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【第III部 開始】異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第I部: 到着と発見

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第12話: 夜中の足音と魔力感知

深夜、午前二時


眠れなくて、枕元の灯りだけを頼りに魔法理論の本を開いていた。


——その時。


遠くで、規則的な機械音がした。


「……何?」


耳を澄ますと、音は西棟の方角から。さらに胸の奥が微かに熱を持つ。魔力そのものではなく、魔力が動く気配を初めて掴んだ。

その瞬間、無意識に『魔力感知Lv.1』が発動した気がした。


西棟は侯爵様が立ち入りを制限している場所。それでも、この音の正体が気になった。


私は上着を掴み、そっと部屋を出た。


---


廊下は冷え、月明かりが床に細い影を引いている。音は近づくほどはっきりし、同時に“流れ”も濃くなる。


西棟へ続く角に差し掛かった瞬間。


「エリアナさん、こんな時間にどうしましたか?」


驚きで息が止まり、思わず声が漏れた。「ひっ……!」


振り返ると、侯爵様が立っていた。


「申し訳ありません。驚かせてしまいましたね」


「いえ……私こそ。音が、聞こえて……」


私が視線を西棟へ向けると、侯爵様の表情が一瞬だけ硬くなる。


「あの音は研究装置の稼働音です。危険な場所もあります。夜は一人で出歩かないでください」


穏やかなのに、有無を言わせない声だった。


「……はい」


頷いたのに、胸の奥の火種は消えない。


---


「部屋までお送りします」


私は素直に従った。


「眠れなかったのですか?」


「少し……考え事をしていて」


「温かいミルクを。眠りの助けになります」


「何か心配があれば、いつでも相談してください。あなたの安全は、私にとって最優先です」


胸が熱くなる。その言葉だけで、私は守られている気がした。


「……ありがとうございます」


部屋に戻って扉を閉めても、耳の奥には規則的な音が、心には“最優先”が残っていた。


---


翌朝。


ダイニングルームには焼きたてのパンの匂いが満ち、紅茶の湯気が朝日にほどけている。甘いジャムで、少しだけ心がほどけた。


「エリアナさん」


侯爵様が口を開いた。「はい」


「来週、近隣の貴族を招いて小さな夜会を開きます」


夜会。


その言葉だけで、心臓が早鐘を打つ。


「私も...出席するのですか?」


「もちろん。あなたは私の大切な客人ですから」


大切な客人。


昨夜の言葉が蘇って、胸の奥が熱くなる。


メイド長が穏やかに微笑んだ。「ドレスの準備をいたしましょう」


社交の場。


人が集まる場は、前世からずっと苦手だ。不安がじわりと滲む。


「心配いりません。私がそばにいます」


その一言で、肩の力が少し抜けた。こういう平和な朝が、私は好きだ。


---


午後。夜会のことが頭から離れず、私はことりを呼び出した。失礼で侯爵様の顔に泥を塗るのだけは、絶対に嫌だ。


【ことり】

*************

何かお悩みですか?

*************

[魔力: 30/70]


> 夜会に出席することになりました。社交の場で気をつけることを教えてください。


【ことり】

*************

確率: 70%


社交の場では笑顔と礼儀が重要です。


話題の提案:

1. 天気や季節について

2. 芸術や文化について

3. 魔法理論(知的な話題)


避けるべき話題:

- 政治的に敏感な内容

- 個人的すぎる質問

- 否定的な意見


相手の話をよく聞き、適度に相槌を打つことも大切です。

*************

[魔力: 20/70] (-10)


なるほど。


確率70%。ことりの助言をメモに書き留める。


外れもある。だから最後に決めるのは私だ。


夜会で侯爵様が隣にいてくれる——そう思うと、不安の底に小さな期待が灯った。


---


夜。


ベッドに入る前、私は日記帳を開いた。


『今日は奇妙な音を聞いた。西棟の研究装置らしい。

深夜に侯爵様と会って、部屋まで送ってもらった。「あなたの安全は最優先」と言われて嬉しかった。

来週、夜会がある。緊張するけれど、侯爵様がそばにいてくださるなら大丈夫だと思う。

ことりにマナーを教えてもらった。準備をして、侯爵様に恥をかかせたくない。』


日記を閉じ、ベッドに横になる。窓の外の月は静かだ。


明日も、侯爵様に会える。それだけで心が少し軽くなる。


明日はドレスの準備が始まる。新しい挑戦だ。

**次回予告**

初めての社交の場となる夜会。ドレスに身を包んだエリアナは、貴族たちとの交流を経験する。そして侯爵とのダンス...至近距離で見つめ合う二人。「大切な人」という囁きに、心が高鳴る!


第13話「夜会とダンス」をお楽しみに!

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