指が、地図上の森を指した。


「敵の反応から推測すると、本拠地が『東の森の奥』にある可能性が高い」


「東の森...」


 私はその名前に聞き覚えがあった。


「あそこは、古い遺跡があると聞いたことがあります」


「その通り」


 フィリップスさんが頷いた。


「約300年前の魔法遺跡だ。今は廃墟になっている」


 私はことりを取り出した。


> 東の森の古い遺跡について、詳しく教えてください。


【ことり】

*************

確率: 70%


東の森には、古代魔法文明の遺跡があります。約300年前に栄えた魔法都市の跡で、現在は放棄されています。


遺跡には強力な魔法陣が残っており、それを悪用しようとする者が後を絶ちません。秘密結社がそこを拠点にしている可能性は高いです。


ただし、遺跡内部は迷路のように複雑で、罠も多く残っています。慎重な調査が必要です。

*************

[魔力: 140/150]


 確率70%。高い信頼性だ。


「遺跡か...」


 侯爵様が腕を組んだ。その表情は真剣だ。


「そこに潜入するのは危険だが、敵の正体を知る絶好の機会でもある」


「でも、今すぐには無理です」


 私が言った。冷静に状況を判断しなければならない。


「まず、屋敷の防御を固めるべきです」


 フィリップスさんが頷いた。


「エリアナの言う通りだ。今夜から、屋敷の結界を強化する」


---


 午後、フィリップスさんは屋敷の周囲に新しい結界を張り始めた。私も手伝い、魔法陣の補助を行う。


「ここに魔力を集中させて」


 フィリップスさんの指示に従い、私は魔法陣に手を当てた。淡い光が広がり、結界が強化されていく。魔力が指先から流れ出し、魔法陣全体に広がっていくのが分かる。温かい感覚が、腕を伝って体全体に広がった。


「よし、これで侵入者を検知できる」


 フィリップスさんが満足そうに頷いた。魔法陣が完成し、淡い青色の光が屋敷全体を包んでいく。


「少なくとも、急な襲撃には対応できるはずだ」


「これで、当面は安全ですね」


 私は安堵した。屋敷が守られている。それだけで、心が軽くなる。


「ああ」


 フィリップスさんが私の肩を叩いた。


「エリアナ、お前はよくやっている」


「ありがとうございます」


 彼の言葉に、少しだけ自信が戻ってきた。


---


 夕方、私は自分の部屋で考え事をしていた。


 昨夜の作戦は、完璧ではなかった。でも、失敗でもなかった。時間を稼ぎ、敵の情報も得られた。それは、小さな成功だ。


「失敗からも学べる」


 私は窓の外を見た。夕日が沈み、空がオレンジ色に染まっている。


「次は、もっとうまくやる。必ず」


 前世のSEとしての経験を思い出す。失敗したプロジェクトから学び、次に活かす。それが、成長の道だ。


 私は、少しずつ強くなっている。自分でも、それが分かる。侯爵様や仲間たちに支えられながら、私は前に進んでいる。


 ノックの音がして、マーガレットさんが入ってきた。


「エリアナ様、お茶の時間です」


---


 マーガレットさんは、銀のトレイに紅茶とクッキーを載せていた。焼きたてのクッキーからは、バターの香ばしい香りが漂っている。


「侯爵様とフィリップスさんも、書斎でお待ちです」


「ありがとうございます」


 私たちは書斎に集まり、お茶を囲んだ。焼きたてのクッキーの甘い香りが、部屋に広がっている。シナモンとバニラの香りが混ざり合い、心を落ち着かせてくれる。


「エリアナ」


 侯爵様が紅茶を一口飲んでから言った。


「君の成長が、嬉しい」


「え?」


「昨夜の作戦、そして今日の対応」


 侯爵様が微笑んだ。


「君は、確実に強くなっている」


 その笑顔に、私の胸がドキリとした。侯爵様の笑顔を見るのは、久しぶりな気がする。紫色の瞳が、優しく輝いている。


「ありがとうございます」


 私は顔が赤くなるのを感じた。


「でも、まだまだです」


「いや」


 フィリップスさんが口を挟んだ。


「お前は十分にやっている。自信を持て」


 マーガレットさんも頷いた。


「そうですわ。エリアナ様は、本当に立派です」


 三人の言葉に、涙が出そうになった。みんなが、私を認めてくれている。支えてくれている。この温かさが、胸に染み渡る。


 私は紅茶を一口飲んだ。ダージリンの優雅な香りが口の中に広がり、心がほっと落ち着いた。


---


 お茶の時間が終わり、私は自分の部屋に戻った。


 ベッドに座り、今日一日を振り返る。


 結社の脅威は、まだ消えていない。でも、私たちは前進している。少しずつだが、確実に。


「東の森の遺跡、か」


 私は小さく呟いた。


「いつか、そこに行くことになるだろう」


 その時は、もっと強くなっていなければならない。魔法も、判断力も、すべてを磨かなければならない。


 でも、今は休もう。明日に備えて、体を休めることが大切だ。


 私はベッドに横になり、天井を見つめた。


---


 夜、窓の外を見ると、星が輝いていた。


 侯爵様の笑顔を思い出す。あの笑顔を見た時、私の心臓が早く鳴った。それは、ただの尊敬ではない。もっと深い、何か特別な感情だ。


「私は、侯爵様を...」


 その先を、言葉にできなかった。でも、心の奥底では、分かっている。


 私は、侯爵様に恋をしている。


 その事実を認めるのが、怖かった。恋は、人を弱くする。判断を鈍らせる。でも同時に、恋は人を強くもする。守りたい人がいるから、頑張れる。


「侯爵様...」


 私は枕を抱きしめた。その温もりが、侯爵様の抱擁を思い出させる。


 これから、もっと困難な戦いが待っているだろう。でも、侯爵様がいる。仲間がいる。だから、私は戦える。


「次は、必ず成功させる」


 私は決意を新たにした。


 そして、ゆっくりと眠りについた。明日のために、しっかり休まなければならない。


 窓の外では、月が静かに輝いていた。優しい光が、部屋を照らしている。


 私の新しい一歩が、明日から始まる。


---


 翌朝、目が覚めると、窓から朝日が差し込んでいた。


 新しい一日の始まりだ。私は起き上がり、窓を開けた。爽やかな風が、部屋に流れ込んでくる。


「今日も、頑張ろう」


 私は深呼吸をして、一日の始まりを迎えた。


 侯爵様も、フィリップスさんも、マーガレットさんも、みんながいる。一人じゃない。


 そして、私は少しずつだが、確実に成長している。


 これからどんな困難が待っていても、私は乗り越えていける。その自信が、心の中に芽生え始めていた。

**次回予告**


立ち直ったエリアナだが、心の奥底では自分を責め続けていた。そんな彼女の元に、侯爵様が訪れる。優しい慰めの言葉と、温かい抱擁。そして、ロマンチックな月夜の散歩へ——。二人の距離が、さらに縮まる。


第71話: 侯爵様の慰め。

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