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【第III部 開始】異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第I部: 到着と発見

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第2話: 屋敷の探索

朝の光が窓から差し込み、私は目を覚ました。


時計を見ると、七時を少し過ぎたところ。慣れないベッドだったはずなのに、不思議とよく眠れた。窓の外では、庭園の木々が朝日を浴びて輝いている。


昨夜、ことりを使ってみて気づいたことがある。質問の仕方を変えると、応答が変わる。前世でAIと向き合っていた時のコツが、もしかしたらここでも使えるのかもしれない。


胸の奥に、小さな期待が灯る。


「さあ、今日から本格的に、屋敷の謎を探っていこう」


軽く背伸びをして、身支度を整える。鏡に映る自分の顔は、少しだけワクワクしている。


---


ダイニングルームに向かうと、すでにメイド長が立っていた。


「おはようございます、エリアナ様。お席はこちらです」


案内されたのは、長いテーブルの端の席。部屋には他にも数人の使用人がいて、皆忙しそうに動いている。


「朝食をお持ちします。少々お待ちください」


若いメイドが焼きたてのパンと、香ばしいスープを運んできた。湯気が立ち上り、バターの香りが鼻をくすぐる。シンプルだけれど、丁寧に作られた食事だ。


「ありがとうございます」


パンを一口食べると、外はカリッと、中はふんわりとしている。スープは野菜の甘みが効いていて、体が温まる。


食事を始めると、メイド長が向かいの席に座った。


「エリアナ様。今日は屋敷の使い方について、いくつかご説明させていただきます」


「はい、お願いします」


メイド長は手元のメモを見ながら話し始めた。


「まず、食事の時間は朝七時、昼十二時、夕方六時です。図書室、庭園、東棟の客室は自由にお使いいただけます」


私は頷きながら聞く。


「ただし...」


メイド長の声がわずかに厳しくなる。


「西棟は現在修復中のため、立ち入り禁止です。危険ですので、決して近づかないようお願いします」


西棟、修復中?


昨日見た時、そんなに傷んでいるようには見えなかったけれど。胸の奥に、小さな疑問が引っかかる。


でも、今は素直に従っておこう。


「わかりました。気をつけます」


答えると、メイド長の表情が少し柔らかくなった。


「何かご不明な点があれば、遠慮なくお申し付けください」


そう言って、メイド長は立ち上がる。


その腰に、古びた銀色の鍵が揺れているのが目に入った。装飾的な模様が彫られている。あれは何の鍵だろう。


視線に気づかれないよう、慌ててスープに目を落とす。温かな液体が喉を通り、心が落ち着く。


---


朝食後、メイド長に屋敷を案内してもらうことになった。


「まず東棟からご覧いただきます。こちらは主に客室と娯楽のための部屋です」


音楽室や応接室を見せてもらう。どれも立派で、手入れが行き届いている。


次に庭園へ。扉を開けた瞬間、花の香りが鼻に届く。


庭園は想像以上に美しかった。手入れの行き届いた花壇、小道、中央の大きな木。朝露が葉に光り、きらきらと輝いている。


ここなら、少しずつ馴染めるかもしれない。


初めて、居場所ができるかもしれない。そんな希望を感じた。


でも、本当にそうなのだろうか。侯爵様は何を隠しているのだろう。



部屋に戻り、窓辺で深呼吸する。夕暮れの光が優しく部屋を包み、少しだけ心が落ち着く。

けれど、胸のざわめきは消えない。西棟の謎、日記の断片、そして私自身の不安。


もう一度、ことりに相談してみよう。


語り箱に手を添えると、淡い光が静かに広がる。


【ことり】

*************

こんばんは、エリアナ様。ご相談内容をどうぞ。

*************

[魔力: 46/50]


> 西棟について、何か知っていることは? あの場所に人影を見た気がする。


少し長めに待つ。ことりの光が揺れる。


【ことり】

*************

確率: 41%


西棟は過去に禁断の研究が行われていた記録があります。現在は立ち入りが制限されていますが、内部に特殊な魔力障壁が存在する可能性があります。

人影については情報が不足しています。安全のため、近づかないことを推奨します。

*************

[魔力: 36/50] (-10)


