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辿り着いてもそこにいる

 ただ、このままではらちがあかない。

 警察にたどり着く事が出来ない。

「…………しょうがない」

 腹をくくって男は自転車をこいでいく。

 危険だと思うが、不審者を無視して進む。

 それしかない。

 でなければ、いつまでも行く手を塞がれたままだ。



 念のために携帯電話から通報もしてみる。

 だが、やはり不通音が返ってくる。

 どういうわけか、警察には連絡が出来ないようだった。



 腹をくくって交番に向かう。

 途中、不審者が出ても、無視して通り過ぎる。

 襲われるかもしれないが、その時はなんとかするしかない。

 ただ、出来るだけ明るい道を、そして幅の広い道を選んで進んでいく。

 多少なりとも余裕があれば対処もしやすいだろうと考えて。

 遠回りになるが、これも仕方ないと割り切る。



 そうして自転車を走らせてて気付く。

 人の気配がない事に。



 確かに夜だ。

 昼に比べれば人通りは少ない。

 だが、全くないという事は無い。

 車だってそれなりに走ってるものだ。

 だが、それがない。

 文字通り、人っ子一人いない。



 家やマンション、アパートの窓に明かりはともってる。

 誰かがいるだろうとは思う。

 しかし、道には誰もいない。

 いくら何でもおかしい。

(まあ、おかしい事はとっくに起こってるけど)

 わけのわからない不審者。

 それが最もおかしい出来事だ。



 その不審者がやはりあらわれた。

 男が進もうとする先に出現する。

 いったいどうやって移動してるのか分からない。

 だが、もう気にしてる場合じゃない。

 その横を大きく迂回していく。

 相手がどう動くか分からないが、その時はその時と考える。



 距離が縮まる。

 そして、すり抜ける。

 確認のために後ろを振り向く。

 相手は首を男に向けている。

 だが、追いかけてくる気配はない。

 不気味だが、とりあえずそこから動く気配がないのがありがたい。

 あとはこのまま交番に向かうだけだった。



 交番までに何度か不審者とすれ違った。

 幸い、襲われる事はなかった。

 何とか交番に辿りついたとき、安心感から力が一気に抜けた。

 包丁をいれた鞄を入り口の脇に置いておく。

 さすがに持って入るほどの度胸はない。



 そうして中に入ったのだが。

 誰もいなかった。

 巡回に出てる可能性もあるが、そういった看板も出てない。

 どうしたんだろうと思ったが、いないなら仕方がない。

 帰ってくるまで待とうと、その場に立つ。

 幸い、外に不審者の姿はない。

「早く帰ってきてくださいよ……」



 しかし、どれだけ待てど警察官は帰ってこない。

 時間だけが過ぎていく。

 不審者もあらわれないが、これはこれで切ないものがある。

 そうして一時間が経とうとした。

 その時、交番の奥の戸が開いた。

(え、いたの?)

 思わずそう思った。



 出て来たのは不審者だった。

 気付いた瞬間に外に飛び出す。

 包丁の入ったバックも手にとる。

 あわてて自転車に乗る。

 だが、こぎ出そうと思って気付く。

 チェーンが外れてる事に。

 なんでこんな事に、と思った瞬間に悟る。

 不審者がやったのだろうと。

 あわててチェーンをかけようとするが、間に合わない。

 交番から不審者が出て来る。



 仕方なくそこから走り出す。

 捕まったらどうなるか分かったものではない。

 機動力を失うのは痛いが、今は少しでも距離を取るのが先だ。

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