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外道号! 碓氷峠の激闘

作者: 川獺右端

この物語は、くにたちやすお先生作 (くろがね)の軌道要塞~Panzerzug Fortress~ のファンSSである。

 外道号はモックモックと煙を吐き出しながら群馬の山地を行く。

 和国の中央管制局に北陸本線を南下する正体不明アンノウンの大型軌道要塞の存在が付近の住民から通報され、それの撃破に向かっているのだ。


 余談ではあるが外道号はあだ名だ。

 本来は奇兵号と名付けられた王道級軌道要塞の二番編成なのだが、列車長である相馬甚太郎の戦い方があまりに外道なので、新聞各紙に外道号と呼ばれ定着してしまった。

 彼の外道な戦い方は今回ご紹介する『碓氷峠、ユーラフリカ秘密軌道要塞事件』で明らかになることであろう。

 余談終わり。


 外道号は王道級二番編成とはいえ、堂々の押し出しの王道号とは姿があまりに違う。

 パワーユニットなどは同じだが、車高がやけに低い。

 黒い装甲板で覆われたそれは、鐵で出来たウナギのような印象がある。

 車高が低い分、重量も軽く、全部に突き出したノーズが流線型を描いて、とても未来的なフォルムを描いている。

 異世界に住む読者諸君が見れば、新型新幹線のぞみのN700系に似ていると思われるマニアな方もおられるだろう。

 黒い新幹線を思わせる外道号はモクモクと煙を吐き出しながら山岳の上のレールをくねりながら進んでいる。


「甚太郎、もうすぐ碓氷峠だ。止まって釜飯を買おう」

「そんな暇があるかっ、戦闘後に買ってやるから、今は働けっ」

「くそう、お腹がぺこぺこだよ」


 先頭車両の指揮車でぶつぶつと文句をいう副官の新藤まなみを見て列車長の甚太郎はため息をついた。


「一番編成の王道号に良い奴は全部持っていかれて、奇兵号にははずればっかりじゃねえか」

「あはは、甚太郎が一番はずれだ」

「てめー、まなみっ、給料さげんぞっ!」

「うへえ、それはかんべん」


 外道号で働く職員はもれなく軌道軍のはずれ者ばかりだ。

 基本的に、王道号の活躍で新設された計画外のこの列車自体が、はずれ物とも言える。

 最新鋭の技術を山盛り積んではいるが、軌道要塞としてのバランスはあまり良くない物である。


「警笛一発~!」


 ピーーーイ!


