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【第III部完結】異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第I部: 到着と発見

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第5話: 真実の一端

朝、目を覚ますと、昨日のことが夢のように思える。


地下書庫、侯爵様の優しさ、そして心配してくれた言葉。


「君が怪我をしたら、私は...」


あの言葉の続きを知りたい。でも、聞くのは怖い気もする。


ベッドから起き上がり、窓の外を見る。今日も良い天気だ。


「侯爵様に、聞いてみよう」


昨日のことも含めて、ちゃんと話をしたい。


勇気を出して、決意する。


---


朝食を終えて、侯爵様の書斎へ向かう。


廊下を歩く足音が、いつもより大きく聞こえる。


書斎の扉の前で、深呼吸。


そして、ノックする。


「どうぞ」


中から侯爵様の声。


扉を開けると、侯爵様は書類を整理していた。


「おはようございます、エリアナさん。どうしました?」


「あの...お話があります」


侯爵様は書類を脇に置き、椅子に座るよう促す。


「もちろん。何でしょう」


そして、お茶を淹れてくれる。温かい紅茶の香りが、心を落ち着かせる。


「昨日のこと、ありがとうございました。そして...色々と知りたいことがあります」


侯爵様は頷く。


「聞きたいことがあるだろうと思っていました。できる限り、お答えします」


その言葉に、少し安心する。


「まず...地下書庫のこと。そして、ルシア・ヴァンヘルシングという方について教えてください」


侯爵様の表情が、一瞬だけ曇る。


でも、すぐに優しい目に戻る。


「ルシアか...彼女は、私の...」


言葉を選ぶように、少し間を置く。


「大切な人でした」


---


侯爵様は、ゆっくりと話し始めた。


「15年前、ルシアは天才的な魔法使いでした。彼女は魔法とテクノロジーの融合を研究していた」


「魔法と、テクノロジー...」


私の心が、その言葉に反応する。前世の知識と、この世界の魔法。


「そうです。特に、記憶と意識の研究に熱心でした。人の思考を保存し、伝える方法を模索していた」


侯爵様は窓の外を見る。


「ある日、彼女は300年前から伝わる古い器を発見しました。語り箱の原型です」


「語り箱...ことりの?」


「ええ。そして、不思議なことが起きました。その器に、突如として意識が宿ったのです」


私は息を呑む。


「意識が...宿った?」


「まるで、どこか別の場所から、魂が転移してきたかのように。ルシアはそれを見届けることができました。そして、それが今の『ことり』です」


頭の中で、情報が繋がっていく。


ことりは、ただの魔法の道具じゃない。意識を持っている。


「でも、ルシアは...」


「彼女は、その研究の成果を見た後、陰謀により命を落としました」


侯爵様の声が、少し震える。


「彼女の研究を妬む者たちがいた。そして...私は、彼女を守れなかった」


深い悲しみと、後悔。侯爵様の横顔に、それが刻まれている。


「申し訳ありません。辛い思い出を...」


「いえ、大丈夫です。あなたには知る権利があります」


侯爵様は私を見る。


「エリアナさん、あなたをこの屋敷に招いたのには理由があります。あなたは、ことりと特別な相性を持っている」


「相性...?」


「ええ。普通の人では、ことりをあそこまで使いこなせません。でも、あなたは違う。まるで、ことりの本質を理解しているかのように」


その言葉に、私は前世のことを思い出す。


前世で扱っていた賢い機械。AIと呼ばれていたもの。


「あの地下の魔法陣は何のためのものなのですか?」という質問を続ける。


侯爵様は少し考えてから答える。


「あれは、記憶と意識を保存する装置です。ルシアの研究の集大成。そして、その技術が語り箱に応用されました」


「記憶と意識の保存...」


頭の中で、前世の知識が繋がっていく。


前世で議論されていたデータベース、クラウドストレージ、そしてAIの学習モデル。


あの魔法陣の構造が、まるでネットワークシステムの設計図に似ていた理由が、少しわかった気がする。


魔力の流れが、データの流れ。魔法陣の紋様が、プログラムのロジック。


異なる世界、異なる技術。でも、目指しているものは同じ。


「じゃあ、ことりは...」


「まだ全ては話せません。でも、君なら理解してくれると信じています」


侯爵様の目が、真剣だ。


「時が来れば、全てを話します。それまで、待ってもらえますか?」


私は頷く。


「はい。侯爵様を信じます」


侯爵様は安堵したように微笑む。


「ありがとう、エリアナさん」


---


部屋に戻り、ことりを起動する。


【ことり】

*************

こんにちは、エリアナ様。何かありましたか?

