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【第III部 開始】異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第I部: 到着と発見

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第16話: 叱責と守られる安心

朝の光がカーテンの縁を白く染めていた。


昨夜の西棟――危険だと止められたのに、私は勝手に踏み込んでしまった。眠れないまま迎えた朝、扉が控えめに叩かれる。


「エリアナ様。侯爵様がお呼びです。書斎にお越しください」


喉が乾いた。鏡の中の目は赤い。深呼吸をひとつして廊下に出る。足が重いのに、心臓だけが急いだ。



書斎に入ると、侯爵様は窓辺に立っていた。私の気配に気づき、ゆっくり振り向く。表情は厳しい。


「昨夜のことについて話しましょう」


「申し訳ございませんでした」


頭を下げると、静かな声が落ちた。


「なぜ、あの場所に行ったのですか? あれほど危険だと言ったはずです」


「……侯爵様のことを、もっと理解したくて……でも、言い訳になりません」


涙がこぼれる。


「約束を破りました。信頼を裏切りました」


沈黙が伸びる。侯爵様の視線が痛い。


「あなたが危険な目に遭うことは、私にとって……」


言葉が途切れた。次の瞬間――



侯爵様が私を抱きしめた。強く、温かい腕。


「君を失いたくない」


耳元の声が震えている。


「君は私にとって……かけがえのない存在なのです」


胸元に押し当てられた頬のすぐ上で、鼓動が速く鳴っていた。私のせいで、この人の心まで乱してしまった。


「もう二度と、危険なことはしないと約束してください」


「はい……約束します」


涙は止まらない。でも、今は安堵の涙も混じっていた。



抱擁がほどけた瞬間、視界が揺れた。


「あ……」


膝が折れそうになるのを、侯爵様が支える。


「熱があります。昨夜の魔法障壁の影響と、睡眠不足でしょう」


私は謝りかけたが、言葉は続かなかった。侯爵様は迷いなく私を抱きかかえ、部屋へ運ぶ。腕の中は、怖いほど安心できた。



自室のベッドに寝かされると、メイド長マーガレットが呼ばれた。


「魔力の消耗と疲労ですね。しっかり休めば回復します」


「何か食べられるものを」


侯爵様が言うと、彼女は頷いた。


「温かいスープをお持ちします」


二人きりになり、私が「お仕事が……」と呟くと、侯爵様は即答した。


「今日は全て中止にしました。あなたの傍にいたいのです」


胸の奥が熱くなる。守られているだけじゃない。大切にされている。


運ばれてきた鶏と野菜のスープは、湯気と一緒に優しい香りを運んだ。侯爵様がスプーンで口元へ寄せる。


「少しずつで構いません」


温かさが喉を通り、体の芯がほどける。


「美味しい……」


「良かった」


食べ終えると、侯爵様の手が額に触れた。


「よく眠ってください。私はここにいます」


その言葉に、私は安心して目を閉じた。



夕方、橙の光の中で目を覚ますと、侯爵様はまだ椅子に座り本を読んでいた。私の気配に気づき、本を置く。


「気分はいかがですか?」


「もう大丈夫です。ありがとうございます」


「本当に良かった」


私は恐る恐る尋ねた。


「ずっと、そばにいてくださったんですか?」


「ええ。当然です。……あなたは私にとって、大切な人ですから」


胸が痛いほどに温かい。


侯爵様は一度息を整え、真剣な眼差しで言った。


「エリアナさん。これから西棟のことをお話しします。あなたには知る権利があります。そして……あなたに協力してほしいのです」


「私に……ですか?」


「ええ。あなたの力が必要です。明日、正式に地下研究所をご案内します」


怖い。けれど――私は頷いた。


「はい。喜んで」


そっと差し出した手を、侯爵様が握り返す。夕日の温度が二人の指の間に落ち、私は明日へ向けて息を整えた。

**次回予告**

体調が回復したエリアナは、侯爵から地下研究所への正式な案内を受ける。前世のコンピュータ室に似た配置に驚愕。そして研究者フィリップも加わり、本格的な調査が始まる!


第17話「地下研究所」をお楽しみに!

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