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異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第IV部: 暗転と再起

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第134話: 古代の真実

夜の地下研究施設入口は、息を吸うだけで肺が冷えるほど静かだった。石壁一面に重なった結界紋は、薄青い光を脈打たせながら私たちを拒んでいる。研究者さんが懐から取り出した結晶片を扉中央へかざすと、硬い音とともに紋様の一部が反転した。


「やっぱり……この欠片が鍵だったんだ」


私が呟くと、ことりが素早く表示を重ねる。


*************

【ことり】

結界解析を開始します

前世技術由来の層構造を確認

開門手順を補助します

[魔力: 0/150]

*************


フィリップさんとセレスティアさんが左右の術式を押さえ、アレキサンダー様が私の手首を軽く引いて安全距離を取らせる。次の瞬間、封鎖扉が低く唸って開いた。私は無意識に隣の手を握り返す。仲間たちの指先が次々に重なり、震える心拍が少しずつ整っていった。怖い。それでも、全員でなら進める。


---


施設中枢部は、天井まで伸びた導線管と古代文字で埋め尽くされていた。中央台座に研究者さんの結晶を置いた瞬間、壁面スクリーンへ古い家系章が浮かび上がる。ヴァンヘルシング家の紋章、その下に封印継承者の名が連なる。


「これが……侯爵家が代々守ってきた記録です」


研究者さんの説明に、アレキサンダー様は目を伏せたまま頷いた。


「我が家の使命は、力を独占することではない。暴走を防ぎ、次代へ正しく渡すことだった」


台座脇の引き出しから、劣化した冊子が見つかる。表紙にはルシア様の筆跡。私はページを開き、息を呑んだ。結晶欠片は古代魔力結晶の分割コアで、同調者の意思でしか起動しないとある。


指先が震えた瞬間、アレキサンダー様が手を包んだ。


「大丈夫だ。君は私が必ず守る」


その一言で、胸の奥の恐怖がかろうじて形を保った。


---


さらに奥の研究室跡には、崩れた机と焦げた術式板が散乱していた。残存記録をことりへ接続すると、断片データが次々に再構築される。ルシア様の研究は「意識転送」と「魔法回路への技術実装」を同時に成立させる設計だった。


前世の知識で見れば、魔法陣の分岐構造は論理回路に近い。だから私は、ことりの提案を異様なほど使いこなせたのだと理解する。私とことりの噛み合いは偶然じゃない。前世から続いた癖と選択が、ここで一本の線になっていた。


ことりは小さく明滅し、短い表示を出す。


*************

【ことり】

私はあなたの味方です

最終工程まで同行します

*************


喉の奥が熱くなる。私は箱を胸元へ引き寄せ、ゆっくり頷いた。アレキサンダー様も研究者さんも、何も急かさず見守ってくれる。その静かな時間だけで、もう一度立ち上がる力が戻ってきた。


---


未明、最深部前の広間。封鎖扉の向こうから、重い魔力の脈動が伝わってくる。私たちは円陣を作り、最後に互いの顔を見た。


ことりが力を振り絞るように光る。


*************

【ことり】

最終局面を確認

推定成功確率は70%です

*************


「十分です」


私が言うと、アレキサンダー様が短く頷く。仲間たちの掌が重なり、円の中心で体温がひとつになった。


真実は揃った。残るのは、運命を選び取るだけだ。私は扉へ向き直り、次の一歩を踏み出した。

**次回予告**

最深部で待ち受ける真の敵と対峙する時が来る。全ての真実が明かされ、運命の戦いが始まる。


第135話「最深部の敵」をお楽しみに!

本日17時公開予定です

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