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異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第IV部: 暗転と再起

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105/160

第105話: 調査開始

朝の書斎に、古い紙とインクの匂いが満ちていた。


昨夜、侯爵様と交わした「信じる」という言葉を胸に、私は資料の束へ手を伸ばす。守られるだけではなく、共に戦う。今日はその第一歩だった。


机には、セレスティアさんの古文書と地図、フィリップさんの現地報告。


「北東山間部で魔力痕跡が集中しています」


フィリップさんが示した地点を、セレスティアさんが古文書でなぞる。


「この記号、王立記録にない形式よ。研究施設、もしくは封印区画の可能性が高い」


断片だった地名が、私の中でひとつに結ばれていく。侯爵様が静かに問いかけた。


「エリアナ、君はどう見る?」


私は地図の余白に残る薄い印を指さした。


「ここです。魔法痕跡と記号が重なる地点。遺跡はこの一帯にあります」


侯爵様は短く頷く。


「分かった。君の判断を軸に進めよう」


その一言で、肩の力が抜けた。私はもう後ろで守られるだけではない。隣で判断し、隣で進む。


---


午後、会議室でことりを起動した。


私は端末に問いを打ち込む。


> 北東山間部の地域データを照合して。古代遺跡候補を抽出して。


【ことり】

*************

確率: 72%

地域データ照合を開始します。候補地を3件抽出しました。


・遺跡A(峡谷跡): 信頼度72%

・遺跡B(旧祭祀区画): 信頼度61%

・遺跡C(地下水路接続域): 信頼度48%


推定: 遺跡Aは古代研究施設関連構造を含む可能性があります。

*************

[魔力: 140/150 (-10)]


「遺跡Aの層位、私の資料と一致する。古代研究施設の可能性が高いわ。余白に『封印炉』の語がある」


侯爵様が私を見る。


「追加解析を頼めるか」


「はい」


> 遺跡Aを中心に追加解析。侵入経路と危険度を再計算して。


【ことり】

*************

確率: 79%

追加解析を実行しました。最有力候補は遺跡Aです。


・総合信頼度: 79%

・外縁部の魔力反応: 中

・内部封鎖リスク: 高


注記: 一部データ欠損。推定に誤差あり。

*************

[魔力: 130/150 (-10)]


完璧ではない。だから、判断は私たちが下す。


「遺跡Aで。今夜準備、明朝出発で」


言い切ると、全員が黙って頷いた。


---


夕方、作戦室で最終確認を行った。


出発は私、侯爵様、フィリップさん、セレスティアさん。結界石、通信札、地図、予備灯、魔力回復薬を順に点検する。


リリーは一歩前に出て言った。


「今回は屋敷を守る。皆が帰る場所を、私が守るよ」


悔しさを抱えたまま、それでも役目を選ぶ目だった。


「リリー、お願い」


マーガレットさんが静かに頭を下げる。


「皆様、どうかご無事で。お帰りをお待ちしております」


侯爵様が短く答えた。


「必ず戻る」


私も頷く。


「全員で帰ってきます」


送り出す者と向かう者。離れても、同じ場所を守る仲間だと実感した。


その確かさが、私の緊張をほどいてくれた。強く。必ず。


---


夜更け、私は廊下の窓辺で立ち止まった。


中庭には明日の荷が整然と並べられ、見張りのランタンが揺れている。ガラス越しに見えるその光景は、戦いの前触れでありながら、どこか不思議に温かかった。


後ろからリリーの小さな足音が近づく。


「眠れないの?」


「少しだけ」


リリーは私の隣に立ち、同じ景色を見つめた。


「エリーが前に進むって決めたなら、私は止めない。でも、帰ってきたら……また一緒に朝ごはん食べようね」


私は笑って頷く。


「約束」


その一言で、胸の奥のこわばりがほどけた。守るべき日常は、遠い理想じゃない。こうして触れられる距離にある。


自室へ戻る途中、侯爵様とすれ違った。


「準備は整ったか」


「はい。あとは明朝の合図を待つだけです」


侯爵様は短く頷き、目元だけで穏やかに笑った。


「君なら大丈夫だ」


私は胸の前で手を重ねる。


「ありがとうございます。……必ず、皆で戻ります」


ランプの明かりが石壁に伸びる。明日はきっと厳しい一日になる。それでも、今日受け取った信頼が、私の足を前へ運んでくれる。

**次回予告**

少数精鋭で遺跡に潜入する計画。エリアナ、侯爵、フィリップ、セレスティアの4人。出発前にリリアが「無事に帰ってきて」と言ってくれる。


第106話「潜入計画」をお楽しみに!

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