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異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第IV部: 暗転と再起

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135/160

第135話: 運命の扉

未明の最深部前は、息をするだけで喉が焼けるような魔力に満ちていた。巨大な扉を覆う結界は幾重にも折り重なり、古代文字と論理記号が脈打つように明滅している。私は胸元のペンダントを握り、アレキサンダー様の隣で足場を確かめた。


研究者さんは結晶片を両手で支え、震える声で言う。


「欠片は反応しています。だけど、位相が合わなければ封印は逆流します」


フィリップさんが術式板を抱え、セレスティアさんが杖先の光を扉の縁へ這わせた。リリーは私の外套の裾を整え、「呼吸、忘れないで」と小さく笑う。メイド長も頷き、「皆さまなら越えられます」と背を押した。


私は仲間たちの顔を順に見た。不安は消えない。けれど、怖さを分かち合える相手がここにいる。指先を差し出すと、すぐに誰かの手が重なり、円の温度が私の鼓動を落ち着かせてくれた。


---


扉の中央には、ルシア様の筆跡で刻まれた補助術式が残っていた。私はその線をなぞり、欠けた文字を研究ノートの断片と照合する。


『守るべきは力そのものではなく、選ぶ意志である』


その一文を読み上げた瞬間、アレキサンダー様の表情が静かに揺れた。


「ヴァンヘルシング家が守ってきた秘密は、鍵の所在ではない。暴走する力に、意志を与える継承そのものだった」


研究者さんが結晶を掲げる。台座の紋様が呼応し、薄い光が私の足元まで伸びてきた。


「継承者と転生者、そして媒介。この三つが揃って、初めて扉は開く……ルシア様はそこまで見越していたんですね」


私は深く息を吸い、扉へ正面から向き直る。


「私は誰かの代わりじゃない。私の意志で進みます」


アレキサンダー様が肩を抱き寄せ、短く「共に」と告げた。その重みが、迷いの最後の薄膜を剥がしていく。


---


朝方、全員が所定の位置についた。結晶片は台座で明滅し、扉の紋様は高速で位相を変えている。私はことりを両手で包み、起動の合図を送った。


*************

【ことり】

扉解放サポートを開始します

位相補正を実行中

最終同調を完了

推定成功確率は80%です

[魔力: 40/150]

*************


低い轟音が響き、封印線が一本ずつ消えていく。研究者さんが計測値を叫び、フィリップさんが補助術式を固定、セレスティアさんが逆流を押さえ込んだ。私は膝が震えるのを感じながらも、ことりの光を見失わない。


「行ける。今です!」


扉がゆっくりと割れ、未知の光が隙間から溢れた。誰も歓声を上げない。ただ全員が、同じ緊張と同じ決意で前を見ていた。ここから先は、引き返せない。でももう、独りで進む道じゃない。


アレキサンダー様が名を呼ぶ。「ここまで来てくれて、ありがとう」。私は首を振り、「私こそ、ここまで連れてきてもらいました」と答えた。孤独だった探索は、手を繋いで進む旅に変わっていた。


---


扉の向こうは、天井の見えない白い空間だった。床の紋様は生き物みたいに脈打ち、圧倒的な魔力が肌を刺す。私は思わず息を呑み、隣の手を探した。


アレキサンダー様の手、リリーの指、メイド長の掌。次々に重なり、輪ができる。


「みんなで、必ず帰ろう」


私の声に、全員が頷いた。未知の中心で待つものが何であれ、この輪を離さない。私たちは同時に一歩を踏み出し、運命の戦場へ身体ごと踏み込んだ。

重なった手の温度が、最後の迷いを静かに溶かしていく。


失ったものの痛みも、終わらない戦いも、全部を抱えたまま前へ進む。

真実だけじゃない。独りでは届かなかった未来を、共に選び取る覚悟が、私たちの手の中にあった。

**次回予告**

運命の扉の先で待ち受ける最終決戦。全ての謎と想いが交錯し、物語はクライマックスへ。第V部、堂々開幕。


第V部「決戦と新たな始まり」をお楽しみに!


---


ここまで第IV部をお読みいただき、本当にありがとうございます。皆さまの応援が、エリアナたちの物語をここまで進める大きな力になりました。

物語はいよいよ、最終部である第V部を残すのみです。

次回更新は**2/28**からを予定しています。最終章もどうぞよろしくお願いいたします。

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