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【第III部 開始】異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第I部: 到着と発見

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第11話: 初めての魔法成功と成長の実感

朝日がまだ昇りきらない早朝、私は訓練場に立っていた。


今日は特別な日だ。これまで練習してきた高度な魔法に、初めて挑戦する。


「緊張していますか?」


侯爵様の穏やかな声が、背中から聞こえる。


「少しだけ」


正直に答える。胸が高鳴っている。失敗したらどうしよう。


「焦らなくていい。君ならできる」


その言葉に、勇気をもらう。


侯爵様は、いつも私を信じてくれる。


深呼吸をして、心を整える。


---


前世の記憶が蘇る。


システムエンジニアとして働いていた頃、複雑なプログラムをデバッグしていた時のこと。


何度も失敗したバグを、ログを分析して原因を特定した。


論理的に、段階的に、一つずつ確認していく。


魔法も、きっと同じだ。


これまでの失敗を思い返す。魔力の流れが途中で途切れてしまう。それは、プログラムで言えばデータフローの問題だ。


ボトルネックがある。そこを特定して、修正すれば...


昨夜、ことりに相談して理論を確認した。確率80%の回答。信頼できる。


魔力の流れを制御し、魔法陣を構築する。


前世のシステム構造の理解が、ここでも役立つはずだ。


「始めます」


私は手を前に伸ばし、詠唱を開始した。


---


魔力が体の中を流れる感覚。


それを手のひらに集中させる。


空中に、光の線が描かれていく。


魔法陣が、少しずつ形を成していく。


集中、集中。


呼吸を整える。


魔力のコントロールに全神経を集める。


そして——来た。いつも失敗する箇所だ。


魔力の流れが弱くなる。


前世の知識が教えてくれる。ここがボトルネックだ。


意識的に、魔力を強化する。


バグを修正するように、丁寧に。


流れが、安定した!


光が強くなる。


魔法陣が完成に近づいている。


最後の一線を引く。


その瞬間——


光が輝き、風が渦を巻いた。


成功だ!


「やった...」


思わず声が出る。


周囲にいた使用人たちが、拍手をしてくれた。


「よくやった、エリアナ」


侯爵様の満足そうな声。


振り返ると、侯爵様が微笑んでいた。


その笑顔が、いつもより温かい気がする。


---


「本当に素晴らしい。君の成長は私の期待を超えている」


侯爵様が近づいてくる。


そして——


大きな手が、優しく私の頭に触れた。


「え...」


心臓が、激しく跳ねる。


頭を撫でられている。


侯爵様の手は温かく、優しい力加減。


顔が、一気に熱くなる。


言葉が出ない。


「君は特別だ」


侯爵様の声が、いつもより優しい。


見上げると、侯爵様が微笑んでいる。


普段の冷静な表情とは違う、温かい笑顔。


胸が、さらにドキドキする。


特別...?


その言葉の意味を考えようとするけれど、頭が上手く働かない。


「少し休憩しよう」


侯爵様が手を離す。


その温かさが消えて、少し寂しい。


---


訓練の後、侯爵様が庭園散歩を提案してくれた。


「気分転換にいいでしょう」


二人で、春の庭園を歩く。


花々が咲き乱れ、鳥がさえずっている。


柔らかい日差しが心地よい。


並んで歩く侯爵様との距離が、近い。


「この庭園は、ルシアが設計したんです」


侯爵様が、植物を見ながら話す。


「そうなんですか」


意外な博識さに驚く。


「彼女は植物が好きでした。特に春の花を」


侯爵様の表情が、一瞬曇る。


「侯爵様は...ルシア様のことを」


聞きかけて、躊躇する。


侯爵様は少し考えてから、答えた。


「大切な人だった。でも、それは過去のことだ」


そして、私を見る。


「今、私が大切にしたいのは...」


言葉が途切れる。


私の心臓が、高鳴る。


もしかして...私のこと?


でも、侯爵様は続きを言わなかった。


「さあ、あそこのベンチに座りましょう」


---


ベンチに座ると、使用人が温かいお茶とクッキーを運んできた。


静かで、平和な時間。


お茶の香りが心地よい。


クッキーは甘くて、美味しい。


「ここにいると落ち着きます」


思わず口に出る。


「私もだ」


侯爵様の優しい返事。


二人で、しばらく黙って庭園を眺める。


風が優しく吹いて、花びらが舞う。


心が、満たされていく。


侯爵様の隣にいる。


それだけで、幸せな気持ちになる。


これは...何だろう。


尊敬?感謝?


いや、それだけじゃない気がする。


もっと、特別な感情。


---


夕方、部屋に戻って一人になった。


鏡を見ると、顔がまだ少し赤い。


頭を撫でられた時の感覚が、まだ残っている。


侯爵様の手の温かさ。


あの優しい笑顔。


「大切にしたいのは...」という未完の言葉。


全てが、頭から離れない。


ことりに相談してみようかと思い、語り箱を取り出した。


【ことり】

*************

こんにちは。何かお悩みですか?

*************

[魔力: 70/70]


その表示を見て、ふと気になった。


> 私の現在の魔力を測定してください


少し待つと、返答が表示される。


【ことり】

*************

確率: 95%


測定結果:

魔力上限: 70

現在値: 70


前回測定(3週間前): 上限50

成長率: +40%


順調に成長しています。

*************

[魔力: 60/70] (-10)


「え...こんなに成長してたんだ!」


思わず声が出る。


3週間で、魔力の上限が50から80に。


前世のデバッグ思考が、魔法に活きたんだ。


システマティックに問題を解決するアプローチ。


それが、この世界でも役に立つ。


「やっぱり、私の前世の知識は意味があるんだ」


胸が熱くなる。


そして、もう一つ質問してみる。


> 侯爵様が頭を撫でてくれたけど、これは...どういう意味ですか?


少し待つと、返答が表示される。


【ことり】

*************

確率: 35%


申し訳ありません。人の感情に関する質問は私の苦手分野です。


ただ、その行為は通常、信頼と好意を示すものと考えられます。

*************

[魔力: 50/80] (-10)


やっぱり、恋愛は難しいのね。


確率35%では、あまり参考にならない。


でも「好意」という言葉が、心に残る。


好意...


侯爵様の、私への好意。


私の、侯爵様への気持ち。


「私、もしかして...」


自問するけれど、まだ答えが出ない。


認めるのが、怖い気がする。


ベッドに横になり、天井を見つめる。


リリアに相談したい。


彼女なら、何かアドバイスをくれるかもしれない。


窓の外を見ると、夕焼けが美しい。


心が温かく、少し甘い気持ちになる。


今日は、良い日だった。


魔法も成功した。


侯爵様に褒められた。


頭を撫でられた。


庭園で、二人きりの時間を過ごした。


全てが、特別な思い出。


そして、何かが変わり始めている気がする。


私の心の中で。

**次回予告**

夜中、奇妙な足音を聞くエリアナ。西棟から聞こえる機械のような音に好奇心を抱く。そして侯爵との深夜の出会いが...。夜会の告知もあり、新たな展開へ!


第12話「夜中の足音」をお楽しみに!

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