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【第III部 開始】異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第I部: 到着と発見

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第22話: 母の形見の秘密

ペンダントは、胸元でいつも小さく揺れている。


母の形見。私がこの屋敷に来るまで、ただの“お守り”だと思っていた。


でも、侯爵様が視線を止めるたび、あれはきっと――ただの装飾品じゃない。



午後、書斎へ呼ばれた。


机の上には資料と、薄い革の手袋。侯爵様は窓際に立ち、私が入るとすぐに振り向いた。


「エリアナさん。ひとつ、確認させてください」


「はい」


侯爵様の目が、私の胸元へ落ちる。


「それは……いつから持っているのですか」


私はペンダントを指で摘まみ、鎖ごと持ち上げた。


「母の形見です。……小さい頃から、ずっと」


その瞬間、侯爵様の指先がわずかに止まった。


驚き、というより……動揺。胸の奥が冷える。


「侯爵様?」


侯爵様は深く息を吸い、ゆっくりと言った。


「その意匠……ルシアが好んだものです」


ルシア。


私の心臓が跳ねる。母とルシア様が、どうして。



侯爵様は机の引き出しから小さな布袋を取り出し、中に入っていた薄い水晶片を掌に乗せた。


「これは、魔力の反応を見るための簡易具です」


私のペンダントへ近づけると、水晶片が淡く光った。


「……やはり」


侯爵様の声が、ほんの少し震える。


「このペンダントは魔法具です。保護の構造が組み込まれている」


「保護……?」


「危険な魔力に触れたとき、衝撃を和らげる。つまり――」


侯爵様は言葉を切り、私をまっすぐ見た。


「これがあったから、君は無事だった」


西棟に踏み込んだ夜。


地下研究所で、暴走の光を浴びかけた朝。


私はその瞬間、背筋がぞくりとした。偶然じゃない。守られていた。


「……母が、知っていたんでしょうか」


私の声は小さかった。


「分かりません。しかしルシアは、あなたの母上と繋がりがあった可能性が高い」


侯爵様の目に、悔しさの影がよぎる。


「私が知らないところで……」


私は思わず一歩近づいた。


「侯爵様のせいじゃありません」


言った途端、侯爵様の肩が少しだけ落ちた。


「……ありがとう」


その言葉に、胸の奥が温かくなる。



夕方、客間のリリアとお茶を飲んだ。


「ペンダントが魔法具だったなんて、漫画みたいね」


「笑わないで……私もまだ信じられない」


「でも、守られてきたってことよ。あなたはひとりじゃない」


リリアの言葉が、肩の力を抜いてくれる。


私はペンダントを握りしめた。


母。ルシア。侯爵様。


点と点が、少しずつ線になり始めている。



夜、部屋でペンダントを机に置き、光に透かす。


意匠の奥に、細い線――魔法陣の“構造”が見えた気がした。


「意志×魔力×構造……」


三要素の言葉をなぞる。


守るための意志。


使われた魔力。


組まれた構造。


母が残したものが、ここまで私を導いている。

**次回予告**

リリアと夜更けまで語り合う女子会。恋の話に、救出の恐怖に、そして侯爵様の本音――「目は、あなただけを見てるわ」と背中を押されて、私は真っ赤になる。


第23話「リリアとの語らい」をお楽しみに!

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