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異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第IV部: 暗転と再起

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第132話: 見守る習慣

昼の廊下は窓からの光で白く伸び、床板に細い影を落としていた。私は掃除道具を片づけるメイド長の背中に声をかける。ずっと気になっていたことを、決戦前の今こそ聞きたかった。


「メイド長、夜に私の部屋の前で立ち止まっていたのは……どうしてですか?」


メイド長は古い銀鍵を胸元で握り、少しだけ目を伏せた。


「ルシア様を守りきれなかった夜から、見守ることをやめられなくなりました。エリアナ様には、同じ孤独を味わってほしくなかったのです」


胸がきゅっと締まる。あの複雑な表情の理由も、鍵に込められた決意も、今やっと届いた。


*************

【ことり】

感情分析を実行します

発言は高い保護意図を示します

整合性: 92%

[魔力: 20/150]

*************


私はメイド長の手を取った。少し冷えた指先が、すぐに温度を返してくる。


「ありがとうございます。私は、ずっと守られていたんですね」


メイド長は小さく微笑み、静かに握り返してくれた。


---


午後のリビングには、紅茶の香りと焼き菓子の甘い匂いが満ちていた。リリーが注いでくれた湯気の向こうで、メイド長はゆっくりと言葉を選ぶ。


「エリアナ様をお迎えしてから、屋敷の空気が変わりました。私はいつの間にか、家族を見守るような気持ちになっていました」


私が息を呑むと、アレキサンダー様が穏やかに頷く。


「私も同じだ。君はこの屋敷にとって、もうかけがえのない存在だ」


言葉が胸の奥へ真っすぐ落ちてくる。リリーは目を潤ませながら笑い、「だから絶対、みんなで帰ろう」とカップを掲げた。


私は両手で温かな磁器を包む。指先から伝わる熱と、皆の視線のやわらかさに、張りつめていた心がほどけた。家族という言葉が、こんなに現実の重さを持つなんて、前世の私には想像できなかった。胸の奥に、静かな勇気が灯った。


---


夕方、屋敷の要所を回りながら最終確認が始まった。メイド長が古鍵で封印陣を起動し、フィリップさんが術式値を読み上げ、セレスティアさんが補助結界を重ねる。私はことりの表示を追い、異常箇所の記録を即座に共有した。


*************

【ことり】

精神安定化モードを維持します

防衛網は安定しています

全体同期率: 95%

[魔力: 20/150]

*************


「このままなら、初動は十分耐えられます」


フィリップさんの声に、全員が短く頷いた。メイド長は最後に玄関の防壁へ触れ、「屋敷は私が守ります」とはっきり言い切る。


中庭へ戻ると、私たちは自然に円を作った。中央へ差し出された手に、順番に手を重ねる。重なる体温が、ばらついていた呼吸をひとつに整えていく。


「全員で戻る」


その誓いは、もう誰のものでもなく、私たち全員のものだった。


---


夕暮れの中庭は、風の音まで静かだった。空が茜から群青へ変わるのを見上げながら、私たちは肩を並べる。


メイド長が私を見て、いつもの凛とした声で言った。


「エリアナ様、皆さま。必ず帰ってきてください」


「はい。必ず」


私が答えると、アレキサンダー様も静かに頷いた。ことりの光が小さく脈打つ。


決戦は、もう次の扉の向こうだ。それでも今は、この静けさごと胸にしまって進める気がした。誰も欠けずに帰ると、改めて心に誓う。


**次回予告**

いよいよ決戦の地へ。家族のような絆とメイド長の想いを胸に、全員が運命に立ち向かう。


第133話「運命の境界」をお楽しみに!


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