罰ゲームで告白した陰キャが、実はハイスペック過ぎて、本気になってしまった件。
私……、佐藤 美佳は、罰ゲームで告白した。
今思えば、悪いことをしたしと思うし、後悔もしてる。
嘘の告白しちゃったこと。ちゃんとしたいとは思ってる。
きっかけは、クラスでイジメがあったこと。
大人しいタイプの井上さんが、派手なタイプの宇都宮さんに嫌がらせされたり、無視されたりしていたのね。
宇都宮さんと私は、仲悪くなかったんだけど、イジメとかそういうの嫌いだったから、井上さんを庇ったりしてた。
井上さんの上靴を隠して、靴下で校内を歩かせてた時は、やり過ぎかなって思って、上靴探してあげたり、井上さんをディスるチェーンメールをわざと私のところで止めたりしていた。体育のペアに誘ったり、移動教室に一緒に行ったりした。
井上さんもナヨナヨしてるのが悪いとは思うけど、
「佐藤さん。ごめんなさい。」
って、謝ってくれた。このコのモジモジした姿、実は可愛いのよね。だからか、宇都宮さんが嫌う訳。
まぁそこは、ありがとうだろっ!って
思ったけど…。
イジメ見るのが嫌なだけで、感謝されたい訳じゃないし。
でも、何でイジメを止める人がいないか。私は高校生にもなって思い知らされた。
中学までは、なぜかわからないけど、私が「やめてっ!」て言えばなんとなく収まってた。
でも、今回は違ってた。
「もう、ミカがいると醒めるぅ~!」
間抜けな感じで宇都宮さんが言う。取り巻きの女の子達も同調してる。
それ以来、宇都宮さんは、私のことを完全に無視するようになった。そうなんだ。イジメを止めると、ターゲットになっちゃうんだ。
宇都宮さんのグループは、私のことを無視する。他のクラスのコ達からも、なんだか余所余所しい感じがする。そんな日々が、数日間続いてちょっと辛くなってきた。
「宇都宮さん。」
直接言おうとしたが、無視される。
「別に仲良くしてとは言わないけど、普通にしてよ!」
やっぱり無視。
仕方ないのかな。何か実害あったら、なんとか証拠掴んで訴えれば良いや。私は、井上さんと仲良くしてれば良いかな。
それからは、休み時間は井上さんといたり、お昼食べたりしてた。静かだけど、悪いコじゃないし、なにより美人。
更に数日たって、手応え無くて面白くなくなったんだと思うんだけど、宇都宮さんが話しかけてきた。
「無視するのやめてあげても良いよ!」
「えっ、良いの?」
まぁ、今となってはどうでも良いのだけど。それでも、無視されるよりは良い。
「罰ゲームやってくれたらね。」
罰ゲーム?普通ゲームで負けた人がやるよねぇ?
「あの、陰キャボッチいるじゃん。」
陰キャボッチって…。
「誰よ。それ」
「あー、あそこで本読んでる奴。」
渡辺くんかな?確かに暗い感じだけど、あんまり話もしないし。目立たないし、すぐ帰るし。
正直彼のことは、あまり知らない。
「渡辺くん?」
「そ、アイツもなんか文句あるらしいのね。だ、か、ら」
なんでも、私が話しかけて無視した時、渡辺くんにじっと見られてたんだって。
渡辺くんにとっちゃ、言いがかりも甚だしいな。
宇都宮さんが、楽しそうに意地悪な笑顔を見せる。
「ミカはさぁ、外見だけは良いじゃん!」
ん、初耳。外見良いって、褒められてる?そんなことないよね。
「罰ゲームで、アイツに告白してよ!」
えー、なんで、断ろう。くだらない。
「やだよ」
「あ、じゃあ、もしやってくれたら、井上さんのもやめてあげる。」
「それは、…有り難いかな。」
面倒が減る。それに数週間一緒にいて、井上さんが辛く感じてたの知ってたし。
「でね。1ヶ月くらい付き合って、ミカのこと好きになってもらってから、ネタバラシしよう!」
「その前に、付き合ってくれないと思うよ。」
「言ったでしょ!外見だけは良いんだからアンタ。でも、フラれたらそれはそれで、キモ陰キャにフラれるアンタってことで、面白いよ。」
なんか、性格悪い。わかってたことだけど。
渡辺くんは、キモ陰キャなんて言われるほど、ブサイクな訳じゃなかった。でも、髪はボサボサで、制服もちゃんと着てなくてだらしない印象がする。
宇都宮さんは、そういう外見で人を判断するから…。
で、告白することになった。
「渡辺くん。話があるの」
普通、告白なんていったらすごく緊張するのだろうけど。まぁ、フラれた方が気が楽だし。どうってことなかった。
でも、嘘つくのは、ちょっと胸の奥がズキッってする。
