第53話: 真実の重み
書斎の静けさの中、私はルシアさんの研究ノートを広げた。ページの端には、彼女の繊細な筆跡が残されている。フィリップスさんが隣でノートの写しを広げ、指輪の刻印と一致する箇所を指差した。
「ここを見てください。この図式、指輪の模様と完全に一致しています。」
彼の言葉に私は頷き、指先でページをなぞる。ルシアさんの言葉が、まるで耳元で囁かれるように感じられた。
『結び』という言葉が何度も記されている。私はその意味を考えながら、ノートの内容を深く読み込んだ。
「この『結び』という概念、呪いの本来の目的に関係しているのでは?」
私の問いかけに、フィリップスさんは真剣な表情で頷いた。
「可能性は高いですね。防護と束縛、両方の作用を持つ技術のようです。」
私は深呼吸をし、ルシアさんの意図を少しずつ理解し始めた。彼女がこの技術をどのように使おうとしていたのか、その輪郭が見え始める。
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小さな実験室に移動し、私たちは指輪の機能を検証する準備を始めた。セレスティアさんが魔力感知の補助を行い、フィリップスさんは設計図を広げて手順を確認している。
「この結界のパターン、指輪の刻印と一致していますね。」
フィリップスさんの言葉に、私は指輪を手に取り、魔力を込めてみた。指先から流れ込む魔力が、指輪の刻印に沿って淡い光を放つ。
「防護と束縛、両方の作用がある……。設計者の意図で挙動が変わる可能性が高いですね。」
セレスティアさんが補足するように言った。
「ことり、過去の類似例を検索して。」
【ことり】
*************
『類似する技術は過去に3件確認されています。詳細は以下の通りです。`
*************
[魔力: 103/113 (-10)]
ことりの助言を得て、私たちはさらに実験を進めた。指輪の刻印が結界のパターンと完全に一致することを確認し、その機能を少しずつ解明していく。
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実験が進む中、私は指輪にさらに魔力を込めた。刻印が淡く脈動し、空間に微細な波紋が広がる。セレスティアさんが息を呑み、フィリップスさんが設計図を握りしめる。
「もう一度、最大出力で……!」
私は深く息を吸い、全身の魔力を指先に集中させた。指輪の刻印が眩い光を放ち、結界のパターンが空中に浮かび上がる。魔力が一気に流れ出し、身体が一瞬しびれる感覚に包まれた。
【魔力: 93/113 (-10)】
「……今、何かが反応した!」
セレスティアさんが叫ぶ。私はすぐにルシアさんの研究ノートを手に取り、注釈のページをめくった。
「この符号……改変の痕跡だわ。」
声が震える。フィリップスさんが古文書の断片を取り出し、照合を始める。
「もう一度、魔力を流してみてください。今度はこの符号の部分に意識を集中して。」
私は頷き、再び魔力を指輪に注ぎ込む。今度は刻印の一部が赤く光り、空間に歪みが生じた。ノートの注釈と完全に一致する反応が現れる。
【魔力: 53/113 (-40)】
「間違いありません。この技術、蒼の環が使用していた記録と一致します。」
フィリップスさんの声が重く響く。その言葉に、私の胸に怒りと悲しみが湧き上がった。ルシアさんの意図が歪められた事実が、私たちの前に突きつけられたのだ。
「ルシアさんの本来の意思を取り戻すために、私たちはこの調査を続けなければならない。」
私は強く決意を固め、仲間たちに視線を向けた。彼らの表情にも、同じ決意が浮かんでいる。
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食堂に戻ると、テーブルには温かいスープと焼きたてのパンが並べられていた。フィリップスさんが軽い冗談を飛ばし、場の空気を和ませる。
「こんなに真剣に研究していると、頭が爆発しそうですね。」
その言葉に、セレスティアさんが微笑みながら応じた。
「それなら、少し休んでリフレッシュするのも大事よ。」
侯爵様は静かに私を見つめ、優しい声で言った。
「エリアナ、無理をしないで。君の努力は十分に伝わっている。」
その言葉に、私は胸がじんわりと温かくなるのを感じた。仲間たちと共に食事を楽しむひとときが、私の心を癒してくれる。
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夜の書斎で、私はルシアさんのノートを広げていた。机の上には、彼女の研究と蒼の環に関する手がかりが散らばっている。
「蒼の環……この組織が全ての鍵を握っている。」
私はノートに新たな考察を書き留めながら、次の行動を決意した。ルシアさんの意思を取り戻すために、蒼の環の存在を追う必要がある。
窓の外には、夜空に浮かぶ月が静かに輝いていた。その光を見つめながら、私は深呼吸をして心を落ち着けた。
「明日からの調査が、新しい道を切り開いてくれる。」
そう心に誓い、私はノートを閉じた。
**次回予告**
蒼の環の謎を追うエリアナたち。次回「陰謀の全貌」をお楽しみに!