「敵軌道要塞目視! ユーラフリカ式だなあ」

「でけえな、ユラフリくせえ構成の重砲撃要塞か」


 峠の向こうに敵の軌道要塞が見えた。

 どかどかと何階建てにも増設し、中央列車には三連砲塔が見える。

 大型の車体に厚い装甲を貼り付けて大型の蒸気機関で動かしている、大味な感じの軌道要塞だ。

 射程距離外である事を確認して甚太郎は外道号を止めるよう機関士に命令した。


「まなみ、明滅通信。『ナンジ、ワガクニノ、リョウドヲ、シンガイセリ、ソウキュウノタイキョヲ ネガウ』」

「了解ー」


 まなみが発光信号のスイッチを素早く叩き、敵軌道要塞にライトの明滅で信号を送った。

 敵の軌道要塞からは返信は無かった。

 最後尾の列車の天井が開き、ジャイロコプターが三機発進するのが見える。


「問答無用かよ、面白え、奇兵号なめんなっ」

「外道号なめんなっ、とっととぶっ壊して釜飯ランチだ」


 この世界の領土は他国とレールで繋がっている。

 どんな離れた大陸でも、海上にレールがあり繋がっている。

 そのため、各国は列車型の軌道要塞を作り、これを持って侵略戦争をするのである。

 まこと野蛮な世界なのだが、しかたがない、レールがあるのだから。


 ちなみに、このレール、壊れない。

 時々新しい路線が原野に発生したりする。

 なんであるかは、学会でも諸説あり、太古超文明の遺産とも、異星人の技術とも言われているがよくわからないのだ。

 この世界の人間は、機関車を作り、人々を運び、物資を流通させ、そして戦争をする。


 レールで世界が繋がっている物だから、時々秘密兵器の軌道要塞のテストの為に他国の領土へ進行することがある。

 今回の軌道要塞もそれであろうと甚太郎は考えた。


「奇兵号全力後退、まなみ、鐵路姫レールプリンセスを出せ!」

「あらー、レルプリ出しちゃう~?」

「空中戦だ、サファイヤを出して蹴散らせ。ルビーとトパーズも起動しておけ」

「りゅうかーい。三号格納車、鐵路姫レールプリンセスサファイヤを起動、目標敵ジャイロコプター、撃墜を許可します」

『第三格納車、了解、レルプリ青、発進しますっ』


 見よ、全力後退していく外道号の三号格納車の天井が開き、中から青い衣装を纏った美少女が現れる。

 彼女こそは外道号の邀撃ようげきを担当する鐵路姫レールプリンセスの一人、クールサファイヤなのだ。


 説明せねばなるまい、鐵路姫レールプリンセスとは蒸気と歯車でできた人造人間オートマトンである。その力は五万馬力、超小型蒸気機関を液体石炭で動かし、蒸気頭脳で自立判断して敵を討つ、無敵の蒸気兵器なのだ。

 そのなかでもクールサファイヤは飛行機能を持ち航空敵勢力を打倒する頼もしい味方だ。


 クールサファイヤはエレベーター上で腕組みをして天井まで持ち上がり、顔を上に向けた。

 豊かな青い髪、顔の上半分はバイザーで隠れているが、それでも美少女な事は隠すことができない。


『目標、敵ジャイロコプター。ロケットエンジン起動』


 クールサファイヤがそうつぶやくと、背後に背負ったロケットエンジンから噴流が吹き出し、彼女は空に舞う。


『今の気持ちは平静、クールサファイヤ、行きます』


 轟音と共にクールサファイヤは飛び立ちジャイロコプター目がけて飛ぶ。


 外道号は後退を止めた。


「さーて、鐵路姫レールプリンセスにばっかり頼れねえよな。脚架きゃっか展開、七号車震雷砲発射準備!!」

「りょうかーい、七号車、震雷砲発射準備、目標敵軌道要塞」


 見よ! 7号車の車体が二つに割れるとそこから巨大な大砲が現れた。

 外道号自慢の超長距離巨大大砲、全長五十メートル、口径八十糎の震雷砲だ。


『蒸気頭脳、弾道計算に入ります。計算結果は三十秒後』


「いひひ、サファイヤが暴れ回ってるのを目くらましに、震雷砲をぶち込んでやる」

「そういう卑劣な事ばかり考えるから外道号って言われるんですよ」

「ほっとけ、人の国のレールを侵害してる奴が悪いんだ」


 外道! 甚太郎はなんという外道なのか。

 鐵路姫レールプリンセスの戦いを目くらましに射程外から大口径大砲震雷砲を敵軌道要塞にぶち込もうとは、軍人の風上にも置けないとはこの事であろう。

 だが、読者諸君よ、戦争とはそういう物なのである。


 さて、碓氷峠の戦いの顛末はまた次回である。

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― 新着の感想 ―
[一言] スチームパンク良いなぁ 亜種のトレインパンクとかレールパンクとか呼ばれるやつだな 最早パンク系小説は商業方面ではほとんど見かけないから流石小説投稿サイト 5万馬力とか6万5千馬力のガンダム…
[良い点] 3000文字弱なのにしっかりと世界観が伝わってくるのがすごいなあ、とおもいました おもしろかったです 内容としてはノリが軽いだけに、こうした固い文章で味付けされるのはさすがだなあとおもいま…
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