人気のない校舎裏に呼び出して、
「私と付き合って!」
好きとは言えなかった。それが、私のささやかな反抗。
渡辺くんは、ちょっと驚いた顔してたけど、
「う、うん。僕で良かったら、いいよ。」
え?良いんだ。
ということで、付き合うことになった。
私の人生初の告白でできた彼氏は、好きでもなんでもない人で、後悔しかない告白で、後悔しかない思い出になった。
週末までは、特に何もなかった。ライン交換したくらい。
付き合ってるとはいえ、私もちょっと避けてしまっていたし、渡辺くんもあまり関わらないようにしてくれていたみたい。
正直、彼氏としての態度ではなかったけど、私にはありがたかった。けど、やっぱり宇都宮さんに強要されて、デートに誘うことになった。
土曜日はバイトらしくて、日曜の11時に待ち合わせした。
待ち合わせは、駅前の噴水広場。まぁ、定番ではある。
時間前に着いちゃったな。まぁ、良いか。
回りを見渡しても、何人か待ち合わせの人がいるけど、未だなのかな。
変わった感じのファッションの人もいれば、制服姿の女のコ、凄くセンスを感じるオシャレな人もいる。
町だなぁ。なんて思ってると、そのセンスある人がなんかこっちを見ている気がする。ナンパされる?いやいやいや、今日は着飾ってきたけど、私なんか、まぁ、ありえんか。
ー着いちゃったけど、待ってるね。
ってラインを送っておいた。
そのセンスある男の人がごそごそする。髪をきれいにセットして、服の着こなしもセンス良い。髪の毛ボサボサで、シャツがはみ出たりしている普段の彼とは違う。違うんだけど…。
「あ、やっぱり佐藤さんだった。」
あ、渡辺くんの声。
「えっ、渡辺くん?」
「うん、佐藤さん。オシャレだからわからなかった。一瞬そうかなって思ったから、目線送ってみたけど、誰?って顔で見られたし。」
そりゃ、無理やりとはいえ、人生初のデートなのだし、お化粧もするし、おしゃれもするって。
そうじゃないよ、こっちの台詞だよ。
「いやいやいや。渡辺くん。変わりすぎだって。」
「いや、佐藤さんも……。」
まぁ、可愛くなったと褒められてると文脈をよみたい。
告白をオッケーしてくれたということは、私のことを、少しは良いと思ってくれているはずだしね。
……。じゃないや。この付き合いは、そうじゃなかった。渡辺くんがなんだかカッコ良くて、浮かれてた。
ゲーセンに行って遊んで、お昼を食べて、映画をみた。
渡辺くんは、話題も豊富で、私を退屈させないように気を使ってくれて、ゲームも上手くて、何よりカッコ良かった。
私は、時間を忘れて、楽しんでしまってた。
映画見終わった後、グッズ買ってくれた。携帯ストラップなんだけど。
「バイトしてるから、これくらい買わせてね。」
悪いと思って、食事代も映画代もワリカンでお願いしていたら、ちょっとは男らしくしくしたいんだよね、って言ってた。
お揃いのストラップ。バカップルかよ!って言いたかったけど、実は嬉しかった。
帰ってからも、ずっと渡辺くんのこと考えていた。
昼御飯の時、店員さんがちょっと間違えたことがあったんだけど、怒ることなく、優しく言って対応してもらってた。
「腹立たないの?」
って聞いたら
「怒ったところで、しょうがないし。まぁ交換してくれるって言うからさ。」
優しいのね。ちょっと低い声も心地よかった。
手も繋げなかったな。って後悔したけど。
これは、恋じゃないって思い直すんだけど、
思い浮かぶのは、渡辺くんのはにかんだ笑顔だけだった。
次の日から、渡辺くんは、髪型や身だしなみをキチンとするようになった。本当は男前の渡辺くん。
「渡辺くんって、ミカと付き合うようになって変わったよね」
事情をよく知らないクラスメートに言われた。
「渡辺くんって、カッコ良かったんだ。私も狙えば良かった。」
とか言われて、私のことじゃないのに、何だか嬉しかった。
宇都宮さんは、何だか悔しそうで
「こんなはずじゃぁ無かったのに、チッ!」
とか言ってて、ちょっとだけザマアミロって思ったよ。
渡辺くんとは、一緒に昼御飯食べたりするようになった。井上さんも一緒だったけど。
井上さんと渡辺くんは、好きなアニメとかゲームが一緒で、二人で話が盛り上がってた。
会話にあまり入っていけなくて、何だか、心がキュって締め付けられる感じで痛かったけど、私が彼女といっても、仮なんだし、仕方がないかなって思った。
でも何でこんなにモヤモヤするんだろう?
