48話 衝撃のバッドエンド!?
りえは、夜に弱い朝型の人間らしいですよ。(意味深)
――時刻は夜九時三十分。
三人でエマが作ってくれたおいしい夕飯を食べ、三人でビデオゲームをし、エマは疲れたのか、もう寝てしまった。
もう一日も終盤なのだが、僕とりえにはあと一つやりたいことがある。
それは、舞衣との通話だ。
この通話には、あるミッションがある。
それはりえと僕、ついでにエマが一緒に住んでいることをバレないようにすることだ。
時間も時間だ。この時間に一緒にいることがバレたら、勘違いされかねない。
舞衣は親友だが、実は僕とりえが付き合っているのではないかと疑っているときがある。
こんな夜に一緒にいる。つまりはそういうことをしようとしているのではないかと疑われかねないのだ。
ビデオ通話にしたときに姿が映ったり、背景が同じだったり、お互いの声がスマホに入って違和感を感じさせたりしたらアウトだ。
だったら通話をしなければ良いと思うかも知れないが、これは日課に近い。
一回だけ断るなら良いだろうが、りえと同居するのは今日だけではない。
ずっと断り続ければ、舞衣を傷つかせかねない。
とりあえず、僕とりえはそれぞれの部屋で、通話をすることにした。
別の部屋からすれば、バレる可能性など、ゼロに等しいだろう。
あれ? これってフラグかな?
「もしもっしぃ~。葵、りえ。おひさ~」
「おひさって、数時間前も話してたけどね」
「いっつも思ってたけどさ。舞衣っていつもからテンション高いけど、通話の時っていうか、この時間帯は特にテンション高いわよね」
「うんうん。よく観察してるねぇ! そうそう、これが、俗に言う深夜テンションってやつよ」
舞衣がまだ深夜とはいえない微妙な時間にも関わらず、とっておきの深夜テンションで話す。
舞衣はきっと通話しながらゲームをやっているのだろう。ゲームの音が聞こえる。まぁ、いつものことなので、大体予想はできていたが……。
ちなみに僕は勉強をしながらの通話中だ。
そして、りえはきっといつも通り、横になってぐだぐだしながら通話しているのだろう。今頃は、児部のベットに横になって睡魔と戦いながら、通話していることだろう。
「――って、やっば。気づいたら、もう二時間超してるじゃん! 」
舞衣の言葉にびっくりしながら、スマホの時刻を見ると、通話時間は二時間を超していた。
なので、もちろん時刻は通話開始の九時三十分から、十一時三十分になっていた。
そろそろ、時刻が変わってしまうし、通話もそろそろ終わりかな。
「ヤバいな。もう二時間って、時間たつの早すぎだろ。どうする? 通話、そろそろやめる? 明日も学校あるしさ」
「私は何時まででも大丈夫だけど、問題は二人だよね~。私は全然オールでも良いけど、二人はそうも行かないっしょ」
オールは流石に厳しい気がする。
まぁ、でもあと一時間とかなら、明日にも特に影響は出ないから、僕としても今すぐに通話を終わらせる必要もない。
となると、りえしだいか。
きっと、りえは、今も重いまぶたをなんとかして、眠い目をこすりながら、通話を押している頃だろう。
「確かに、オールは無理だけど、別に僕もはあと一時間くらいなら、全然大丈夫だよ」
「ってなると、あとはりえだね。りえはどう? まだいけそう? それとも、もうやめる? 」
「…………」
「ん? りえ? なんて言った? 」
「…………」
「ん? おーいりえ? どうした? 」
「…………」
「あ、これって……」
「…………すぅ……」
「確定だな」
どうやらりえは寝落ちしてしまったようだ。
前にも何度かこういうことはあったので、今さらびっくりはしない。
――りえは基本的に夜に弱い。
朝型の人間なので、寝落ちしてしまうのも無理はないだろう。
「あーあ。また、寝落ちしちゃったんだ~。まぁ、しょうがないけどねぇ。それじゃあ、通話切る? 」
「そうだな。今日は、通話終わりかな」
「うん。それじゃあ、また明日ね葵。ばいばい~」
「ばいばい~」
僕はそう言いながら、グループ通話を退室した。
りえは寝落ちしてしまったようだが、ちゃんと布団はかぶっているのだろうか。
それに寝落ちしたと言うことはどうせ、電気もつきっぱなしだろう。
風邪を引いたり、眠りが浅くなったりしても可愛いそうなので、ちょこっと行って、それだけはやってやるか。
決してこれは、無防備に眠っている同級生の部屋に不法侵入するわけではない。夜這いに行くわけでもない。ただただ、親切な心優しい行動だ。
「おーい。りえ~。電気つきっぱだけど起きてるか~」
僕はりえの部屋のも前に言ってそう聞いてみた。
もちろん返事はない。さっきまで、スマホから僕と舞衣の声が聞こえていたにもかかわらず、眠り続けるりえだ。いまさら、僕の声くらいで起きるとは思えない。
僕は、返事が返ってこないので、ドアを開けた。
電気はつきっぱなしだし、布団もかぶらずに寝ている。
