何処に行っても先回りされる
そうして自転車を走らせて。
角を幾つか曲がったところでブレーキをかける。
ありえない者がそこにいた。
「なんで…………」
暗い道の上、街灯によってかすかに浮かぶ人影。
まちがいなく不審者がそこにいる。
どうやったのかは知らないが、先回りされていた。
あわてて来た道を戻る。
別の方向から交番に向かおうとする。
気は動転しているが、よどみなく動く事が出来た。
だが、頭の中は疑問だらけだった。
「なんで、なんで…………」
なんで回り込まれたのか?
どうして自転車より速く移動してるのか?
わけがわからなかった。
その後も何度も同じようなことがあった。
自転車で進んだ先に不審者が立っている。
なにをどうやって回りこんでるのか分からない。
だが、男がどこにいくのか分かってるのか、必ずどこかで出会った。
おかしい。
そう思う。
なんでこうなってるのかが分からない。
ただ、不審者は確実にそこにいる。
向かった先で出て来る。
どうしてなのか分からない。
分からないが、確かにそこにいる。
恐ろしかった。
あるいは、おぞましかった。
怖いというより気色悪さを感じる。
なんでそこにいるのか?
どうして自分を追いかけてくるのか?
理由が分からない。
分からないからおぞましかった。