表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第III部 開始】異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第I部: 到着と発見

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/90

第30話: 呪いの始動、決意の誓い【第I部終章】

地下研究所の中央室は、石造りの壁に囲まれた静かな空間だった。


フィリップが資料を広げ、侯爵様が横に立つ。私は机の上のことりに手を置いた。


「ルシアの研究ノート、最後のページです」


フィリップが羊皮紙を指さす。


そこには、複雑な魔法陣の設計図。"意識転送魔法陣"と書かれていた。


「意識を……転送?」


私は前世の記憶を辿る。バックアップ、移行、同期――。


「ルシアは、意識を構造として写し取ろうとしていました」


フィリップが言う。


「もしそれが完成すれば、呪いのループを外側から書き換えられる可能性が――」


その瞬間。


部屋の奥から、低い振動音が響いた。



「何……?」


私は声を上げる。


部屋の奥にある大きな装置が、青白い光を放ち始めていた。


誰も触れていない。なのに、動き出している。


「まずい!」


フィリップが駆け寄る。


床に刻まれた魔法陣が次々と光り始めた。あの呪いの魔法陣だ。


侯爵様の顔が歪む。


「侯爵様!」


私は叫んだ。


侯爵様の身体が――透けている。


指先から、肩へ。腕へ。


まるで、存在そのものが薄れていくように。


「時間から……消えていく……」


侯爵様が呟く。苦しそうに膝をつく。


私の心臓が凍りついた。


失う。


この人を、失う。


「いやっ……!」


私は侯爵様に駆け寄り、その腕を掴んだ。でも、手が――すり抜けそうになる。


冷たい。怖い。


フィリップが叫ぶ。


「エリアナさん! 魔法陣を止めろ! 君にしかできない!」


私は装置を見た。魔力の流れが見える。前世で見た、システムの暴走に似ている。


緊急停止――。


プロセスを割り込んで、強制終了する。


「できる……やるしかない!」


私は全ての魔力を集中させた。魔法陣解析Lv.3、複合魔法陣解析Lv.1、魔力制御Lv.2――全てを使う。


【ことり】

*************

確率: 82%


緊急停止シーケンス:

1. 魔力供給ラインの遮断

2. 中央ノードへの割り込み

3. 全ループの強制終了


あなたならできます。

*************

[魔力: 90/100] (-10)


私は装置に手を伸ばし、魔法陣の中心に魔力を叩き込んだ。


「止まれ――!」


光が弾ける。


魔力が一気に流れ出す。100、90、70、50――。


ことりの文字が激しく点滅する。


【緊急魔法陣停止Lv.1 習得】


全身から力が抜ける。でも、装置の光が消えた。


魔法陣も、静かになった。


侯爵様の身体が――元に戻っている。


「侯爵様……!」


私は倒れかけながら、侯爵様に手を伸ばした。


侯爵様が私を受け止める。その腕は確かに、温かい。


「エリアナ……君が、救ってくれた」


私は涙が止まらなかった。


怖かった。本当に、怖かった。



「解析結果が出ました」


フィリップが重い声で言った。私たちは研究所の隅で休んでいた。


「呪いの構造が分かりました。……そして、最悪の事実も」


私は息を呑む。


「呪いは、"ルシアの意識転送魔法陣の完成"を解除条件としています」


「それなら……」


「でも」フィリップが首を振る。「完成しなければ、侯爵は徐々に時間から消えていく」


侯爵様が静かに言った。


「……猶予は?」


「約半年。次の魔力共鳴が起きるタイミングです」


半年。


その言葉が、重く胸に沈んだ。


「半年で……意識転送魔法陣を完成させなければ」


私は拳を握る。


「ことりの正体も、この研究と深く関わっています」


フィリップがことりを見た。


私はことりに問いかける。


> あなたは……ルシアの研究と関係があるの?