*************

[魔力: 44/50]


> あなたは、何者ですか?


しばらく沈黙が続く。


そして、返答が表示される。


【ことり】

*************

私は...記憶の集積です。


でも、私自身も全てを理解しているわけではありません。


ただ、あなたの力になりたい。その想いだけは確かです。

*************

[魔力: 34/50] (-10)


「記憶の集積...」


その言葉が、心に響く。


ことりも、自分のことを完全には理解していない。


でも、私を助けたいと思ってくれている。


「ことり、ありがとう」


> 私も、あなたの力になりたいです。一緒に、真実を見つけましょう。


【ことり】

*************

...ありがとうございます。


あなたとなら、きっと多くのことを成し遂げられる気がします。

*************

[魔力: 24/50] (-10)


その言葉に、何か特別なものを感じる。


一瞬そのままにしておこうかと思ったが、胸に込み上げる好奇心と甘さに負けて、つい続けて問いかけてしまう。


> ことり、本当に私の味方でいてくれる?


【ことり】

*************

確率: 93%


はい。私はあなたの力になりたいと考えています。

*************

[魔力: 14/50] (-10)


返ってきた優しい言葉に、胸が暖かくなる。だが、それだけでは満たせず、さらにもう一つだけと問いを重ねる。


> 一緒に真実を見つけたい。


【ことり】

*************

...はい。あなたと共に進みます。

*************

[魔力: 4/50] (-10)


突然、強い疲労感が襲ってくる。


「あ...」


立ち上がろうとするけれど、足がふらつく。


【ことり】

*************

警告: 魔力が低下しています。休息を推奨します。

*************

[魔力: 4/50]


「私、使いすぎてたんだ...」


ベッドに座り込む。


でも、侯爵様の言葉を思い出す。


「魔力は使うことで成長する。適切な休息と共に使えば、それは最高の訓練になる」


そうだ。使いすぎはダメだけれど、適切に使えば成長できる。


ことりとの相性の良さが、この成長を助けてくれているのかもしれない。


しっかり休息を取れば、魔力の器も大きくなるはず。


「無理はしないで、でも諦めない」


自分に言い聞かせる。


---


夕食後、気分転換に庭園を散歩する。


夕暮れの光が、木々を美しく照らしている。


庭園の中心に、大きな枯れた木があることに気づく。


不思議と、その木に惹かれる。


近づいて、幹に触れてみる。


「この木...何か特別な気がする」


理由はわからない。でも、この木は重要な存在な気がする。


ふと、首にかけている母の形見のペンダントに触れる。


青い石が、夕日を反射して輝いている。


そういえば、侯爵様がこのペンダントを見た時、一瞬動揺したような表情をしていた。


「これにも、何か意味があるのかな」


謎は深まるばかりだ。


でも、それが楽しい。


星空を見上げる。今日も良い一日だった。


そして、その時。


西棟の窓に、人影を見た。


侯爵様?いや、違う。


メイド長でもない。


見たことのない、誰か。


「誰...?」


急いで確認しようとするけれど、影は消えている。


心臓が早鳴る。


この屋敷には、まだ知らない誰かがいる。


不安と、期待。


「明日、調べてみよう」


部屋に戻る足取りは、少し速くなっていた。


この屋敷の秘密は、まだまだたくさんある。


でも、侯爵様とことりがいる。


きっと、大丈夫。


そう信じて、ベッドに入った。


窓の外では、星が静かに輝いている。

**次回予告**

エリアナは地下書庫で研究を始める。そして、ルシアの残した資料から、さらなる手がかりを見つける。侯爵との距離も、少しずつ縮まっていく。


第6話「ルシアの足跡」をお楽しみに!

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