第55話: ことりの危機
夜の静寂を破るように、書斎の窓辺に奇妙な符号が浮かび上がった。フィリップスさんが最初にそれを発見し、私と侯爵様を呼び寄せる。
「この符号……見覚えがあります。蒼の環の手口です。」
私は符号を指でなぞりながら、過去の記憶を呼び起こす。侯爵様は眉をひそめ、すぐに防衛体制を整えるよう指示を出した。
「セレスティアさん、屋敷の周囲を確認してくれ。フィリップスさん、内部の警備を強化だ。」
緊張感が一気に高まり、私はことりを手に取り、状況を確認する。
「この符号、ただのいたずらではないわね……。魔力の痕跡が微かに残っている。」
私の声には、抑えきれない不安が滲んでいた。私はことりを操作し、さらなる情報を引き出そうと試みる。
私はことりに戦術確認を指示した。
【ことり】
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「侵入者の可能性: 85%」
「推奨行動: 防衛体制の強化」
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[魔力: 103/113] (-10)
「やっぱり、何かが起きている……。」
私は深呼吸をして、冷静さを保とうとした。私の脳裏には、過去に蒼の環と対峙したときの記憶がよぎる。
「侯爵、これはただの警告ではありません。奴らが本気で動き出した証拠です。」
侯爵様は短く頷き、剣の柄に手をかけた。
「ならば、こちらも全力で迎え撃つまでだ。」
フィリップスさんが窓辺を再度確認し、外の様子を報告する。
「外は静かですが、何かが近づいている気配があります。セレスティアさんが周囲を確認していますが、念のため全員で警戒を強化しましょう。」
私はことりを握りしめ、魔力を集中させた。
「近い……!みんな、準備を!」
私の声が響き渡り、全員が一斉に動き出した。
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書斎の外から、闇を裂くような音が響いた。侵入者たちが姿を現し、戦闘が始まる。
「エリアナ、後ろを頼む!」
侯爵様は剣を抜き、近接戦闘で敵を制圧する。一方、私は魔法陣を展開し、遠距離から援護を行う。
【ことり】
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「自動アラート: 敵の連携を検知。注意を要します。」
「マナ予測: 現在の消耗率に注意(残量推定: 90%前後)」
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[魔力: 103/113] (-0)
「炎よ、敵を焼き尽くせ!」
私の魔法が放たれるたびに、魔力が消費されていくのを感じた。
「まだいける……!」
フィリップスさんとセレスティアさんも加勢し、敵の数を減らしていく。しかし、敵の動きは予想以上に素早く、全員が緊張を強いられる。
「敵の動きが速い……!セレスティアさん、左側を頼む!」
私は素早く指示を出し、次々と魔法を放つ。私の手元から放たれる炎の矢が、敵の前進を阻む。
「フィリップスさん、右側の防御を固めて!」
フィリップスさんは頷き、盾を構えて敵の攻撃を受け止める。セレスティアさんは素早い動きで敵の背後を取り、短剣で反撃を繰り出した。
「エリアナ、魔力の残量は?」
「まだ大丈夫……でも、長くは持たないわ!」
敵の数は次第に減っていくものの、彼らの連携は崩れず、戦闘は激しさを増していく。私は一瞬の隙を突いて、さらなる魔法を準備する。
「今だ、全員突撃!」
全員が一斉に動き、敵を追い詰めていく。
そのとき、敵リーダーがことりへ飛び込み、手を伸ばした。侯爵と私は咄嗟に動き、私は『緊急魔法陣停止』を発動した。
"緊急魔法陣停止――!"
