表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第IV部: 暗転と再起

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

129/160

第129話: 決戦前夜

夕方の書斎には、張りつめた静けさが満ちていた。机の上に広げた地図と魔法陣図を囲み、私、アレキサンダー様、フィリップさん、セレスティアさんが視線を交わす。ことりが中央で淡く光り、層状に重なる術式の要点を表示した。


*************

【ことり】

作戦立案モードを開始します

魔法陣は三層構造です

外層固定・中層転写・中枢同調

主リスクは中枢同調失敗時の逆流です

[魔力: 50/150]

*************


「私が中枢を担当します。転写の同期は外しません」


私が言うと、フィリップさんが頷き、セレスティアさんも短く「援護は任せて」と答えた。アレキサンダー様は地図の北東地点を指し、「全員、生還を最優先に」と告げる。私は手を差し出し、皆の手が重なった。温度の違う掌が一つになった瞬間、恐怖の形が少しだけ変わった。怖いままでも、進めると分かった。


---


夜の屋敷は、廊下の灯りだけが細く続いていた。私は自室の窓辺で母のペンダントを握り、冷えた金属の重みを指先で確かめる。胸の奥では鼓動が早い。けれど、逃げたい気持ちより、守りたい気持ちの方がはっきりしていた。


廊下の向こうでは、アレキサンダー様が肖像画の前に立っていた。ルシア様の微笑みに向かって、声にならない祈りを捧げている。フィリップさんは薬剤と魔道具の最終確認を続け、セレスティアさんは杖先の結晶を磨きながら呼吸を整えていた。


私が部屋を出ると、ことりが控えめに光る。


*************

【ことり】

精神安定化モードを維持しています

深呼吸を推奨します

あなたは独りではありません

[魔力: 50/150]

*************


その直後、リリーが温かいお茶を差し出してくれた。「必ず帰ってきてね、エリー」。まっすぐな笑顔に、喉の奥が熱くなる。メイド長も静かに頷き、「皆さまの帰還まで、屋敷は私が守ります」と言った。私はカップの熱を両手で受け止め、深く頷いた。


---


深夜の中庭は、露を含んだ草の匂いが濃かった。私たちは並んで夜空を見上げる。雲の切れ間に滲む星明かりが、黒い石畳に淡く落ちていた。


ことりが、いつもより穏やかな明滅で言葉を刻む。


*************

【ことり】

成功確率は50%です

ですが、皆さんなら到達可能です

互いの信頼が最大の補正要因です

[魔力: 50/150]

*************


「半分もあるなら、十分だ」


フィリップさんが肩をすくめ、セレスティアさんが小さく笑う。「あとはやるだけね」。アレキサンダー様は私の肩にそっと触れ、「君となら乗り越えられる」と低く言った。私はその体温に背中を預け、ことりを胸元で握る。みんなの呼吸が同じ速さになっていく。指先の震えも、少しずつ静まっていった。静かな夜の中で、私たちの絆だけが確かに音を持っていた。


---


未明の玄関ホール。灯火の下で、私たちは装備と魔道具を最終確認した。フィリップさんが封印薬を渡し、セレスティアさんが結界石の同期を完了させる。リリーは外套の留め具を直し、メイド長は無言で扉を開いた。


ことりの光が、出発の合図みたいに強まる。


*************

【ことり】

準備は整いました

作戦開始可能です

*************


「必ず戻ります」


私の言葉に、全員が頷いた。アレキサンダー様が一歩先へ進み、私はその隣に並ぶ。冷たい未明の空気を吸い込み、運命の扉へ向かって、私たちは同時に踏み出した。


**次回予告**

いよいよ最終決戦へ。仲間たちの想いを胸に、エリアナたちは運命の扉を開く。


第130話「運命の扉」をお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