表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/55

自業自得の結果

 空が曇っている。どんよりと。こういう時にすっきり晴れ渡らないのは、神がいてこの瞬間を見ているからなのか。そのシチュエーションに最適な景色ではある。


 歩くたびに拘束の為につけられている手錠が、ガチャリと音を立てる。周りにいる複数人の兵士がそのたびに、警戒のために微かに体を強張らせた。怯えている。もう抵抗する力は残っていないのに。そんなに私が怖いのか。


「は、早く歩け」


 必死で虚勢を張ったのであろう兵士の声が、間抜けだった。笑ってしまいそうになるのを、なんとか堪える。


 処刑台が見えてきた。そしてその先に、集まっている民衆の冷たい視線が並んでいるのが見える。私が見えたであろう瞬間に、上手く聞き取れないくらいの怒りに満ちた声がぶつけられる。声によって圧を感じるのは初めてだった。周りにいる兵士が、自分に向けられた怒りでもないのに、一瞬慄いてしまう。


「早く処刑台へ」


 処刑台の傍らの男、革命軍のリーダー・オースティが急かす様に声を上げる。罵声怒声にあてられてしまった兵士たちが、追いやる様に私を処刑台に上げて、そそくさとこの場から退散していった。


「ヴィオラ・グリム」


 声を拡大する魔法で、オースティの清らかな声が響いた。罵声怒声が潮を引くように止まる。


「罪状を読み上げる」


 覚えのある私の悪行が、読み上げられそれに対する罪状。これだけ並ぶと処刑は避けられない。改めてそんな事を感じて少し笑ってしまう。


「何がおかしい」


 オースティが声を拡大する魔法を止めて、問いかけてきた。


「いや……これから君がこの領地の領主になるのかな?」


 オースティは答えなかった。


 オースティは私の遠縁にあたる人物だ。この領地を継げるとしたらオースティだけだろう。それがわかっていても、恐れて答えられなかったのか。


「これから領主になる人間は、欲望を抑えられるのかな? これだけの権力を、これだけの富を、誰なら正しく持ち続けられるだろう? 君ならどうだね? 高潔なるオースティ君」


 オースティは顔を少しゆがめた。オースティの家は決して裕福ではなかった。だから革命がなった後、革命軍のリーダーとして、臨時で領地を動かしたであろう。そして実感したはずだ。権力という力を。富という誘惑を。初めての感覚だっただろう。それで顔をゆがめたのだ。


「魔法を再開させたまえよ、民衆にこの問いの答えを聞かせてやると良い」


「もういい……処刑を執行するんだ」


 オースティが焦る様に周りに指示する。私の体に魔法の拘束が現れて、強制的に膝をつかされ、前傾姿勢にさせられた。


「次にここで処刑されるのが……オースティ君、君じゃないと良いね! はははははっ!」


 足音がした。処刑人が位置についたようだ。


「ヴィオラ・グリムの処刑を執行する」


 民衆にそんな声が響き渡る。それに呼応して歓声が上がった。そして、その歓声がブツリと途切れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