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異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第V部: 決戦と新たな始まり

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140/160

第140話: 結社の軍勢

広間の柱列の間から現れたのは、結社の兵だけではなかった。古代装置を改造したらしい自律兵器が、金属の関節を軋ませながら隊列を組んでいる。人間の術者と機巧兵が一体化したような布陣。魔法だけでも剣だけでも崩し切れない、嫌な編成だ。


「来るわよ、エリー!」


リリーの声に、私は杖を構える。胸の奥で脈が早まるのを感じながら、ことりに最初の解析を投げた。


> 敵の指揮系統と主戦術を表示して!


【ことり】

*************

戦術解析:前衛機巧兵が防壁展開、後衛術者が拘束術式を重畳。

指揮中枢は左奥の高台(黒衣個体)です。

推奨:中枢遮断で隊列機能が低下します。

成功確率:79%

魔力消費:-10(残140/150)

*************


「左奥の黒衣が要。あれを止めれば崩れる!」


私の声に、全員が頷いた。リリーは一歩前へ出て、震える拳を握る。


「こんな敵、負けない!」


そのひと言が、冷たい広間に確かな熱を灯す。怖いのは私だけじゃない。それでも彼女は前へ出る。なら、私も迷っていられない。




戦闘は、開始と同時に激流になった。機巧兵の前衛が半透明の障壁を展開し、後衛術者の鎖術式が床を這うように伸びてくる。私は足場を変えながら解式を撃つが、すぐ次の層が重なる。


「硬い……!」


刹那、横から飛んできた拘束鎖が私の手首を狙った。アレクサンダー様の剣閃がそれを断ち切り、火花が散る。


「エリアナ、下がるな。私の背で呼吸を整えろ」


低く、揺るがない声。私は一拍だけ彼の背中を見て、心を落ち着ける。侯爵家が守ってきた古文書にあった"二重結界崩し"の理屈が頭をよぎった。外層を壊すのではなく、結節点を逆流させる。


「フィリップさん、右列第三柱の根元、位相ずれがあります!」


「見えました。そこを起点に回せます!」


セレスティアさんが側面から雷光を差し込み、フィリップさんが位相を撹乱、私は中心の流れへ解式を重ねる。障壁がひしゃげるように歪み、前衛機巧兵の動きが一瞬鈍った。


その隙に、マーガレットさんが低く笑って前へ出る。


「まだまだいけるわ。姿勢を崩さないで、皆」


その声は不思議なくらい落ち着いていて、乱れかけた呼吸を揃えてくれる。私は頷き、次の一手を選んだ。




広間の戦況が拮抗したところで、私は二度目の照会を行う。


> 中枢を落とす最短手順、いまの配置で更新して!


【ことり】

*************

再計算結果:左奥高台への直進は危険。

推奨:中央柱影を利用し三段移動、最後に上方結界を一点貫通。

成功確率:73%

補足:中枢停止後、機巧兵は約12秒遅延して機能低下。

魔力消費:-10(残130/150)

*************


「十二秒、もらう!」


私は柱影を縫って走り、アレクサンダー様が正面で敵の視線を引き受ける。リリーの光弾が上部術式を揺らし、セレスティアさんの雷が結界に亀裂を入れた。最後の一点へ、私は解式を叩き込む。


高台の黒衣が悲鳴を上げ、広間全体の制御が崩れた。機巧兵の関節音が乱れ、術者の詠唱がもつれる。マーガレットさんが後衛を制圧し、フィリップさんが拘束陣を停止。数息ののち、敵は完全に沈黙した。


私は膝をつきかけた体を支え、荒い息を整える。アレクサンダー様が近づき、血のついていない手で私の頬に触れた。


「君がいてくれて良かった」


たったそれだけで、疲労の底に温かい光が灯る。


「私も、あなたがいてくれて良かったです」


勝った。けれど、代償がないわけじゃない。皆の衣服は裂け、腕には浅い傷、瞳には緊張の色がまだ残る。それでも誰一人欠けていない。その事実が、何よりの救いだった。




広間の奥にあった隔壁がゆっくり開き、さらに深い空間へ続く回廊が現れた。黒い床石に蒼い線が走り、心臓の鼓動のように明滅している。


私は仲間たちを見渡し、はっきり告げる。


「ここから先も、みんなで必ず帰りましょう」


アレクサンダー様が私の手を取り、静かに微笑んだ。


「もちろんだ。君と共に、最後まで行く」


そのぬくもりを握り返し、私は暗い回廊へ一歩を踏み出した。

結社の軍勢を突破したエリアナたちの前に、さらに強固な障壁が立ちはだかる。仲間を守るため、リリーの潜在能力がついに目覚める。第141話「リリアの覚醒」をお楽しみに!

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