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異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第IV部: 暗転と再起

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131/160

第131話: メイド長の真実

朝の厨房は、焼きたてのパンとスープの香りで満ちていた。私はメイド長の向かいに座り、白い湯気の向こうにある横顔を見つめる。いつもより静かなその表情に、胸が少しだけ緊張した。


「エリアナ様、今日はお話ししておくべきことがあります」


メイド長は古い銀鍵をテーブルに置いた。見慣れたはずの鍵が、朝日を受けて鋭く光る。


「私はかつて、ルシア様の護衛補佐でした。侍女であると同時に、封印術を扱う家系の者でもあります」


思わず息を呑む。ルシア様に仕えていたことも、隠された魔法能力も、全部が一本の線で繋がった。


ことりが小さく明滅し、補足の文字を示す。


*************

【ことり】

情報解析を実行します

証言整合性: 高

古鍵は封印術式の起動媒介です

[魔力: 30/150]

*************


頷いた。「話してくださって、ありがとうございます」。メイド長は微笑み、皿を私の前へ寄せる。スープの熱が指先に伝わると、張っていた気持ちがほどけた。


---


午前、屋敷の廊下には淡い防護光が走っていた。メイド長が古鍵をかざすたび、壁面の紋様が薄青く浮かび上がる。私はことりを胸元で支え、フィリップさんの指示で術式板へ補助記号を書き込んだ。リリーは結界石を運び、必要な場所へ手際よく配置していく。


*************

【ことり】

防御最適化を実行します

北棟の障壁強度を12%向上

西棟の遅延陣を再同期しました

[魔力: 30/150]

*************


「このラインで侵入を遅らせられる」


フィリップさんが満足そうに息を吐く。メイド長も頷き、「これで屋敷の要所は守れます」と告げた。


作業の合間、リリーが湯気の立つお茶を配ってくれる。「少し休もう、エリー」。温かいカップを受け取ると、冷えていた掌がじんわり戻ってきた。みんなの手が同じ方角へ動いている。その事実だけで、怖さは確かに小さくなった。


---


昼前の中庭に、全員が集まった。風は少し強いのに、誰も視線を逸らさない。メイド長は一歩前へ出て、まっすぐ私たちを見渡した。


「この屋敷も、皆さまも、私が必ず守ります」


凛とした声が石畳に響く。アレキサンダー様は静かに頭を下げた。


「マーガレット、長い間ずっと支えてくれてありがとう。あなたの覚悟に、心から感謝する」


メイド長の目元がわずかに揺れ、それでも笑みは崩れなかった。私は胸が熱くなり、ことりを強く握る。


「私も、守られるだけじゃなく守ります」


フィリップさん、セレスティアさん、リリーが頷き、私たちは自然に円を作った。中心へ差し出された手に、順番に手を重ねる。体温が伝わり合うたび、ばらばらだった不安は決意へ変わっていく。


「全員で、必ず戻る」


短い言葉が、全員の誓いになった。


---


昼の書斎で、作戦図の最終確認が始まった。私はアレキサンダー様の隣で図面を押さえ、ことりの表示を読み上げる。


*************

【ことり】

作戦最終確認を完了しました

主要行程に矛盾はありません

*************


メイド長は鍵を握ったまま、私たちへ穏やかに微笑んだ。


「後は任せてください。皆さまは、迷わず進んで」


私は深く頷き、仲間たちと目を合わせる。次に開く扉の先は、もう決戦の地だ。ここまで繋いだ想いを抱えて、私たちは同じ一歩を踏み出す準備を整えた。

**次回予告**

いよいよ決戦の地へ。メイド長の想いと力を胸に、全員が運命に立ち向かう。


第132話「決戦の地へ」をお楽しみに!


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