「はぁ……。おーい、りえ。このままじゃ風邪引くぞ~」
僕はそうあきれたようにいいながら、りえに布団をかぶせる。
布団をかぶせたというのに、まったく起きる気配がない。
はぁ……まったく、ここまで爆睡するのも凄いと思う。
というか、すごいデジャブを感じる。
いや、これはデジャブではなく、実際にこんなことをつい数日前に、女神様の城でもやっていた。
本当に、りえらしいというか何というかだ
「お~い。りえさ~ん。そんな無防備に寝てると、またその寝顔で抜いちゃいますよ~。それどころか、今度こそ、冗談抜きで襲いかかっちゃいますよ~」
僕は深夜テンションになっていたのもあって、そう小声でりえにささやいた。
絶対に言う必要はないし、もし偶然の着てしまったらヤバいというのに、我ながら本当にバカだ。
まぁ、でもなんかすっきりした。
こんなことを言ってはみたもの、今日は正直そう言うことはする気分じゃない。
というか、今回はただの犯罪になりかねない。夜這いを書けているようなものになってしまう。いつもと違い、今日はわざわざ僕の方から勝手に部屋に入ってきたのだ。
それで、そういうことをするとか、最低すぎる。まぁ、今までもかなり最低だとは思うが、今回のは突飛している。さすがに今回はそんなことはしない。
もちろん、欲はある。だけど、今回は良心が勝った。そして、僕自身もこれでいいと思っている。
なので、電気だけ消して、もう自分の部屋に戻って寝ることにした。
「あ、葵!? 一体何言ってんの!? 絶対ダメだからね! いくらなんでも同意なしにそういう子とするのは! 寝込みを襲うとか絶対ダメだからね! それでも、葵は生徒会長でしょ! 」
「は!? なんで舞衣の!?」
どこからともなく、聞き慣れた声が部屋に響いた。
は? 意味が分からない。
なんで舞衣の声がするんだ!?
「――あっ! 」
僕は、気づいた。気づいてしまった。
これは、りえのスマホから聞こえてくる。
りえの横に落ちていたスマホが光っていた。
僕はスマホを持ち上げ、画面を見ると……。
「ねぇ、葵!? どういうことなのよ! 全部説明して!なんで、りえと葵が一緒にいるの!? 」
間違いない。
スマホは通話画面のままだった。
それに、舞衣の声がスマホから聞こえてくる。
――最悪だ。……おわった……。
完全に失念していた。
僕は自分が、通話から退室したことで、通話が終わっているような気がしていたのだ。
だが、寝落ちしたりえは、もちろんのことだがそのままグループ通話に入り続けていた。
それだけなら良いのだが……、なぜか舞衣もそのままグループ通話に入り続けていたのだ。
最悪だ。完全に終わった。マジで死にたい。
「あと、葵。さっきの言葉、録音してたから、言い訳はしないでよ。しっかり、りえに謝りなね。もし謝ってないようなら、遠慮なくりえに聞かせるから」
――ガチで死にたい。
なんで、録音までしてるんだよ。
いや、確かに急にいないはずの僕の声が聞こえてきて、りえに何かをしているようなら、録音するのもおかしいことだとは言い切れないのかも知れない。
あー! とにかく、最悪だ。
「ねぇ、あと早くなんで葵がりえと一緒にこんな時間にいるのかおしえてよ。何? やっぱ付き合ってるの? 」
この質問かぁ……。
僕はどうすればいいのだろうか。
答え次第では、さらに状況を悪化させかねない。
いや、今がもうすでにこれ以上は悪化しないかも知れにない。
だが、答えが重要なのは間違いもない事実だろう。
――なんと答えよう。
もう異世界転移した話を信じてもらえないかも知れないが言って、これまでの流れを一つ一つ説明していこうか。だが、どうせ信じてもらえないだろう。追い込まれた結果、変なことを口走り始めたと思われて終わりだ。
なら適当なこと言ってごまかそうか。いや、それは無理があるか。中学生の男女が深夜に同じ部屋にいる言い訳なんてそうそう思いつく物ではない。
いやいや、ここはあえて付き合っている、ラブラブなんだ、ということにしておいて、さっきのもラブラブの一環なのだとしようか。もしコレなら、舞衣がラブラブを邪魔したと言うことにして僕も加害者ではなくなり、舞衣もこれ以上攻めることもできなくなる。……が、これではりえに聞かれたらアウトだし、舞衣と修復不可能なほどの溝が生まれる危険性もある。
なら、あえて何も答えないというのも手ではないだろうか。もう、今日は自分の部屋に戻って寝る。そして、明日の僕が後は頑張るのだ。何の解決にもなってないが、決して悪い案ではない。
いや待てよ。言い作戦があるではないか。どうせ、この後、僕は地獄を見ることになるのだ。どうせ地獄に行くなら、最後くらい言い思いをしたい。これは言ってみれば冤罪、いや未遂事件のような物だ。未遂でも捕まるというのなら、僕にもとっておきの作戦がある。
それは、未遂ではなくしてしまうのだ。
よし決めた。これで行く。僕がいつまでもへたれだと思ったら、大間違いだぞ!
