第46話: 襲撃と緊急停止
夜の屋敷は静寂に包まれていた。警備室の窓から見える庭は、月明かりに照らされて銀色に輝いている。突然、警報が鳴り響き、私は椅子から立ち上がった。
マーガレットさんが慌ただしく駆け込んでくる。
「外部から侵入者あり!」
侯爵様はすぐに指示を飛ばす。
「全員、持ち場につけ!」
フィリップスさんは魔法探知機を操作し、リリーは緊張した面持ちで私の手を握る。
私は胸が高鳴り、ことりに心の中で問いかける。
> 侵入者の目的は?
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【ことり】
侵入者は5名、目的は魔法陣の暴走。
成功確率:90%
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[魔力: 61/110 (-10)]
侯爵様は私の肩に手を置き、優しく声をかけてくれる。
「君は無理をしないように」
私はみんなの真剣な表情を見て、屋敷を守るために自分も力を尽くそうと決意した。
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廊下に出ると、屋敷の奥から足音と怒号が響く。侵入者たちが魔法陣室に向かって突入していく。
侯爵様は剣を抜き、私の前に立つ。
「君は後ろに下がって」
私は防御魔法を発動し、廊下を封鎖する。魔法陣が床に浮かび上がり、侵入者の動きを一瞬止める。
「魔法陣を暴走させるつもりだ!」
フィリップスさんが叫ぶ。
――落ち着いて。ことりの助言を思い出す。暴走を止めるには、魔法陣室の中心を押さえるしかない。
私はまず、防御魔法で廊下を封鎖する。
光の壁が廊下を横切り、侵入者の足が鈍る。だが、彼らは無理やり押し込もうとし、金属が擦れる音と怒号が跳ね返った。
[魔力: 46/110 (-15)]
侯爵様は剣で応戦しながら、私をかばうように一歩前へ出る。
私は反撃の魔法を放ち、侵入者の動きを散らす。
空気が震え、火花のような光が飛び散る。侵入者が怯んだ隙に、私たちは魔法陣室へ駆け込んだ。
[魔力: 31/110 (-15)]
侵入者たちは魔法陣を暴走させようとしている。床の刻印が不規則に明滅し、耳の奥がきんと痛むほどの魔力のうねりが走った。
「止めるわ……!」
私は“緊急魔法陣停止”の詠唱を始める……その前に、どうしても確認しなければならない。
(今の私の判断が遅れたら、この魔法陣が暴走する)
私は歯を食いしばり、ことりに心の中で問いかけた。
> 魔法陣の暴走を止めるには?
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【ことり】
緊急魔法陣停止の発動を推奨。侵入者の狙いは「暴走誘発」です。
成功確率:88%
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[魔力: 21/110 (-10)]
指先が痺れ、視界の端が揺れる。けれど、迷っている暇はない。
魔法陣の光が一瞬だけ白く跳ね、次の瞬間、波が引くように静まった。
[魔力: 6/110 (-15)]
その反動で膝が折れそうになる。侵入者の一人が最後の悪あがきのように突っ込んできて――侯爵様が私の前へ出た。
鈍い音。肩口に赤が広がる。
「侯爵様……!」
胸の奥が冷たくなるのに、体は勝手に動かない。私はただ、彼が倒れないように支えたいのに、指先が震えて力が入らなかった。
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魔法陣室に侵入者が倒れ込む。残った者たちはこちらを睨みつけ、撤退していく。屋敷防衛に成功した――はずなのに、私の体は鉛のように重かった。
私は魔力を使い果たし、膝をつく。喉の奥が乾き、呼吸のたびに胸が痛む。床の冷たさが掌からじわりと染み込んできた。
視界の端で、語り箱の表示が赤く点滅した。ことりの警告演出だ。――マナ残量が危険域に落ちた、と直感でわかる。
数字を確かめたいのに、焦点が合わない。手が震えて、語り箱に触れる力すら残っていなかった。
侯爵様が私を抱きかかえ、優しく声をかける。
「無理をしないで」
彼の腕の温もりと、肩口の血の匂い。私は震える指で彼の衣を掴み、必死に声を絞り出す。
「ごめんなさい……私が、もっと……」
「謝らなくていい。君が止めてくれた」
その言葉に、胸の奥の張り詰めた糸が切れたみたいに、涙がこぼれた。恐怖と安堵と、彼を失うかもしれない想像が、ぐちゃぐちゃに混ざって溢れてくる。
私はその腕の中で、安心と疲労が入り混じった感覚に包まれた。
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医務室で、侯爵様が私の傷を手当てしてくれる。リリーは涙ぐみながら「本当に無事でよかった」と私の手を握る。
フィリップスさんは魔力回復薬を用意し、「これで少しは楽になるはず」と優しく声をかける。
私は語り箱に視線を向けかけて、思いとどまった。
(もう、これ以上は使えない。今は休むのが最優先だ)
侯爵様は私の手を握り、優しく語りかける。
「君がいてくれて本当に良かった」
私はみんなの温かさに包まれ、心がじんわりと癒されていくのを感じた。
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明け方、自室のベッドで今日の出来事を振り返る。
「また襲撃があるかもしれない…でも、私も守れる」
侯爵様の肩に滲んだ赤。私をかばうように立った背中。あの瞬間の恐怖が、遅れて胸の奥を締めつける。
それでも、私は止めた。魔法陣の暴走を、ここで食い止めた。
「次は、もっと早く気づけるように」
巡回の癖、侵入経路、魔法陣室の防衛……考えるべきことは山ほどある。頭は冴えているのに、体は鉛みたいに重い。
窓の外には朝焼けが広がっていた。淡い光がカーテンの隙間から差し込み、昨夜の闇が嘘だったみたいに薄れていく。
私は胸の上で指を握りしめ、守りたいものの顔を一つずつ思い浮かべる。
「大丈夫。次も、守る」
その言葉を自分に言い聞かせるように呟いて、私は新たな覚悟を胸に眠りについた。
**次回予告**
戦闘の余波、新たな謎、エリアナの成長――第47話「守る者、守られる者」をお楽しみに!




