第7話: 魔法の訓練
朝食後、侯爵様が声をかけてくれた。
「エリアナさん、今日から本格的な魔法訓練を始めましょう」
「本当ですか!」
嬉しくて、思わず大きな声が出る。
侯爵様は優しく微笑む。
「ええ。あなたには素晴らしい才能があります。それを伸ばしたい」
その言葉に、胸が温かくなる。
---
屋敷の訓練場は、中庭の一角にあった。
石畳の広い空間に、魔法の結界が張られている。
「ここなら、魔法を使っても安全です。結界が全てを受け止めてくれます」
侯爵様が説明してくれる。
まず、私の現在の魔力レベルを測定する。
魔法の水晶に手を置くと、淡い光が広がる。
前回よりも強い光。
「45ポイント...素晴らしい。予想以上の成長です」
侯爵様が満足そうに頷く。
「本当ですか?」
「ええ。あなたはことりとの相性が良い。それが成長を加速させています」
前回の測定は50ポイントだった。それが80ポイントに。
あの疲労と休息が、確かに成長に繋がったんだ。
「まだまだこれからです。でも、良いスタートです」
侯爵様の言葉に励まされる。
---
「では、魔力の流れを理解しましょう。手を出してください」
侯爵様が手を差し出す。
「え...」
躊躇する私を見て、侯爵様が優しく微笑む。
「大丈夫です。魔力を直接感じるのが、一番の近道ですから」
恐る恐る、手を出す。
侯爵様の手が、私の手を包む。
大きくて、温かい。
心臓が、ドキドキと鳴る。
「落ち着いて。深呼吸してください」
侯爵様の声が近い。顔を上げると、侯爵様の紫色の瞳がすぐそこにある。
至近距離だ。
「私の魔力を感じ取ってください」
侯爵様の魔力が、手を通して流れ込んでくる。
温かくて、力強い。でも優しい。
「これが...侯爵様の魔力...」
不思議な感覚だ。まるで、心と心が繋がっているような。
「よくできています。次は、あなたの魔力を私に流してください」
「はい...」
集中する。でも、侯爵様の手の温もりが気になって、なかなか集中できない。
「エリアナさん、目を閉じて。呼吸に意識を向けて」
侯爵様の声が、優しく導いてくれる。
言われた通りにすると、少しずつ落ち着いてくる。
自分の魔力が、手から侯爵様へと流れていく感覚。
「素晴らしい。その調子です」
侯爵様の声に、嬉しくなる。
---
次は、実際に魔法を使う訓練。
基本的な風魔法から始める。
「風よ、私の意志に従って」
呪文を唱えるけれど、何も起きない。
もう一度。
「風よ...」
また失敗。
「うまくいかない...」
落ち込む私に、侯爵様が優しく声をかける。
「焦らなくていい。あなたのペースで。魔法は心の状態が影響します」
「はい...」
深呼吸をして、もう一度挑戦する。
今度は、イメージに集中する。風が起こる様子を、心の中で描く。
「風よ、来て」
その瞬間、小さな風が起きた。
「できた...!」
[魔力: 35/60] (-10)
「よくできました」
侯爵様が、私の頭を優しく撫でる。
「え...」
顔が真っ赤になる。こんな風に撫でられるなんて。
侯爵様は微笑んでいる。その笑顔が、眩しい。
「最初の一歩です。素晴らしい」
その言葉が、嬉しくて嬉しくて。
もっと頑張ろうと思う。
---
訓練後、訓練場横の東屋で休憩する。
「お疲れ様でした」
侯爵様が、温かいお茶を淹れてくれる。
ハーブティーだ。疲れた体に染み渡る。
「ありがとうございます」
小さなクッキーも添えられている。甘くて美味しい。
二人で、庭園を眺めながら休憩する。
穏やかな時間。心が満たされる。
「侯爵様」
「はい?」
「侯爵様といると...安心します。本当に」
思わず本音が出る。
侯爵様は少し驚いた表情の後、優しく微笑んだ。
「私も...あなたといる時間は心地よい」
その言葉に、胸がドキドキする。
どうしてだろう。侯爵様の言葉一つ一つが、こんなに嬉しい。
風が優しく吹いて、木々の葉が揺れる。
この時間が、ずっと続けばいいのに。
そんなことを思ってしまう。
---
夜、部屋に戻って日記を書く。
今日の訓練のこと。侯爵様の手の温かさ。頭を撫でられた時の気持ち。
全部書き留める。
そして、ことりに相談する。
【ことり】
*************
今日はどうでしたか?
*************
[魔力: 35/60]
> 侯爵様に触れられると、心臓が高鳴るんです。これは、なぜですか?
【ことり】
*************
確率: 65%
身体的な反応には様々な理由があります。緊張、尊敬、信頼...そして、より深い感情の芽生えの可能性もあります。あなたの気持ちを大切にしてください。
*************
[魔力: 25/60] (-10)
「より深い...感情?」
まだ、よくわからない。
でも、侯爵様のことを考えると、胸が温かくなる。
笑顔を思い出すと、ドキドキする。
これは、何なんだろう。
尊敬?感謝?
それとも...もっと別の何か?
「わからない...」
ベッドに倒れ込む。
でも、嫌な気持ちじゃない。
むしろ、嬉しい。
明日も訓練がある。また侯爵様に会える。
それを思うと、自然と笑顔になる。
窓の外には、星が輝いている。
今日も、良い一日だった。
そして、少しだけ特別な一日だった。
**次回予告**
メイド長が持つ古い鍵の秘密が気になり始めるエリアナ。彼女とルシアの関係、そして夜に見た不思議な光。屋敷の謎が、さらに深まっていく。
第8話「メイド長の鍵」をお楽しみに!




