明日やろう、今度やろう、いつかやろう、処刑の流れ
ふと処刑のシーンを思い出す。腹黒でわがまま。浪費をして領地の財政を傾け、お金がないならと、領民に重い税を課し、贅沢をやめなかった。そして、領民が遠縁のオースティに泣きついて、処刑につながった。
「あばばばば、どうしよう、このままいくと、また処刑されるのでは?!」
死にたくない。死にたくない。でもこの贅沢をやめるなんて、それも絶対ありえない。
「そ、そうだ! このままでいながら、革命が起きないように立ち回れば!」
これはチャンスだ。処刑されることもなく、贅沢もやめなくていい生活。それを送る事ができるチャンスを得た。処刑に怯えず、贅沢できる天国の様な日々を手に入れるチャンスだ。
「幸い、私はスペックが高い、この能力を最大限活かせば、なんだってできるはずだ!」
両手を握りしめ、天に向かって思いっきり突き上げる。
「やってやるわ!」
という事でまずは、状況の整理をしよう。と思ったけど。
「……明日でいいか」
今日は決意したし、上出来上出来。明日からまた頑張ればいいわ。処刑が明日に突然早まる事はない。何年も先延ばしにするわけにいかないが、一日ぐらいなら問題ない。
「それに」
ベッドの方に顔を向ける。今日は職人に新調させた、ふかふかベッドを楽しみたい。
「ひゃっ、ほーい」
思いっきりベッドへダイブする。新調してから何度かやっているが、全然飽きない。これはいい。これからは毎日ベッドを変えようかしら。ふふふ。
「ハッ」
正気に戻ると、いつの間にか一週間が経っていた。状況を整理しようと思ってから、贅沢に勤しんでいたら、つい先延ばしにしてしまっていた。
「まずいわ、このままでは明日やろう、今度やろう、いつかやろう、処刑の流れだわ!」
私はこんなに、ぐうたらな性格だったかしら。牢獄生活の反動で、こんな事になってしまっているのか。とりあえず、ベッドから起き上がり姿勢を正す。気持ちを入れ替えて、状況の整理をしよう。
まずは私の事だ。私はヴィオラ・グリム。それとなく周りに確認したら、今は十三歳だった。グリム家の一人娘。確か処刑されたのが、二十六歳の時だった。つまり十三年前に戻ってきたという事だ。これだけ時間があれば、状況は変えられるはずだ。
「そのために、まず最初の関門」
三年後の魔法学園入学。そこでオースティと顔を合わせる。その時からすでに、私の悪評は流れていて、オースティは窘めてくる。もちろん聞く耳は持たないが、それが原因で対立した。
「あれが、処刑の未来への第一歩だったと言える」
学園を卒業するころには、オースティは私を憎んでいると言ってもいいくらいの感情を垣間見せていた。