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異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第IV部: 暗転と再起

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128/160

第128話: ルシア様の願い

朝の書斎は、窓から差し込む柔らかな光に満ちていた。私はアレキサンダー様の隣でことりを掌に乗せ、静かに息を整える。ことりが淡く明滅すると、空気に薄い膜が張られたみたいに、部屋の音が遠のいた。


*************

【ことり】

記憶再生を開始します

ルシア様の断片記録を投影します

[魔力: 70/150]

*************


光の中に、白衣のルシア様が浮かび上がる。震える指で術式板に触れながら、まっすぐ前を見ていた。


「エリアナと力を合わせて、アレキサンダー様を救って。二人なら、きっとできる」


声が途切れたあともしばらく、私は動けなかった。隣でアレキサンダー様が目を伏せ、ゆっくりと息を吐く。その静かな呼吸だけが、今ここにいる私たちを現実へ引き戻してくれた。


---


投影が薄れていく中、ことりはもう一度だけ光を強めた。私は胸の奥のざわめきを押さえながら、机の端に置かれた記録紙へ目を落とす。魔法陣の層構造、前世技術の論理回路、そして保護術式の注記。全部が一つの線で結び直されていく。


*************

【ことり】

補足解析を実行します

ルシア様が託した守護対象は

「命」「記憶」「未来の選択」です

[魔力: 60/150]

*************


その文字を見た瞬間、背筋が熱くなった。私は偶然ここに来たわけじゃない。ルシア様が遺した研究と、ことりの導きと、私自身の選択が重なって、ようやくこの場所に立っている。


アレキサンダー様は窓辺へ視線を向けたまま、小さく囁いた。


「ありがとう、ルシア。君の願いは、もう独りで背負わせない」


別れの言葉なのに、どこか温かかった。私はその横顔を見つめながら、そっと頷いた。


---


昼の中庭は、木漏れ日が石畳に細かな影を落としていた。私はことりを両手で包み、アレキサンダー様と向き合う。朝に受け取った言葉を、今度は私たちの言葉として言い直すために。


「守るべきものは、命と記憶と、未来を選ぶ力。これで、はっきりしました」


アレキサンダー様がまっすぐ頷く。


「私たちの使命は同じだ。呪いを解き、受け継ぐべきものを守る」


ことりが穏やかに瞬き、短い表示を重ねる。


*************

【ことり】

これがルシア様の本当の願いです

三人で進むことを推奨します

*************


私は右手を差し出し、アレキサンダー様の手に重ねた。さらにその上へ、ことりの箱をそっと乗せる。指先から伝わる温度が、ばらばらだった決意を一つに束ねていく。風が頬を撫で、張りつめていた胸の奥に、やっと静かな安心が戻ってきた。


---


夕方、テラスは茜色に染まっていた。遠くの森の輪郭を見つめながら、私たちは並んで立つ。


「必ず、呪いを解きましょう」


私が言うと、アレキサンダー様の声が重なった。


「必ず、未来へ辿り着く」


ことりが明るく光り、最後の通知を表示する。


*************

【ことり】

準備は整いました

最終工程へ移行可能です

*************


茜の中で、三人の影が同じ方向へ伸びる。運命の扉は、もう目の前だ。私は胸元の鼓動を確かめながら、次の一歩を強く踏み出す。

**次回予告**

ルシアの願いを胸に、三人は最終決戦への準備を整える。運命の時が迫る。


第129話「運命の扉」をお楽しみに!


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