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異世界の侯爵家に招かれた元SEの私、手のひらサイズの語り箱と秘密だらけの屋敷で溺愛されています  作者: プロンプト時雨
第IV部: 暗転と再起

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第102話: 休息

朝の光が、庭園の草花をやさしく照らしていた。


私は侯爵様に誘われ、屋敷の庭園をゆっくりと歩いていた。昨夜の緊張と安堵の余韻が、まだ胸の奥に残っている。けれど、今はただ、朝の空気の清々しさと、花の香り、鳥のさえずりに心が癒されていく。


「歩くの、辛くないか?」


侯爵様が私の歩調に合わせて、静かに尋ねてくれる。その声は、どこまでも穏やかだった。


「大丈夫です。……ありがとうございます」


私は小さく礼を言う。侯爵様は、私の顔を見て、ふっと微笑んだ。


「君が無事で何よりだ」


その一言が、胸に深く染み渡る。


言葉は少なくても、侯爵様の視線や仕草が、私を包み込んでくれる。私は、この平穏がずっと続けばいいのに、と心から願った。


---


庭園散歩の後、食堂で朝食をとる。



テーブルには、焼きたてのパンと温かいスープ、季節の果物が並んでいる。リリーも少し元気を取り戻し、私たちと一緒に席についた。


「エリー、パンおいしいよ!」


リリーが笑顔でパンを頬張る。その姿に、私は思わず微笑んだ。


「本当に、久しぶりに普通の朝って感じがします」


侯爵様も、メイド長も、穏やかな表情で食卓を囲んでいる。


「皆が揃っていることが、何より幸せです」


私がそう言うと、メイド長が優しく頷いた。


「リリア様も、もう大丈夫そうですね」


「はい!もう心配いらないよ」


リリーの明るい声に、安心ビートが広がる。


侯爵様は、私の食事の進み具合をさりげなく見守ってくれている。その優しさに、私はまた心が温かくなった。


この時間が、ずっと続けばいいのに——そう思わずにはいられなかった。


---



朝食の後、私はリリーの部屋を訪れた。メイド長と一緒に、リリーの容体を再確認する。


「エリー、もう大丈夫だから、そんなに心配しないで」


リリーは少し顔色が戻り、私に微笑みかける。


「でも、無理はしないでね。……本当に、守ってくれてありがとう」


私はリリーの手をそっと握った。リリーの手は温かく、私の不安をやさしく溶かしてくれる。


「ありがとう、エリー。私も、エリーがいてくれて嬉しい」


メイド長が静かに見守る中、私は安堵と感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。



そのとき、扉の外から侯爵様が静かに顔を覗かせた。


「リリアさん、無理はしていませんか?」


「はい、もう大丈夫です。ご心配ありがとうございます」


侯爵様は微笑みながらも、ふと手を握りしめる。その指先が、ほんの少し震えているのを私は見逃さなかった。


(……やっぱり、侯爵様の呪いはまだ続いているんだ)


侯爵様はすぐに手を隠すようにして、私たちに優しい視線を向けた。


私は、皆のためにもっと強くなりたい、と心の中で静かに誓った。


---


夕方、屋敷のバルコニーに出ると、空が茜色に染まっていた。


私は侯爵様と並んで、しばらく無言で夕焼けを眺めていた。


「明日から、また忙しくなる」


侯爵様がぽつりと呟く。


「私も、力になりたいです」


私が静かに返すと、侯爵様は優しく微笑んだ。


「無理はしないで」


その言葉に、私は心の中で「あなたがいるから大丈夫」とそっと呟いた。


この屋敷が、皆の居場所であり続けますように——私は、そう祈るように目を閉じた。


---


夜、自室に戻った私は、窓辺で湯気の立つカップを両手で包んだ。


ハーブのやさしい香りが、昼間まで胸に残っていた緊張をほどいていく。廊下の向こうでは、メイドたちの足音が小さく行き交い、屋敷がちゃんと息をしていることを教えてくれた。


私は日記を開き、短い言葉を綴る。


「今日は、休めた。皆の笑顔を見られた」


それだけの一文なのに、なぜだか涙がにじんだ。戦いの最中には、こんな当たり前の夜が、どれほど尊いものか分からなくなる。


ノックの音がして、侯爵様が扉越しに低く言った。


「もう休んでくれ。明日も君が笑っていてくれると助かる」


「はい。侯爵様も、どうかお休みください」


短いやり取りの後、私は毛布にくるまり、胸の中でそっと誓う。


——平穏を守るために、私はまた立ち上がる。


静かな夜気に耳を澄ませながら、私はゆっくりと目を閉じた。

**次回予告**

全員で今後の戦略を協議。防御を固めるか、攻勢に出るか。エリアナが積極策を提案。「結社の本拠地を突き止め、先制攻撃」。


第103話「戦略会議」をお楽しみに!

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