第4話: 隠された通路
朝の光で目を覚ます。
昨夜の夢が、まだ頭に残っている。地下の部屋、魔法陣...
そして、解読に成功した日記の内容。「地下書庫 東の壁 三つの月の紋章」「ルシア・ヴァンヘルシング」——すべてが、この屋敷の秘密と繋がっている。
あの不思議な音も気になる。西棟から聞こえた、あの音...。
「あれは、ただの夢じゃないかもしれない」
起き上がり、窓の外を見る。庭園には朝露が輝いている。
今日こそ、地下書庫への入口を探そう。ことりと前世の知識を使えば、きっと見つけられるはずだ。
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朝食の席で、侯爵様と顔を合わせた。
「おはようございます、エリアナさん。今日は何をする予定ですか?」
「図書室で、勉強をしようと思っています」
嘘ではない。でも、全部でもない。
侯爵様は優しく微笑む。
「そうですか。無理はしないように。何かあればすぐに呼んでください」
「ありがとうございます」
侯爵様の配慮は、いつも温かい。本当に私のことを心配してくれている。
そう思うと、少しだけ罪悪感を覚える。でも、知りたい気持ちの方が強い。
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図書室に着くと、誰もいないことを確認する。
「東の壁...三つの月の紋章」
日記に書かれていた言葉を思い出す。
図書室の東側の壁を調べ始める。本棚が並んでいるだけに見えるけれど...
ことりを起動する。
【ことり】
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おはようございます。何かお探しですか?
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[魔力: 48/50]
> 図書室の東側に隠し扉があると思います。三つの月の紋章という手がかりがあるのですが、どうやって見つけられるでしょうか。状況を整理すると、本棚が並んでいて、普通に見ただけでは何もわかりません。
具体的に状況を説明する。前世で学んだことだ。質問は明確に、背景は詳しく。
【ことり】
*************
確率: 74%
本棚の装飾部分に注目してください。特に古い様式の彫刻がある場所。月の形をした装飾が三つ並んでいる可能性があります。魔力を少し注ぐと反応するかもしれません。
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[魔力: 38/50] (-10)
「装飾部分...」
本棚を一つずつ調べる。ほとんどは無地だけれど、奥の方に古い装飾がある本棚を見つけた。
よく見ると、三つの月の形をした小さな彫刻が並んでいる。
「これだ!」
手を伸ばし、月の彫刻に触れる。そして、少しだけ魔力を注ぐ。
すると、本棚が微かに震えた。
ギギギ...という音とともに、本棚全体がゆっくりと横に動く。
「本当に...」
本棚の奥に、石造りの扉が現れた。そして、下へと続く階段。
心臓が激しく鳴る。興奮と、少しの不安。
「行くべき、なのかな」
【ことり】
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決断はあなた次第です。ただし、慎重に行動することをお勧めします。
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[魔力: 28/50] (-10)
ことりの言葉に励まされる。
「知りたい。だから、進もう」
深呼吸をして、階段を下り始めた。
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階段は思っていたより長い。石の壁に沿って、螺旋状に下っていく。
松明の明かりが、道を照らしている。誰かが定期的に管理しているのだろう。
ひんやりとした空気。古い石の匂い。
足音だけが、静かに響く。
「どこまで続くんだろう...」
不安になりかけた時、階段が終わった。
目の前に、大きな地下空間が広がっている。
「これが、地下書庫...」
天井は高く、壁には本棚が並んでいる。でも、図書室の本棚とは違う。もっと古く、もっと厳かな雰囲気。
羊皮紙、古い革装丁の本、巻物...歴史の重みを感じる。
「すごい...」
思わず声が出る。
そして、書庫の奥に、さらに大きな扉があることに気づいた。
その扉の向こうに、何かある。強い魔力の気配を感じる。
床に、淡く光る魔法陣のようなものが見える。でも、何か変だ。
近づいて観察すると、魔法陣の一部が欠けている。まるで、完成していないシステムのよう。
(前世でシステムのバグを見つけた時の感覚に似ている...これは、意図的に不完全なの?それとも、何か失われたの?)