【ことり】

*************

確率: ??%


……

*************

[魔力: 40/100] (-10)


確率が表示されない。これは初めてだ。


侯爵様が私の肩に手を置いた。


「無理はしないで」


「……でも」


「君はもう十分、戦ってくれた」


私は侯爵様を見上げた。その目は優しいけれど、どこか諦めのような影がある。


それが、許せなかった。



夕方。侯爵様の書斎に呼ばれた。


侯爵様は窓の外を見ていた。


「エリアナ。君を危険に巻き込んでしまった」


その声は、いつもより低く、震えていた。


「私は……君がいなければ、今頃消えていた」


私は胸が締め付けられる。


「侯爵様……」


「でも、もう君に頼ることはできない。これは私の呪いだ。私が――」


「違います」


私は遮った。


「違います。私、侯爵様を失いかけて、怖くて……でも、だからこそ分かったんです」


侯爵様が振り返る。


「あなたを救いたいって。あなたが消えるなんて、絶対に嫌だって」


涙が溢れた。止まらない。


「私、もう一人じゃありません。侯爵様がいて、ことりがいて、フィリップがいる」


「だから……一緒に戦わせてください。お願いします」


侯爵様の目が大きく開く。


そして、ゆっくりと私に近づいて――抱きしめてくれた。


「……君がいなければ、もう耐えられない」


その声は、震えていた。


「君の存在が、私の希望なんだ」


私は侯爵様の胸に顔を埋めた。温かい。確かにここにいる。


「絶対に、救います」


私は誓った。


侯爵様の手が、私の髪に触れる。


「……ありがとう、エリアナ」


私たちはしばらく、そうしていた。


窓の外の夕焼けが、二人を優しく照らしていた。



侯爵様がお茶を淹れてくれた。


温かいハーブティー。甘い香りが心を落ち着かせる。


「飲んで。かなりの魔力を使ったんだから」


侯爵様が優しく言う。


私はカップを両手で包んだ。温かい。


「侯爵様……額に触れてもいいですか?」


侯爵様が驚いたように目を瞬かせる。


「……どうして?」


「確かめたいんです。ちゃんと、ここにいるって」


侯爵様が小さく笑って、頷いた。


私はそっと、侯爵様の額に手を当てた。


温かい。柔らかい。生きている。


「……よかった」


私は涙ぐんだ。


侯爵様が私の手を取る。


「私もだ。君がいてくれて、本当に良かった」


その言葉が、胸の奥に染み込んだ。


これは、恋なんだ。


私は、この人を愛している。


その事実が、はっきりと分かった。



深夜。私は一人、部屋でことりと向き合っていた。


【ことり】

*************

確率: 78%


成長記録(最終確認)

- 魔力上限: 50 → 100

- 習得スキル:

魔法陣解析Lv.3

複合魔法陣解析Lv.1

魔力制御Lv.2

緊急魔法陣停止Lv.1(新規)


あなたは、この屋敷に来てから大きく成長しました。

*************

[魔力: 50/100]


私はノートに書いた。


『半年で、意識転送魔法陣を完成させる』


『侯爵様を、絶対に救う』


『ことりの正体も、必ず解明する』


文字が震えている。でも、決意は揺るがない。


窓の外を見ると、屋敷の森の奥に――一瞬、青白い光が見えた気がした。


誰か、いる?


でも、すぐに消えた。


私は窓を閉めた。


半年。


時間はない。でも、諦めない。


私には、守りたい人がいる。


愛している人がいる。


そして、一緒に戦ってくれる仲間がいる。


「ことり。明日から、本気で戦うよ」


【ことり】

*************

了解しました。


共に、進みましょう。

*************


私はベッドに入り、目を閉じた。


侯爵様の温かさが、まだ手に残っている。


「絶対に、救う」


私は小さく呟いて、眠りに落ちた。

これにて、第I部はひとまず幕となります。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。


**次回予告**

第II部では、意識転送魔法陣の手がかりを求めて本格的な調査が始まる。屋敷に残された文献と地下研究所を手がかりに、敵対勢力の影もちらつき――そして、侯爵様との距離も、もう一段階近づいていく。


第II部は16日より更新再開予定です。

ぜひブックマークしてお待ちください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