第42話: 友情の芽生え
午後、図書室で魔法書を整理していると、セレスティアがそっと近づいてきた。
私は本の背表紙を指でなぞりながら、ふと気配を感じて振り返る。
セレスティアは、少し迷うように私の隣に立った。
「少し、お話しできるかしら?」
彼女の声はどこか不安げで、私はすぐに頷いた。
「もちろん。どうぞ」
二人で窓際のソファに座る。
外の庭園が穏やかに揺れているのが見える。
午後の光が静かに差し込み、埃の粒がきらきらと舞っていた。
セレスティアは膝の上で手を組み、しばらく黙っていた。
私は何も言わず、彼女が話し出すのを待つ。
図書室の静けさの中、遠くで時計の針が時を刻む音が聞こえる。
やがて、セレスティアが小さく息を吐いた。
「……ありがとう」
その一言に、私は少しだけ緊張がほぐれるのを感じた。
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しばらく沈黙が続いた。
セレスティアは窓の外を見つめたまま、ぽつりと呟く。
「私の家は名門で、失敗は許されないの」
その声は震えていて、私は思わず彼女の横顔を見つめた。
「家族は私に期待ばかりで、友達もできなかった。ずっと一人だったの」
私は静かに頷く。
「……つらかったんだね」
セレスティアの瞳が潤み、唇がかすかに震える。
「本当は……私の家には、誰にも言えない秘密があるの。父も母も、私にだけは絶対に失敗を許さない。何かを守るために、私を厳しく育ててきたのだと思う。でも、その“何か”はまだ教えてもらえないの」
私は前世の孤独や今の不安を重ね、胸の奥がじんわりと痛くなる。
「私も、昔はずっと一人だった。家族の期待や、誰にも言えないこと……分かる気がする」
セレスティアは驚いたように私を見た。
「エリアナも?」
私は小さく微笑む。
「うん。だから、セレスティアの気持ち、少しだけ分かるかもしれない」
二人の間に、静かな共感の空気が流れる。
私は心の中でことりに問いかけた。
【ことり】
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確率: 85%
「彼女は本当に友達を求めています。あなたの優しさが、きっと力になります」
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[魔力: 68/110(消費: 10)]
ことりの声が心に響き、私はそっとセレスティアの手に自分の手を重ねた。
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私はそっと手を差し伸べた。
「私でよければ、友達になってほしい」
セレスティアは驚いたように私を見つめ、しばらく言葉を失っていた。
やがて、彼女の瞳に涙があふれ、ぽろりと頬を伝う。
「……本当に?」
私はうなずく。
「もちろん。セレスティアと、もっといろんな話がしたい」
彼女は震える手で私の手を握り返した。
「ありがとう…こんな気持ち、初めて」
その手は少し冷たかったけれど、私の心まで温かくなった。
二人の間に、今までにない優しい空気が流れる。
窓の外では、春の風がそっとカーテンを揺らしていた。
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夕方、サロンでリリアや侯爵も交えて紅茶と焼き菓子を囲む。
サロンの窓からは夕陽が差し込み、テーブルの上に紅茶の湯気がふわりと立ち上る。
リリアが明るい声で「この焼き菓子、とても美味しいわ」と笑い、セレスティアも小さく微笑んだ。
「こんなに楽しい時間は久しぶり」
セレスティアの頬が少し赤くなっている。
侯爵様が私の方を見て、優しく言う。
「エリアナ、無理はしないように」
私は紅茶の香りを胸いっぱいに吸い込み、心がほぐれていくのを感じた。
窓の外では鳥たちがさえずり、サロンには穏やかな空気が流れている。
みんなの笑い声が重なり、私はこの場所にいられることが嬉しかった。
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夜、自室で日記を綴る。
机の上には今日の出来事を記したノートが広がっている。
「友達ができた…私も少しずつ変われているのかな」
窓の外には月明かりが差し込み、静かな夜風がカーテンを揺らしている。
私はペンを置き、ことりに小さく問いかけた。
【ことり】
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「もちろん。友情はあなたの力になります」
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[魔力: 58/110(消費: 10)]
ことりの声に背中を押されるように、私は深呼吸した。
「明日も、きっと大丈夫」
新たな決意を胸に、私はそっと目を閉じた。
**次回予告**
外部からの干渉が激化する中、研究を守るための戦いが始まる。新たな敵の影が明らかになり、主人公たちはさらなる試練に直面する。
第43話「研究の進展」をお楽しみに!




