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【第III部 開始】異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第I部: 到着と発見

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第23話: リリアとの語らい

夜更け。屋敷の廊下は静かで、灯りだけが淡く続いている。


私はそっと客間の扉を叩いた。


「リリア、起きてる?」


「起きてる。入って」


返事が、いつもの調子で軽い。胸の奥の緊張が、少しほどけた。



リリアの部屋には湯気の立つカップが二つあった。誰かに頼んだのか、勝手に持ち込んだのか――たぶん後者。


「ほら。眠れない顔してると思って」


「……ばれてる?」


「ばれてる。あなた、分かりやすすぎ」


私はカップを受け取り、温かさで指先を溶かした。


「今日、侯爵様が……ペンダントを見て、動揺したの」


「うんうん」


「ルシア様が作った魔法具で……私を守ってたって」


言葉にすると、怖さが戻る。母とルシア様の繋がり。知らない過去。


リリアは真面目な顔で頷き、次に、意地悪な笑みを浮かべた。


「で? 侯爵様は?」


「……そこに戻るの?」


「戻る。だって一番大事」


私は頬が熱くなるのを止められなかった。


「この前……装置が暴走したとき、侯爵様が私を庇ってくれて。……そのあと、手を繋いで」


「はいはい、急接近」


「ちがう、からかわないで……」


「からかってない。羨ましいだけ」


リリアは身を乗り出して、囁く。


「ねえ、気づいてる? 侯爵様の目、あなただけを見てるわ」


「……そんなわけ」


「ある。断言する。だって、私、女の勘だけは外さない」


私は顔が熱くて、カップの縁に額を当てた。


「でも……ルシア様がいる」


「過去の人でしょ」


「でも、侯爵様の表情、苦しそうで……」


言いながら、胸が締め付けられる。あの肖像画を見つめる目。抱きしめる腕の強さ。優しさの裏にある痛み。


リリアは少しだけ声を落とした。


「あなたは、どうしたいの」


「……支えたい。隣にいたい。呪いも、屋敷の謎も、一緒に解きたい」


言った瞬間、リリアが私の手を握った。


「それが答え。あなたはちゃんと、未来を見てる」


温度が移る。安心が、胸の内側に広がる。


「怖いときは、私に言いなさい。手紙でもいい。……泣きたくなったら、泣いていい」


私は喉が詰まって、頷くしかできなかった。



カップが空になっても、私たちは小声で笑っていた。


「ねえ、エリアナ」


「なに?」


「次に侯爵様に会ったら、笑って。ちゃんと」


「……できるかな」


「できる。だってあなた、好きなんだもん」


そう言われて、私はやっと、胸の痛みの中にある甘さを認められた。

**次回予告**

リリアの提案で舞踏会に備えた特訓を始めることに。相手は――侯爵様。手を取られ、至近距離で踊るうちに、「もっと近くに」と引き寄せられて……心臓がもたない。


第24話「舞踏会の練習」をお楽しみに!

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