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【第III部 開始】異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第II部: 調査と成長

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第33話: リリアの訪問

春の朝、屋敷の空気はどこか浮き立っていた。




窓から差し込むやわらかな光が、床の大理石を明るく照らしている。


私は朝から落ち着かず、何度も時計を見てしまった。


どんな顔で再会すればいいのか、少し緊張している。


そんな私の様子を、侯爵様も静かに見守ってくれていた。


朝、屋敷の玄関ホールに立つと、外の空気がほんのりと春めいているのを感じた。けれど、私の胸はどこか落ち着かない。馬車の車輪の音が遠くから近づいてくるたび、心臓が跳ねる。


扉が開き、リリアが明るい笑顔で飛び込んできた。「エリー!」


「リリア!」


思わず駆け寄り、抱き合う。リリアの腕の温かさに、胸の奥がじんわりと緩む。幼い頃から変わらない、彼女の無邪気な笑顔。再会の喜びが、屋敷の空気を一気に明るくしてくれる。

「お帰りなさいませ、リリア様」


メイド長が丁寧に頭を下げる。リリアは少し照れたように微笑み返し、私の手をぎゅっと握った。「エリー、なんだか雰囲気が変わったね。大人っぽくなった気がする」


「そ、そんなことないよ」


でも、リリアの言葉に少しだけ背筋が伸びる。メイド長の視線も、どこか誇らしげだ。屋敷での私の立場が、少しずつ変わってきているのかもしれない。

リリアの髪からは懐かしい香りがした。手を握る指先がほんのり温かく、心の奥に安心が広がる。玄関ホールの大理石の床に、二人の影が重なって揺れている。こんなふうに誰かを心から待ちわびたのは、いつ以来だろう。


部屋に戻ると、リリアと二人きり。窓から差し込む光が、テーブルの上のお菓子と紅茶を優しく照らしている。


「エリー、最近の手紙、なんだか楽しそうだったよ。侯爵様の話が多いし」


「えっ、そ、そんなこと……」


リリアがにやりと笑う。「もしかして、恋してる?」


「ち、違うよ! ただ、研究の話が多いだけで……」


顔が熱くなるのを感じて、思わずカップを持ち上げる。けれど、リリアの視線は鋭い。「ふーん、でもさ、エリーの手紙、前より柔らかい感じがする。侯爵様のこと、嫌いじゃないんでしょ?」


リリアは一瞬だけ“察した”ような笑みを浮かべ、私の肩を軽く叩いた。ダイニングの窓の外では、庭の木々が春風に揺れている。侯爵様の視線が私に留まるたび、胸の奥がざわめく。リリアの視線も、どこか意味深だ。


ふと、リリアが「そういえば学院で“すごい女の子”の噂が広まってるよ」と小声で囁く。私は一瞬だけ気になったが、今は目の前の空気に圧倒されて、それ以上は聞けなかった。

「……嫌いじゃないけど、そんな……」


リリアはくすくすと笑いながら、お菓子をつまむ。「でも、無理しないでね。研究、大変なんでしょ? 怖くなったりしない?」


「ううん、大丈夫。リリアがいてくれると、なんだか安心する」


「私もだよ。エリーが頑張ってるの、ちゃんと伝わってるから」


お菓子の甘さと紅茶の香りが、心の緊張をそっとほぐしてくれる。リリアの存在が、私にとってどれほど大きいか、改めて実感する。

カップを持つ手が少し震えているのに気づく。リリアの前だと、素直な自分に戻れる気がした。紅茶の湯気がふわりと鼻先をくすぐり、焼き菓子のバターの香りが部屋いっぱいに広がる。リリアの声は昔と変わらず明るくて、でも時折、私の心の奥を見透かすような響きが混じる。


