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【第III部 開始】異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第I部: 到着と発見

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第29話: 決意と絆

呪いの魔法陣を見た夜から、私は少しだけ眠りが浅くなった。


夢の中で、同じ線を何度も辿る。出口のない円環。止まった時間。


目を覚ますたびに思う。


――あれを解かないと。



午前、庭園のベンチで侯爵様と向かい合った。


木々のざわめきが、言葉の間を埋めてくれる。


私は息を整え、真正面から言った。


「侯爵様。私、あなたを救いたいです」


声が震えた。でも、逃げない。


侯爵様の目が大きくなる。


「……私を?」


「はい。呪いを解きたい。時間を動かしたい。……あなたが、ずっと一人で背負ってきたものを」


言い終える前に、喉が詰まる。


侯爵様はしばらく黙り、やがて、優しく微笑んだ。


「君がいてくれて良かった」


その一言が、胸の奥に落ちて、温かい。


私は目を瞬かせて、笑った。


「私も……ここに来て良かったです」


侯爵様はゆっくり立ち上がり、私へ手を差し出した。


「戻りましょう。風が冷たい」


私はその手を取った。指先が絡むほどじゃないのに、十分すぎるほど温かい。


「……今も、怖いですか」


「怖いです」


「それでも、言った」


「言わないと、置いていかれそうで」


侯爵様の指が、ほんの少しだけ強くなる。


「置いていきません。君が望むなら」


その言葉で、胸の奥の硬い塊が少し崩れた。



午後、机にことりを置き、深呼吸して問いかけた。


【ことり】

*************

確率: 74%


協力方針:

1) 呪い魔法陣の構造解析

2) ループ脱出条件の仮説立案

3) 検証計画(安全優先)


あなたの決意は、行動に変換できます。

*************

[魔力: 90/100] (-10)


「行動に変換できる……」


ことりの言葉は、完璧じゃない。


でも、今の私は“完璧”がほしいんじゃない。進むための、確かな一歩がほしい。


私はノートを開き、太字で書いた。


『脱出条件』


『安全』


『侯爵様を救う』


書いた文字が、思ったより揺れて見えた。


私はペンダントに触れ、息を吐く。守られてきたものを、今度は守る側へ。



夕方、侯爵様と廊下ですれ違った。


私が手を胸元に当てると、侯爵様の目が少しだけ柔らかくなる。


「無理はしないで」


「はい。でも、進みます」


侯爵様は小さく笑って、私の手に触れそうで触れずに止まった。


「……頼りにしています」


私は頷いた。


頼りにされるのが嬉しい。怖いのに、嬉しい。


そして思う。


これは、私と侯爵様とことり――三人の仕事だ。


夜、布団に入っても、指先に残る温度が消えなかった。


“君がいてくれて良かった”。


その言葉を胸の中で反芻し、私はやっと眠りに落ちた。

**次回予告**

フィリップから新情報。呪いを解く鍵は「ルシアの研究の完成」にある。彼女が目指した意識転送魔法陣が、なぜことりの振る舞いと繋がるのか――第I部の成長を振り返りながら、私たちは本格的な調査へ踏み出す。


第30話「第I部終章:新たな冒険へ、成長の実感」をお楽しみに!

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