本気の風神フーカ
………本気を出すのは何百年ぶりだろう。もう昔すぎて覚えていない。いやそもそも私は本気を出した事が一度でもあったのか?分からない。だって私は今まで苦戦というものを経験した事がない。まぁ最近はあるんだけどね?とはいっても相手が、最上位神である母様だったり、暗黒神なのでこれは仕方がないだろう。そういった規格外の化け物以外で私は苦戦なんかした事がない。
私は、他の上位神よりも強く、神界を守護する守護天使達よりも強く、そして、四悪王よりも強かった。私が他よりも強いお陰で最上位神主に母様から仕事が沢山回された。敵を何度も殺して、世界を平和にしていったそのせいで私はいつしか天界の英雄として祭り上げられていた。ライ姉は喜んでたし私は嬉しかった。アフィーという可愛い後輩も出来たし悪い気はしなかった。
でも私はつまらなかった。別に戦いが好きという訳ではない。しかし、戦う相手全てが私より弱いのだ。だからすごくつまらなかった。とはいえ最上位神は私より実力は上だ。だからたまに手合わせをお願いするのだが、誰も応じてはくれない。唯一応じてくれる父様は凄い手加減をしてくる。そのせいでストレスはどんどん溜まっていくが、母様から仕事を回される。私はそんな生活に嫌気をさしていた。
そんな時に、事件が起こったのだ。それが邪悪な神達との戦いだ。父様との戦いで眠りについた暗黒神を復活させようと邪悪な神達が暴れ出したのだ。その事件を解決しろと母様に言われた時は、私は少し楽しみにしていた。数の多い邪悪な神達なら少しは楽しめるんじゃないか、そして、もしかしたら父様と互角の戦いをした暗黒神と戦えるんじゃないかと。期待していた。
しかし結果は、邪悪な神は雑魚ばっかりで、変な奴に惚れらるし、暗黒神は復活しないで結局私は本気を出す事が出来なかった。
それから私は堕落した。私は本気を出す事が出来ないんだ。そう思い私は戦う事を辞めた。
それから時はたち天界を追放され、夢の中で母様と戦ったり、暗黒神とも戦った。どちらも格上だった。本気を出せる相手だった。それでも私は本気を出さなかった。
いや正確には出せなかった。何百年も戦っていなかった事や、堕落した事で私の中に本気を出したいという意志が無かったので本気を出せなかった。
しかも、覚醒した事によりまた強くなり、本気を出す事なく暗黒神を倒してしまったのだ。これじゃやっぱ本気は無理でしょそう思っていた。
でも今は違う。暗黒神が覚醒したのだ。ただでさえ強い暗黒神が覚醒した。これなら私は本気を出す事が出来る。生まれて初めての本気が。
「暗黒神デモーニオ。私は本気でお前を殺す。」そう言うと、
「本気か。今まで一度も本気を出した事のない貴様の本気か。それは面白いな。しかし、俺様は本気を超えたお前と戦って見たいんだがな。どうすれば戦える?信者を皆殺しか?それとも姉を殺せばいいのかな?」そう言ってきた暗黒神に、
「やれるもんならやってみろよ。」そう言いつつ暗黒神を殴り飛ばすのだった。