昼食の時間、ダイニングルームに入ると、侯爵様がすでに席についていた。リリアは少し緊張した面持ちで挨拶する。



「ご無沙汰しております、侯爵様。リリアです」


侯爵様の声は低く、どこか独占的な響きがある。

「ようこそ。エリアナの友人なら、私にとっても大切なお客様だ」


侯爵様の視線は、リリアよりも私に向けられている。そのまなざしに、胸がどきりと跳ねる。リリアがちらりと私を見て、意味ありげに微笑む。


「エリー、最近は体調どう? 研究も無理しすぎてない?」


侯爵様が私の体調や研究の進み具合を気遣う。その言葉は、どこか特別な響きを持っている。


「大丈夫です。無理はしていません」


「それならいい。何かあれば、すぐに相談してほしい」


リリアはそのやりとりを見て、ますますにやけ顔になる。「エリー、やっぱり大事にされてるんだね」


「もう、リリア……」


顔がますます熱くなる。侯爵様の前でこんな話題になるなんて、思ってもみなかった。


昼食後、リリアと庭園を散歩する。春の陽射しが柔らかく、花壇の花々が色とりどりに咲いている。二人きりになると、リリアがふいに真剣な顔をした。



「ねえ、エリー。侯爵様とは、最近どう?」


私は少しだけうつむいて、リリアの手を握り返す。「……好きって気持ちは、もう自分でも分かってる。でも、どうしたらこの想いを伝えられるのか、時々不安になるの」


リリアはぱっと笑顔になり、「大丈夫、エリーならきっと素敵な恋ができるよ」と優しく言ってくれる。


「焦らなくていいんだよ。ちゃんと気持ちは伝わってると思うし、無理に言葉にしなくても、行動や表情で伝わることもあるから」


リリアの言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。相談相手がいる安心感――それが、今の私には何よりも心強い。

リリアの手の温もりが、春の陽射しと重なって心地よい。花壇の花の香り、遠くで小鳥のさえずり。私は自分の恋心を、こうして誰かに話せることが嬉しかった。



夜、部屋に戻ると、リリアの言葉が頭から離れない。ベッドに横たわり、天井を見上げながら、今日一日の出来事を反芻する。侯爵様の優しい声、リリアの明るい笑顔、そして自分の胸の高鳴り。


「……ことり、ちょっと相談してもいい?」


> 侯爵様に、どうやって気持ちを伝えたらいい?


【ことり】

*************

確率: 21%

「想いを伝える方法は様々です。焦らず、エリアナ様らしいやり方で少しずつ距離を縮めていくのが良いでしょう。相手の反応を見ながら、タイミングを大切にしてください。」

*************

[魔力: 95/105(消費: 10)]


ことりの答えは、どこか曖昧で、でも優しい。魔力コストの重みを感じつつ、私は自分の気持ちと向き合う。


「焦らなくていい……か」


リリアの言葉と、ことりの助言が胸の中で混ざり合う。私はもう自分の気持ちを知っている。でも、どう伝えればいいのか、まだ少しだけ怖い。それでも、誰かに相談できる安心感が、心をそっと支えてくれる。

ことりの答えが確実でないことに、少しだけ心細さを覚える。AIの限界と、魔力コストの重み。結局、最後に頼れるのは自分自身なのだと、静かに思い知らされる。

ふと、侯爵様が「研究のことは外に漏らさないように」と言っていたのを思い出す。屋敷の中で守られている安心と、外の世界の危うさ。その狭間で、私は少しずつ強くなりたいと願う。


窓の外は静かに夜が更けていく。リリアの言葉が、何度も頭の中で反芻される。「それ、恋だと思うよ?」


胸の奥が、じんわりと熱くなる。明日も、きっと新しい一日が始まる。私は少しだけ強くなれた気がした。

夜の静けさの中、私はそっと目を閉じる。リリアの声、侯爵様のまなざし、ことりの助言――すべてが胸の奥で静かに混ざり合い、明日への小さな勇気に変わっていく。窓の外には星が瞬き、春の夜風がカーテンを揺らしていた。ほんの少しだけ、未来が楽しみだと思えた。

**次回予告**

雨の中の迎え――揺れ動く想いと、友情の絆が試される。


第34話「侯爵の優しさ」をお楽しみに!

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