それからは、休みの日には、一緒に遊びに行き、何気ないこと話して終わる。
渡辺くんは、いちいちカッコ良くて、優しくて…。
まだ、手も繋げてなかったけど、楽しかった。渡辺くんとデートする休日が楽しみでしょうがなかった。
もう、寝る時以外は渡辺くんのこと、考えてた。ううん。たぶん夢の中でも彼のこと考えてた。
ある日、球技大会で男子はサッカーだった。渡辺くんがゴール前でボールを持った。
頑張れっ!手に力が入る!
そして、渡辺くんはサッカー部の人をかわしてゴールを決めた。
「やった!」
思わず声が出たけど、渡辺くんはこっちを見て笑ってくれた気がした。嬉しかった。体が、熱くなってドキドキしてた。隣にいる井上さんと手を取り合って喜んだ。
授業が終わって放課後、一緒に帰った。
「今までさ、球技大会とか適当にやってたんだけど。」
「そうだね。いままで全然目立ってなかったのに、今日は、その、……かっこよかったね。」
「彼女の前で良いとこ見せたかったんだよ!」
えっ!彼女…。なんだかくすぐったい。
体が熱くなる気がする。ゴール決めてくれたときと同じような感覚。
この感覚、恋なんだと思う。嘘の告白したことが頭によぎる。
だから今、一つ聞いておかないとダメなことがある。
「どうして、どうして私と付き合ってくれたの?」
渡辺くんは、なんだか、困ったような感じになった。
「じゃぁ、どうして?っていうのは言いっこなしか…。」
なんか、もぞもぞ言ってるけどよく聞こえない。
「井上さんをさ、その助けてくれてた…。」
えっ?井上さん…。
そっか、渡辺くん。そうだね、井上さんが好きだったのね。サッカーの時、隣に井上さんいたし…。
井上さんへの笑顔だったのかな?井上さんって実は凄い美人だし…。
実は、凄い格好いい渡辺くんとお似合いなのかも…。
あ、だから、私と付き合ってくれてたんだな。井上さんを守ってくれたから…。
井上さんと話している時、とても楽しそうだった。私にはあんな顔見せてくれたことない。
って、付き合ってまだ間もないけど…。
それから、どうやって家に帰ったのか、何を話したのか全然覚えてなかった。
なんか、井上さんがいじめられてる感じが気になってたけど。
女の子の関係性がいまいちわからなくて。
で、みてたら、佐藤さんが助けてて。あぁ、僕も行くべきだったかな。
でも、そこで止めにいける佐藤さんって凄いね。
渡辺くんはそんなことを言っていた気がする。井上さんのことも話してた。
女の子とアニメの話ができるなんて感動だよ。とか、聞きたくなかったけど。
彼の前で泣かないように、笑っていよう。頑張ったよ。
気がついたら、部屋のベッドの上で、一人で泣いてた。ずっと泣いてた。
次の日、目は腫れてたけど、休むのも変だし、学校へ行った。
「佐藤さん。昨日、なんだか変だったけど、大丈夫だった?」
渡辺くんが聞いてくれる。優しいのねこの人。優しさって残酷なんだな。
「ん、大丈夫。」
「あ、そうだ。ミカぁ!」
宇都宮さんだ。
「そろそろ、ネタばらしじゃないの?」
こんな時に、いやなことを言う。この人の才能なのかな?
「うん。わかってる」
でも、そうだ。私が悪いもの。イジメられたくないからって、渡辺くんの気持ち考えてなかった。
やっぱり、断るべきだったよね。
「渡辺くん。話があるの」
呼び出したのは、以前告白した場所。校舎の裏。私が失恋するには相応しい場所。
宇都宮さんも多分どっかで見てる…。
「知ってるよ。あれでしょ。宇都宮さんの…」
知ってたの?渡辺くんに先に言われた。渡辺くんが続ける。
「だから佐藤さんが、僕のことなんか好きじゃないこと。知ってた。」
え、違う!あ、確かに好きじゃなかったけど。いまは…。
涙がでる。昨日枯れちゃったと思ってたのに。声にならない。
「僕たち、付き合い始めたけど、ちゃんとお互いの気持ち言ってなかったよね。」
あ、確かに。私は、渡辺くんのこと、四六時中考えちゃうくらいなのに…。
「だから、言うよ」
あ、これで、終わりになるんだ。フラれて終わり。宇都宮さんも、満足だろうな。
「佐藤さん。」
「っ、はいっ」
ちゃんと、終わりにしよう。私の気持ちは伝えたかったけど、
「好きです。」
うん、それで、そうやって、ちゃんと井上さんに気持ち伝えてね。
「はい。じゃぁ……。」
言葉が紡げない。……って、なんて?
