第61話: 必要なもの
夢の中、私は白い霧の中をさまよっていた。遠くから誰かの声が聞こえる。「……愛の誓いを……」
その言葉が、心の奥に静かに染み込んでいく。ぼんやりとした光景の中、私は誰かの手を取ろうとしていた。けれど、その手はすぐに霧に溶けて消えてしまう。
「待って……」
目が覚めると、朝の光がカーテン越しに差し込んでいた。胸の奥に残る温もりと、消えかけた声の余韻。私はしばらく天井を見つめ、夢の内容を思い出そうとした。
(あの声は……誰だったんだろう。愛の誓い……?)
ベッドから起き上がり、窓辺に立つ。外はまだ静かで、庭の草花が朝露に濡れている。私は深呼吸し、心を落ち着けた。
(呪いを解くために、何が必要なのか。私にできることは……)
---
書斎に移動し、机の上に資料を広げる。昨夜まとめたメモを見返しながら、私はことりを手に取った。淡い青色の光が、私の指先を優しく照らす。
「ことり、もう一度確認したいの。呪いを解くための条件……全部、教えて」
> 呪いを解くために必要な条件は何ですか?
【ことり】
*************
確率: 74%
三つの条件が必要です。
「完全な魔法陣」「純粋な愛の誓い」「転生者の魂の力」が揃うことで、呪い解除が可能となります。
*************
[魔力: 71/115] (-10)
ことりの文字が浮かび上がるのを見て、私は小さく息を吐いた。
「純粋な愛の誓い……」
その言葉を口にした瞬間、胸の奥が熱くなる。侯爵様のことを思い浮かべると、心臓が早鐘のように打ち始めた。
(私が本当に望んでいることは……何? 侯爵様のそばにいたい、守りたい。けれど、それだけじゃない。私自身の気持ちを、ちゃんと見つめなきゃ)
私は自分の胸に手を当て、そっと目を閉じた。前世の記憶、今の自分、そして侯爵様への想い。すべてが絡み合い、答えを探している。
「……私、どうしたいんだろう」
顔が熱くなり、思わず窓の外に目を向ける。庭で遊ぶ小鳥たちの姿が、少しだけ心を和ませてくれた。
---
昼下がり、私は庭に出た。リリーがベンチに座って本を読んでいる。フィリップスさんは花壇の手入れをしていて、侯爵様は遠くからこちらを見守っているようだった。
「エリアナ、こっちに来て!」
リリーが手を振る。私は微笑んで隣に座った。
「最近、顔色がいいね。何かいいことあった?」
「ううん、みんなと一緒にいると安心するからかな」
リリーは私の手をそっと握る。「無理しないでね。何かあったら、すぐ相談して」
「ありがとう、リリー。あなたがいてくれて本当に良かった」
フィリップスさんが花壇から顔を上げて、にこやかに声をかけてくる。「エリアナさん、今度新しい花を植えようと思うんです。手伝ってもらえますか?」
「もちろんです。お花の世話、好きなんです」
侯爵様がゆっくりと歩み寄ってきた。「皆で過ごす時間は、何よりの癒しだね」
私はその言葉に、心が温かくなるのを感じた。
「……私、もっと強くなりたい。みんなを守れるように」
侯爵様が優しく微笑む。「君はもう十分強いよ。でも、無理はしないで」
リリーとフィリップスさんも頷き、私は仲間たちの存在に改めて感謝した。
---
夕方、私は自室で新たな調査の準備を始める。机の上には、魔法陣の写しや呪いに関する資料が並んでいる。
(三つの条件……完全な魔法陣、純粋な愛の誓い、転生者の魂の力。どれも簡単じゃない。でも、私ならきっと……)
窓の外が夕焼け色に染まる。私は深呼吸し、決意を新たにした。
「絶対に、解き明かしてみせる」
**次回予告**
魔法陣の欠けた部分を修復する計画が立ち上がり、チームでの作業へと移行する展開へ。
第62話「魔法陣の修復計画」をお楽しみに!