「――舞衣!聞いてくれ! 僕とりえは、”今”はただの仲の良い友達でしかない。恋人でもないし、今一緒にいるのだってちゃんとした意味があるんだ」
「それって、言い訳だよね。しかも付き合ってるなら、まだしも、友達って。葵って、友達にそういうことして本当に良いと思ってるの!? 犯罪だからね! 私も警察に突き出す必要はないと思うし、しっかり反省して、朝一番にりえに謝んなよ! 」
「――確かに、友達にそんなことをして良いわけはない。それは僕だって分かってる。だからこそ、僕は、今からりえと恋人になるわ。それがたとえ、体だけの関係であったとしても! 」
「は? 何言ってるの!? え? 今から、本気でやる気なの!? そっちがその気なら、本当に警察に突き出すよ! それでも良いの!? 」
「あぁ。覚悟を決めた男はな。絶対に何があってもやり遂げるもんなんだよ! 」]
何もかもがどうでも良くなった僕は、そう高々に宣言した。
ここまで来たら、もう後戻りはできない。
すぐそばに無防備で寝ているりえを襲う。
僕は自分にとって最後になるかも知れないミッションだ。
僕は無防備にねているりえを見る。
今から、僕に何をされるかも知らずに、本当に無防備に……無防備に……。
「――ん~。賑やかね~。……ふぁぁぁ。ねぇ、葵。私ってどのくらい寝てた? 」
「えぇっと……ほんの少し……だと……オモウよ」
「ふーん」
僕は思わず素で答えてしまった。
なんて、この最悪のタイミングでりえが起きてしまったのだ。
どうしよう。いや、もうここまで来てしまったのだ。もう押し倒して……。
「それで、葵。どうしてこの部屋にいるの? 」
「いや、それは……えぇと……」
「りえ! 葵はね! ……」
危ない。危ない。
舞衣がリエに説明しようとしたので、僕は通話を切る。
いやまぁ、このまま押し倒すのだから、別に関係ないのだろうけど。
「あと、それでさっきいってやり遂げるものって何? 」
どうやら、りえは本気で僕が何をしようとしているのか分からないらしい。
りえがかわいらしく、首をかしげながらそう僕に聞いてきた。
くぅ……。そんなかわいく聞かれると気が引けてくるじゃないか。
なんというか、メッチャ純粋無垢な顔をしている。
――ふぅ……。
いや、ここで諦めてどうする! 立花葵! 決意したのではなかったか!
そうだ! 僕は決意した! よし……。
――やめよう。
はぁ、我ながら、自分が凄く小心者な気がしてきた。
でも、こんな純粋無垢な顔で僕を疑ってすらいないりえの顔を見てしまったらそんなバカなことはできない。
小心者だろうが、なんだっていい。僕はそもそもりえを守りたいずっと思っているのに、自分がりえにそんなことをするとか矛盾も良いとこだ。
あぁ、未遂とはいえ、あんなことを考えてしまったし、今度さりげなくなんかおごるとするか……。
ん? ちょっと待て。舞衣はどうしよう。これってかなりまずいな。まぁ、それはまた明日の朝にでも考えるとして……。とりあえず、この部屋から出るか。
「いや、やっぱなんでもない。りえが寝落ちしたから、布団かぶせに来ただけだ。それじゃあ、僕はもう自分の部屋戻るね」
「やっぱ葵は優しいわね」
そんな純粋無垢な目で感謝されると心が痛むのだが……。
「――ねぇ……葵……。せっかくだし……私、葵と今から……」
ふぇ!?
りえは顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに両手の人差し指をくっつけたり離したりしながらそんなことを突如言い出した。声はどんどん小さくなり、もうなんと言ってるのか聞き取れない。
これって、もしかして、お誘いだろうか!?
いや、そうに違いない。
お誘いされたのなら、話は違う。男として、誘われたのなら、それに応えてあげねば。
「――もちろんだ。君をおいしく食べてあげるよ! 」
「そんなことだろうとは思ってたわよ! 変態! 見損なったわ! 刹那の帰還! 外で一日反省しなさい! 」
僕が、そういってりえにりえに飛びつこうとした瞬間、りえは魔法を発動させた。
カマをかけられたのだと理解したときには時すでに遅しだった。
「カマかけやがったなぁぁぁ! くっそぉぉぉ! そんな展開かよぉぉぉ!」
まさにバッドエンドですね。
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ざまあみろと思った人は……流石にいませんよね!?