暴走しかけていた魔法陣が歪み、停止する。だがその反動で私の魔力は激しく削られ、胸の感覚が鋭く震えた。
[魔力: 87/113] (-16)
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私は一瞬の隙を突いて、結界術を発動した。
「結界よ、ことりを守れ!」
強烈な光が辺りを包み込み、侵入者たちを押し返す。魔力はさらに削られた。
「これで少しは時間を稼げる……。」
[魔力: 77/113] (-10)
侯爵様が私に駆け寄り、状況を確認する。
「無事か?」
「ええ、なんとか……。」
二人は短い会話を交わしながら、次の行動を考える。
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私は結界の中で深呼吸をし、冷静さを取り戻そうとした。私の視線はことりの画面に釘付けになっていた。
ことりのステータス表示が短く点滅し、画面の隅に小さく「敵の再編成を確認。次の攻撃までの猶予: 30秒。」と表示された。
「30秒……短いけど、やるしかない!」
私は再び魔力を集中させ、次の魔法を準備する。私の手元から放たれる光の矢が、結界の外で再び動き出した敵を狙う。
「侯爵様、右側を援護してください!」
侯爵様は剣を構え、私の指示に従って敵を迎え撃つ。彼の剣技は正確無比で、敵の動きを封じ込める。
「エリアナ、結界の維持はどれくらい持つ?」
「あと1分が限界……その間に決着をつけるわ!」
敵の攻撃は激しさを増し、結界の光が徐々に薄れていく。私は最後の力を振り絞り、最大の魔法を発動する準備を整えた。
「光よ、全てを浄化せよ!」
眩い光が結界の中から放たれ、敵を一掃する。魔力はほとんど残っていなかった。
[魔力: 17/113] (-60)
「これで……終わったの?」
私は息を切らしながら、周囲を見渡した。敵の姿は完全に消え去り、静寂が戻ってきた。
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戦闘が終わり、静寂が戻った書斎で、私はことりを手に取り、分析を開始した。
「ことり、今回の戦闘の総括を出して。」
【ことり】
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"戦闘結果: 敵の撤退成功率 95%"
"評価: 戦術的判断は適切。防衛成功率: 92%。改善点: 魔力管理の効率化。"
"推奨行動: 防衛体制の再確認"
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[魔力: 7/113] (-10)
「ことり、ありがとう。あなたのおかげで助かったわ。」
私は深呼吸をして、仲間たちに目を向けた。
「みんな、無事でよかった……。」
フィリップスさんが微笑みながら答える。
「これで一息つけますね。」
セレスティアも頷き、次の準備に取り掛かる。
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私は椅子に腰を下ろし、疲れた体を少しでも休めようとした。私の手にはことりがあり、その画面には戦闘の詳細なログが表示されていた。
"魔力管理か……確かに、もう少し効率よく使えたかもしれないわね。"
私はことりの画面を見つめながら、自分の戦い方を振り返った。侯爵様が近づき、私の隣に座る。
「エリアナ、無理をしすぎるな。お前が倒れたら、我々はどうすればいい?」
「大丈夫です、侯爵。私はまだやれます。」
侯爵様は苦笑しながら、私の肩に手を置いた。
「それでも、少しは休むんだ。次の戦いに備えるためにもな。」
セレスティアさんが温かい飲み物を持ってきて、私に手渡す。
「これを飲んで、少し落ち着いてください。」
「ありがとう、セレスティア。」
私は飲み物を一口飲み、体の緊張が少しずつ解けていくのを感じた。仲間たちの優しさに触れ、私の心にも安らぎが広がった。
「みんな、本当にありがとう。あなたたちがいてくれるから、私は頑張れる。」
フィリップスさんが笑顔で答える。
「我々も同じです、エリアナ様。あなたがいるからこそ、我々は戦えるのです。」
私は仲間たちの顔を見渡し、深い感謝の気持ちを胸に抱いた。
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私はふと、ことりの画面に映る微かな異変に気づいた。
「これは……?」
画面には、次なる脅威を示唆するようなデータが表示されていた。
「どうやら、これで終わりではないようね……。」
私は決意を新たにし、次の戦いに備えるのだった。
そのとき、ことりの画面に新たなメッセージが表示される。
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「新規脅威パターン検出。推奨行動:情報収集と警戒強化」
「関連データ:蒼の環の暗号化通信ログ断片」
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[魔力: 7/113] (-0)
「蒼の環……やはり、あの組織が背後にいるのね。」
私は仲間たちに向き直り、静かに語りかける。
「みんな、今夜の出来事は始まりに過ぎません。これからも気を引き締めていきましょう。」
フィリップスさんが真剣な表情で頷き、セレスティアさんも決意を新たにする。
私はことりをそっと撫で、心の中で誓う。
(必ず、ことりとみんなを守り抜く。どんな困難が待ち受けていようとも――)
**次回予告**
新たな手がかりを求めて、私たちはさらなる調査に乗り出す。次回第56話「ことりの告白」をお楽しみに!




