第38話 7位チェッカー
小岩剣のS660が仮設パドックに戻って来た。
だが、小岩剣はしばらく、車内から出られなかった。
三条神流と松田彩香側に居た霧降達も駆け寄る。
「大丈夫か」「惜しかったな」「仕方ない」「次だ次!」等と声をかけられる。
三条神流と松田彩香も歩み寄る。
「15位まで落ちると思った。このエスロクでは。でも、予想を覆して7位。確かに5位入賞圏内から最後の最後で脱落は悔しいな。だが、チェッカーを受けることが出来た。まずはそれを喜べ。」
と、三条神流。
松田彩香がリアタイヤを見る。
「あーっこれ。」
松田彩香が左リアタイヤを指差す。
「サイドウォールまで溶かしてる。」
「無茶苦茶しやがって。」
三条神流と松田彩香が言うのを聞きながら、ようやく、車外に出る。
霧降要がウィダーインゼリーを渡す。
横目で表彰式の様子を見る小岩剣に、
「次戦はアンナと一緒に組むんだな。その方が良さそうだ。」
と、霧降要が言う。
「嫌です。」
ようやく小岩剣が口を開いた。
表彰式を終えたアンナが、玲愛を伴って小岩剣の元に歩み寄る。
「まずは、よく無事にゴール出来たね。7位チェッカーおめでとう。」
と、アンナ。
「でもね、私と玲愛の言う事を聞いていれば、もっとラクに走れたし、もっと高い位置でチェッカーを受けられた。最後の最後、あれは明らかなタイヤのグリップ不足よ。」
アンナは冷たい目で言う。
「まだ、私の言う事が聞けない?」
アンナは小岩剣が乗って来ると思った。
(もし乗って来なければ、玲愛とエッチして無理矢理にでも従わせる。)
と、アンナは思う。
「逆に、聞きたくありません。そちらは何を考えているのか知りませんが、自分は貴女の道具ではありません。」
小岩剣は言い放つ。
「いや、アンナさんと玲愛の言う事聞いてみたらどうだ一度?」
霧降要が言う。
「私は、貴方とラリーに出たい。貴方とコンビネーションを組んで、レースに出たい。」
アンナが続く。
「自分本位ですね。」
小岩剣は言うと坂口拓洋の姿を探した。
坂口拓洋は坂口愛衣と合流していた。
「お疲れさまでした。」
と、坂口拓洋に声をかける。
「7位か。20位まで落ちると思ったが、FSWの経験が効いたか。」
「そう、思います。しかし、戦闘力が―。特に、タイヤのグリップ力。最後の最後は、あんな結果に―。」
「だが、すげぇ順位だと思うぞ。」
そう言うと、坂口拓洋はどこかへ向かう。
「愛衣さんですか?」
「いや。」
と、坂口拓洋は首を横に振った。
小岩剣は明日の午後から仕事なので、今夜は一旦、草津温泉に泊まることにしている。
ADMのメンバーも大半がそうすることになっていて、今夜は飲めや歌えの大騒ぎだろう。
小岩剣も久しぶりに、そうした大騒ぎに加われるので楽しみだ。
以前の目標だった、N-ONEの奴と、HONDAディーラーや両毛連合が流した小岩剣を誹謗中傷する噂の兼ね合いから、このところ小岩剣はこうした大騒ぎに加われなかったのだ。
その代わり、別の所へ繰り出していたのだが。
夕方近く、小岩剣は大騒ぎの前に一風呂浴びに行こうと草津温泉に繰り出しながら、三条神流の姿を探した。