魔力の流れが途切れている箇所がある。この不完全性が、何か重要な意味を持っている気がする。
近づこうとした時、
「エリアナさん」
背後から声がした。
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振り返ると、侯爵様が立っていた。
「侯爵様...」
「ここに来ると思っていました」
侯爵様の表情は、怒っているようには見えない。でも、複雑な感情が浮かんでいる。
「申し訳ありません。でも、どうしても...」
言葉が続かない。
侯爵様は静かに近づいてくる。
「エリアナさん。あなたは好奇心旺盛で、聡明だ。それは素晴らしいことです」
優しい声だ。
「でも、ここは危険な場所でもあります」
「危険...?」
「まだ全てをお話しする時ではありません。でも、いずれ必ず説明します」
侯爵様は、奥の扉を見る。
「あの扉の向こうは、今は開けてはいけない。約束してくれますか?」
その目は真剣だ。
「わかりました」
私は頷く。
「ただし、この書庫は使っても構いません。貴重な資料がたくさんあります。あなたの研究に役立つでしょう」
「本当ですか?」
「ええ。ただし、一人で来る時は、必ず誰かに伝えてください。ここで何かあったら...」
侯爵様の言葉が途切れる。
「君が怪我をしたら、私は...」
その言葉に、何か特別な感情を感じる。
単なる雇い主としての心配じゃない気がする。もっと、個人的な...
「気をつけます。約束します」
侯爵様は安堵したように微笑む。
「さあ、上に戻りましょう。お茶にしませんか」
「はい」
侯爵様に導かれて、階段を上る。
後ろを振り返ると、奥の扉がまだ見える。
あの向こうに、何があるんだろう。
でも今は、侯爵様の言葉を信じよう。
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書斎でお茶をいただく。
「エリアナさん、好奇心は大切です。でも、時には危険も伴います」
「はい」
「あなたには、ゆっくりと、安全に真実を知ってほしい。だから、焦らないでください」
侯爵様の言葉は、本当に私のことを考えてくれている。
「ありがとうございます」
「それから...」
侯爵様が立ち上がり、本棚から一冊の本を取り出す。
「これを読んでみてください。古代魔法の理論書です。あなたなら理解できると思います」
分厚い本だ。表紙には複雑な紋様が描かれている。
「大切にします」
「無理はしないように。何かあれば、いつでも相談してください」
侯爵様の優しさが、胸に染みる。
この人は、本当に良い人だ。
そして、私のことを...特別に思っている気がする。
「侯爵様」
「はい?」
「ありがとうございます。本当に」
侯爵様は柔らかく微笑んだ。
その笑顔を見て、私の心も温かくなる。
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部屋に戻り、ベッドに座る。
今日は色々なことがあった。
地下書庫を見つけた。侯爵様に見つかった。そして、優しく諭された。
不思議なのは、怒られなかったこと。むしろ、心配してくれた。
「君が怪我をしたら、私は...」
あの言葉が、頭から離れない。
侯爵様は、私に特別な感情を持っているのだろうか。
それとも、単に雇い主としての責任感?
わからない。でも、嬉しい。
初めて、誰かに本気で心配してもらえている気がする。
窓の外を見ると、夕日が沈みかけている。
明日からは、地下書庫で勉強できる。そして、いずれは奥の扉の秘密も知れるだろう。
焦らず、ゆっくりと。
侯爵様の言葉を信じて。
「ことり、今日もありがとう」
語り箱に軽く触れる。
淡い光が、優しく応えてくれた気がした。
**次回予告**
エリアナが侯爵と真剣な対話をし、ルシアと魔法陣について一部の真実を知る。そして、ことりの正体の一端が明かされる。物語が本格的に動き出す、重要な第5話。
第5話「真実の一端」をお楽しみに!




