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39話 お風呂の企み


無秩序の世界(カオス・イフィリオス)! 」

「――葵も慣れたものね! 」

「えぇ。凄い成長速度ですね」

「えへへ……。なんか照れるな……」


 原宿にショッピングに行って思い出をたくさん作った後、我が家にいつもの魔法で帰ってきた。

 気づけば、日もかなり沈んでいる。

 スマホをポッケから取り出し時刻を見た。

 どうやら今は午後六時三十六分らしい。

 異世界では太陽の位置でだいたいの時間を把握していたので、やはり文明の力は凄いと言わざるを得ない。

 めちゃくちゃ便利だ。


「さっきクレープ食べたらあんまりお腹すいてないけど、そろそろ夕飯の時間だな……。ん? あ! ヤバッ」

「どうかしたの? 」

「普通に夕飯のこと何も考えてなくてさ、夕飯なににしよ」

「そんなこと? 別に私は居候の身だし、食べれたら何でも良よ。私とすれば今家にある物で良いけど」

「私も食べさせていただく立場ですので、どんなものでも大丈夫ですよ」

「そう言ってくれると助かるけど、マジで冷凍食品とかになっちゃうかもだけど大丈夫? 」

「全然大丈夫よ」

「れいとう食品ですか? どんなものかは分かりませんが、私もぜひいただきたいです」


 完全に夕飯のことを忘れていた。

 せっかくだし、原宿でなにか食べてくれば良かった気がする。

 まぁ、金がなかったからしょうがないんだけどさ。


「そう? それなら良いけど……。とりあえず家の中入るか」

「「そうね(ですね)」」

「――たっだいま~! 」

「「お邪魔します(いたします)~」」



 家の中に入ると、すぐに冷蔵庫の中を確認した。

 ほんとうにろくな物が入っていないい。

 今ある物でなにか料理を作るというのは難しそうである。 

 やはり冷凍食品に頼るしかないか……。


「ごめん。冷凍食品くらいしかないわ。この冷凍庫の中から好きな冷凍食品選んで」

「うーん。それじゃあ、私はこのペペロンチーノのパスタのやつにしよっかな」

「私は先ほどのクレープ同様にアオイ君の案を参考にさせていただこうと思うのですが……」

「そうだな……。このラーメンの冷凍食品とか良いんじゃないかな。結構おいしいし」

「そうなのですか? ではそれをいただいてもよろしいですか」

「もちろん。それじゃあ、僕はこのピザの冷凍食品にしよっかな。順番でその電子レンジで温めるか」

「そうね」



「らーめんというこの料理とってもおいしいですね」

「このペペロンチーノも冷凍食品とは思えないくらいのおいしさよ」

「僕のピザもなかなかだな」


 ――ウマい。

 今は、ダイニングで三人で夕飯を食べている。

 冷凍食品とはいえ、普通にウマい。

 

 ただ、悲しいことも一つ発覚した。

 当たり前ではあるが、これからは食費が三倍になるのだ。

 ただでさえ、ヤバいお金が、これ以上二なると思うとかなりヤバい状況名気がする。

 なんか打開策はないだろうか


「そういえば葵。一回異世界に戻らない? 」

「流石に早すぎない? もうホーム、いや王城シックになっちゃった感じ? 」

「いや、そういうわけじゃなくてさ。お洋服とか向こうから持って帰りたいしさ」

「そうですね。せっかくお二人用に用意したので、好きなだけ持ってきちゃいましょう」

「――それだ! 」


 今、凄い妙案を思いついた。

 僕は十発の魔法が打てる。

 ということは五回は往復できるのだ。

 それに回数が減れば、女神様のもとに行き、魔力を分け与えてもらうという必殺技もある。

 ならば、ご飯の時はむこうに行って、おいしいものを食べるというのはどうだろうか。

 

「いきなりどうしたのよ」

「なんか凄くうれしそうな顔をしていらっしゃいますね。どうしたのでしょうか」

「実は僕、妙案を思いついちゃった」

「何よ」

「ほら、このまま三人分の食事を用意するのって結構難しいじゃん。だから、ご飯の時はむこうの世界に行って、食べさせてもらうって言うのはどうかな」

「葵のことだし、どうせどうでも良いことを言ってくる物だと思っていたけど、確かに悪くない案だわね」

「私も悪くない案だと思いますよ」

「じゃあ、明日からはそうしよっかな」

 