ことりの返答は曖昧だけれど、確かに何かが隠されている。魔力残量も、じわじわと減っていく。

それでも、こうして相談できることが心の支えになる。


窓の外を眺めながら、私は静かに決意を固めた。

「大丈夫。少しずつ、真実に近づいていこう」


魔力[40/50]。まだ余裕はある。焦らず、慎重に。


ベッドに腰掛け、柔らかなシーツの感触に安心する。ここが、私の新しい居場所になるかもしれない。


---

そして、西棟の方を指差す。


「あちらは立ち入り禁止です。繰り返しになりますが、決して近づかないでください」


西棟を見ると、確かに少し古びた印象はある。でも、危険なほど傷んでいるようには見えない。


その時、胸の奥がざわりとした。


何か...妙な感覚。魔法使いとしての直感が、何かを感じ取っている。西棟の方向から、強い魔力の気配。肌がぴりぴりとする。


「エリアナ様?」


メイド長の声で我に返る。


「あ、すみません。何でもありません」


「お疲れですか?無理はなさらないでください」


メイド長の表情が、一瞬だけ曇った気がした。何か言いたげな、でも言えないような...。でもすぐに、いつもの厳格な顔に戻る。


---


午後、私は図書室を訪れた。


重い扉を押し開けると、古い紙とインクの香りが鼻をつく。


天井まで届く本棚が、部屋全体を覆っている。数千冊、いや、もしかしたら数万冊の本。


魔法理論書、歴史書、古代語の辞典、薬草学の本...様々な分野の本が丁寧に整理されている。


奥の読書用テーブルに座り、深呼吸をする。窓からの光が心地よい。


ことりを取り出す。昨夜の気づきを試してみたい。


語り箱に触れると、淡い光が浮かび上がる。温かい。


【ことり】

*************

こんにちは、エリアナ様。今日はどのようなご相談でしょうか?

*************

[魔力: 36/50]


> この屋敷について、歴史や過去の研究について教えてください。


質問を具体的に。前世でAIと向き合っていた時のコツを思い出す。


少し待つと、返答が表示される。


【ことり】

*************

確率: 82%


ヴァンヘルシング家は約300年の歴史を持ち、代々魔法研究を行ってきました。特に15年前までは、魔法とテクノロジーの融合研究が盛んに行われていました。


屋敷の地下には古い記録が保管されています。図書室の奥の棚を探してみることをお勧めします。

*************

[魔力: 26/50] (-10)


地下?古い記録?


ことりのアドバイスは的確だ。やはり、質問の仕方次第で精度が変わる。


この感覚、前世でAIと向き合っていた時と似ている。もしかして、ことりも...?


私は立ち上がり、図書室の奥へと向かった。


---


奥の棚は埃をかぶっていた。空気もひんやりとしている。


脚立を使って古い革装丁の本を取り出す。埃が舞う。


その中に、日記のような本を見つけた。


表紙には「研究日誌」と刻まれている。


最初のページ。15年前の日付。ちょうど、ことりが言っていた時期だ。


次のページをめくると、几帳面な文字で記録が綴られている。


「禁断の研究...」

「地下の秘密...」

「意識の転移...」


断片的な単語が目に飛び込んでくる。


心臓が高鳴る。これは、侯爵様の秘密に関係している。私を招いた理由に。


きっと、そうだ。


これは一体...


「エリアナ様」


突然の声に、心臓が跳ねる。


振り向くと、メイド長が立っていた。


「何を読んでいらっしゃるのですか?」


メイド長の目が私の手元の本に注がれる。その表情が強張った。


「古い魔法の本を探していて」


私は慌てて本を棚に戻す。


「夕食の時間が近づいています。そろそろお部屋にお戻りになったらいかがですか」


「はい、わかりました」


私は足早に図書室を後にした。


でも、日記の場所は覚えた。後で読もう。


---


部屋に戻る途中、廊下の窓から西棟を見た。


夕日を浴びた建物。その窓の一つに、人影が見えた気がした。


目を凝らすけれど、もう何も見えない。


気のせいだろうか。


いや、確かに見えた。誰かが、あそこにいる。


「禁断の研究」「地下の秘密」「意識の転移」...


日記に書かれていた言葉が、頭の中でぐるぐると回る。


メイド長の強張った顔。侯爵様の「唯一無二の適性」という言葉。西棟の人影。


すべてが、何かに繋がっている気がする。


今夜、あの日記を読まなくては。


答えは、きっとあそこにある。

**次回予告**

日記の暗号を解読しようと試みるエリアナ。ことりの助言と前世の知識を組み合わせて、少しずつ真実に近づいていく。そして、友人からの手紙が届き...夜、不思議な音が聞こえる。



第3話「最初の謎」は本日21時公開予定です。


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