「聞こえなかった?もう一回言うね。佐藤さんが好きです」
「えっ。なんで?私…」
「佐藤さんの気持ち、聞かせてくれないかな。たとえ、僕のことなんか…」
そんなの、決まってる。でも、私が言って良いの?渡辺くんを見る。
渡辺くんは、目をつぶって、震えているように見える。
あ、渡辺くんも不安だったんだ。私のこと、ちゃんと好きだったんだ。うれしいな。
「好きだよ。めちゃくちゃ好き。なんかもう、心の中ぜんぶ渡辺くんでいっぱいになるくらい好き」
わぁ!って歓声がして、校舎の影から人があふれてくる。クラスのみんなが聞いていたの?
宇都宮さんは、押されて倒れてる。大丈夫かな?
「みかぁ!やったじゃん」
「私たちも、無視とか、ホントはいやだったの」
「無理矢理告白とか、やり過ぎって思ったけど、渡辺くん実はカッコ良かったし、ミカもまんざらじゃない感じで」
みんな応援してくれてたの?
わかりにくいよ。でも、もう、良いか。
あ、井上さんも喜んでくれてる。ありがと。高校でも、ちゃんとした友達ができたよ。
「じゃあ、なんで、嘘の告白って知ってて、オッケーしてくれたの?」
「言ったろ、井上さんを庇ってて、優しくて強い人なんだなって思って、気付いたら好きになってた。だから、嘘でも何でも嬉しかったんだ!」
あ、そうなんだ。でもさ、井上さんが……。ってもぞもぞ言ってたら誤解しちゃうよ。
井上さんのこと庇って、私もターゲットになって、つらい思いもしたけど、報われたのかな。
「佐藤さんが、僕のことなんか好きじゃないこと知ってたからさ。本気出すことにしたんだ」
そっか、それだけのハイスペック見せつけられて、好きにならない女の子がいるだろうか?いや、いないよ。
本気をだした渡辺くんは、勉強も学年1位で、クラブの助っ人なんかもこなして、サッカー部を全国大会に導いたり、宇都宮さんがつれてきたヤンキーの皆さんを返り討ちしたりしてた。
宇都宮さんというと、あれからクラスではあまり相手にされなくて、あの取り巻き達の宇都宮軍団も解散、そしてヤンキーの皆さんを連れてきたことで停学処分になって、自主退学してた。その後のことは知らない。
そして渡辺くんは、クラスの、いや学校中の人気者で、かわいい?彼女がいて、リア充中のリア充、百充の王になった。
かわいい?彼女。って自分で言う?って言われるけど、渡辺くんに見合うように頑張ってるのよ。
渡辺くんは、かわいいって言ってくれるし。
ところで渡辺くんって何者なの?って思ったけど。
あまり深くは考えない方が良いかもしれない。
何故か、高校へは越境入学していることも
たまに、いい大人が、渡辺くんに丁寧に敬語で接していることも
校長先生が、腫れ物を触るように接してたことも
サッカーがプロ級にうまいことも。
全国模試上位の成績なことも。
それら全てを隠していたことも。
普通の学生生活を送りたかった。なんて謎なことを言ってた。なにそれ嘘でしょ?って思ったけど。
一つだけ
「俺は、ミカに好きになってもらうために本気になったんだよ」
ってのは、真実らしい。
あ、完璧超人の渡辺くんだけど。
手をつなぐ時、凄く汗かいちゃってたり、
キスする時、歯が当たったりしちゃってた。
…恋は、不慣れらしい。そんなところ凄くかわいいんです。
あと、内緒だけど、まだずっと先の話なんだけど・・・。
ブラのホックが外せなくて、めっちゃ焦る渡辺くん。かわいかったなぁ。
読んでいただきありがとうございます。
美佳の恋心、うまく書けた気がしませんが、せっかくできた作品だから、投稿します。
評価とかブクマとかしていただけたら、めっちゃ嬉しいです。
あんまり自信ないので、評価は、イマイチなら星1つでも2つでもかまいません。
反省して、次に活かしますので。
では、またの作品で。
これまでの作品も作者ページからよろしくお願い致します。