 これで明日以降の夕飯は外食だ。

 まぁ、外食と行っても異世界にい異世界に行ってご飯を食べるだけなのだが……。


「ってかさ、二人とも部屋は決めたの? 」

「えぇ、もちろん決めたよ」

「もちろんです」

「で、どっちがどっちなの? 」

「私がテレビのついた部屋のほうで、エマがもう一つの部屋の方よ」


 なるほど。りえがテレビのある部屋にしたか。

 うちの家には二つテレビがある。

 リビングと数年前は父の部屋で、今はりえのものとなった部屋だ。

 ちなみに僕の部屋にはテレビはない。

 なぜ、いままで空部屋だったのにそっちを使わなかったのか疑問に思うかも知れないが、その部屋は欠点があるのだ。

 その部屋にはベランダがあって、そこで洗濯物を乾かしている。

 で、雨の日なんかは室内干しするので、その部屋に洗濯物をかけるのだが、生乾き臭で臭くなるのだ。

 まぁ、逆に言えばそれだけだし、普通に言い部屋だと思う。

 エマのものとなった母親の部屋はごくごく普通の部屋だ。


「ふーん。エマはそれでいいの? りえに脅されたりしてない? 」

「なによ、私がそんなことするわけないじゃない。そういうのをするのは葵の方でしょ」

「僕はそんなことしないし」

「私だってしないわよ」

「ふふっ。私はてれびというもの使い方が分からないので、りえにそっちの部屋を譲らせていただいたのですよ 」

「それじゃあ、これで寝る部屋も決定だな」


 寝る部屋も無事に決まった。

 あとはこれを食べて、もう寝るだけか……。

 ん? ちょっと待った。あともう一つある。

 お風呂だ。お風呂……。

 向こうの世界は風呂に入るという文化がないのか、シャワーしかなかった。

 確かにシャワーさえあれば何の問題もない。

 しかし、日本人という民族の多くはお風呂で体を休める時間を至福の時間と呼ぶ人が多い。

 そして、僕も例外ではない。

 お風呂はいい。一日の疲れが一気に吹っ飛ぶ。

 それに、お風呂はお湯をためてそこに生まれたままの姿でつかるのだ。

 そして、基本的にみんなが入るまでお湯は変えない。

 つまり美少女の残り湯に合法的に入れるのだ。

 ヤバい。わくわくしてきた。


「ごちそうさまっと。お、二人もちょうど食べ終わった感じ? 」

「ごちそうさまです。らーめん、とてもおいしかったです」

「ごちそうさま。私のパスタもおいしかったわよ。ありがとう、葵」

「いや、冷凍食品にお礼言われても、買ってきただけだし」

「食べさせてもらったんだから、お礼を言うのは当然でしょ。夕飯も食べたことだし、それじゃあ、私はシャワー浴びてこよっかな」

「あ、待って。せっかくだし、お風呂わかさない? 」

「いいじゃない、お風呂」

「おふろですか? それはどんなものなんですか」

「お風呂はシャワーを浴びるついでに大量にためたお湯につかって、体を休めるんだ」

「へぇ、そんなものがあるのですね。私もぜひ入ってみたいです」


 しめしめ。

 これで合法的に美少女の残り湯に入ることができる。

 我ながらかなりキモいことをしている気がしてきた。

 まぁとはいえ、これはしょうがないことなのだ。

 不可抗力的に起こってしまった出来事なのだ。


「それじゃあ、お風呂わかしてくるね」

「なんかにやにやしてない? まぁ、ともかくありがとう。それじゃあ、葵から入って良いわよ。一番風呂を譲ってあげるわ」


 まずい。

 このままでは、僕が一番風呂になってしまう。

 これでは残り湯につかれないではないか。


「え? あ、えーっと。それは大丈夫かな。二人から先入って良いよ。僕は一番最後で大丈夫だよ」

「どうしてよ? 」

「いや、一番最後に入りたい気分なんだよね……」

「何それ? 一体どんな気分よ」

「お風呂は最後に入るとなにか良いことでもあるのですか? 」


 ヤバい。

 だいぶヤバめな質問をしてきた。

 これがりえからだったら僕の目的が気づかれた上で反応を見て確認をしようという思慮が含まれているのだろうが、エマはただ純粋に気になって聞いてきたのだろう。


「いや特にないけど、今日はそういう気分なんだよね」

「なにか良いこと……。ねぇ、葵。私あんまり、考えちゃいないこと考えちゃったんだけど……。まさか葵はそんな人じゃないわよね」


 ヤバい!

 これはバレたっぽい。

 いや、まだ確定ではないのだが、これはかなり確信に近い気がする。

 どうしよう。

 ここは諦めるしかないかもしれない。

 もし、僕の作戦がばれてしまったらマジでヤバい。

 ガチでキモがられる。

 ヤバい! マジヤバい! どうしよう!


「――葵。目が泳いでるわよ。それに顔が真っ赤よ。はぁ……。そういう思惑があったのね。今謝るなら、エマには何をしようとしてたか言わないであげるけどどうする? 」


 っく!

 顔に出てしまっていたか……。

 これだから顔に出やすいのはいやなのだ。

 どうしよう……。究極の二択だ。

 ここは諦めて謝ってエマには秘密にしてもらうのが最善だろう。

 いや、りえは本当に僕が何をしようとしていたか知っているのだろうか。

 それに証拠もないし、とぼけてみるのもアリなのではないだろうか。


「いや、まったくなんのことかわからないなぁ」

「エマ。葵はね、私たちがお風呂につかった後の……」

「りえさん、エマさん。本当に申し訳ありませんでした。深く反省します! 」


 また、ジャンピング土下座をした。

 まさか、ここまで完璧に僕の計画を読み取ったとは……。

 やはり、りえは手強い。


「はぁ……。さっきのは冗談抜きで本当にキモいからね。しっかり反省しなさいよ」

「りえ、私たちがお風呂につかった後、アオイ君は何をしようとしていたのですか? おしえてください」

「反省しているので、できれば秘密にさせてください」

「だってさ、エマ。これ以上は想像にお任せするわ」

「想像ですか……」

「できれば、想像もあんまりしてほしくないけど……」

「それはわがままよ、葵。それじゃあ、お風呂わかしてきて」

「え? あ、分かりました」

「もちろん、葵はお風呂に入るのは禁止よ。私とエマが入ったらお湯は捨てるからね」


 ――くっそぉ……。

 なんで、自分の家なのに、こんなに行動を制限されなくちゃいけないんだ。

 まぁ、それ相応のことをしたんだけどさ……。


「ほら、早くわかしてきてよ」

「――お湯、つかる、その後、アオイ君……。はっ! まさか……。いや、でも……」


 僕はもう二度と変なことは企まないと誓った。

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