プロローグ
ふいたタバコの煙が夜の暗がりと同化する…
俺は夜の闇よりも黒い漆黒のスーツを肩にかけ、雲がかかった月夜を仰ぎ見ていた。不況のせいでシノギが減り、兄貴分から恫喝される毎日。全くもって俺のせいではないのだが、ため息ひとつつくものなら指飛ぶ。家に帰りタバコをふかすその一瞬まで、気を緩められない。
それが、 新堂組若衆「西条 強」。御歳28歳極道の日常だ…。
「……よし。やるか……。」
俺は存分に堪能した煙草を皿に押し付けた。
そして意を決するように部屋に戻る。
机の上には予め起動準備をしておいたPCが置かれている。電気代を極力かけないため、部屋の電気は付けない。PCの電源を入れ、画面のあかりだけが部屋を照らし出した。
俺は使いなれ、無数の手垢がついてるであろうマウスを振りアイコンをタップする。気にはならない……それが漢ってもだと心底思う…。
「さあ……今日もお楽しみだ。存分に俺を堪能させてくれや……。」
誰も聞いていないであろう部屋に、取り立てで培った低いドスの効いた声が響く。
そして、画面から映像が映し出され、1人の女が微笑みかけた……。
「ラブリーファンタジー! 今日もラブファンの世界で元気に愛を育もう♡」
「今日もエシルたん……可愛いやっちゃなぁ。」
俺は、元気に笑顔を見せる女に向かってニヤリと微笑見返した……。