好奇心
ふと、僕はこんなことを思った。
「包丁で腕を刺したらどうなるのかな」と、
別に何か嫌なことがあって自傷をしようと思ったわけでもヘマトファリアというわけでもない。血は僕にとって苦痛のイメージしかない。ただ、水が低いところに流れるように、それはそれは自然に僕の頭の中に降りてきた。事実、これは学校に向かって自転車を走らせている時に思い到ったのだ。僕は急ブレーキかけて家の方へ意識を向けた。
普段の僕は真面目で誠実だ。提出物は忘れないし、先生に怒られた記憶も友達と喧嘩した記憶もない。だから遅刻なんてしたことがなかった。と言うよりはしたくなかった。そんな僕がなんの疑念も持たずに家に戻った。遅刻は免れない。それでも僕は家に戻った。お腹が減ったらご飯を食べるように、尿意を感じたらトイレに行くように。wantとmustの戦いなど八百長よりもつまらない。僕は僕の好奇心の奴隷と成り上がっているのだ。
家に戻る途中でつんざくような人工的な音が耳に入った気がした。どこか聞き覚えがあったような気がしたけど振り返る余裕はない。そのあとビリビリとした振動が伝わってきた。『がしゃーん』とも『ぐしゃ』ともなんとでも形容できそうなものだった。白と黒のツートーンの車や、白と赤の車が通ったことなど知る由もない。
なんとか家についた。急いで中に入る。いつも僕が汚している家なのに今日はどうしてだか違う気がする。僕の匂いのはずなのにホテルの消毒の匂いのような、生ゴミの匂いのような、そんな感じがした。キッチンに行って、包丁の入っている戸を開けるときっちりと3つちょこんと可愛らしく収まっていた。
そのうちの1本を右手で持ち上げた。僕は電気をつけることすら忘れていたのに包丁の刃先には人を誘惑する光がしっかりと宿っていた。僕はゆっくりと座る。そして左腕を床において、右手で包丁を裏手持ちにしてネクタイを噛んでおいた。目の前でちらつくのが目障りだった。そうすると恐怖が体を包んだ。この右手を重力に逆らわずただただ落とせば血が出る。血は怖い。今まで何度も自分の血を見たことがあるがどうしても慣れなかった。それでも右手を落とすべきだと思った。僕の好奇心を軸に周りには背徳感、優越感、満足感、などいろんな感情が土星のリングのように回っていた。それはいつしか化学反応をし経験したことのない感情を僕に与えた。
どのくらい時間がたっただろう。汗をかいているのか下半身まで濡れていた。
「ぐしゃ」
なんの音かわからなかった。周りを見渡してもなにも見えない。それもそのはずだった。僕の目の前は鮮烈なまでの赤だったのだ。僕にはそれが血であるということに気づくのに時間がかかった。その時の僕は苦痛を感じるばかりか官能的な気持ちに支配されていたからだ。そのまま寝そべってみる。身体中に血がついてねっとりとしているのが面白かった。ぐるぐる回って血を身体中になすりつける。青色のワイシャツが赤に染まり、元々、赤だったチェックのスカートが妖艶さを放っていたのがわかった。僕は生まれて初めて笑った。
こんにちは、上坂ふらりです。こんな小説を読んでくださってありがとうございます。今回の小説は私が学校から家に帰る途中で思いつきました。
この小説で言いたいことは2つあります。
多分、これを読んでいる時、無意識に男性を主人公にしませんでしたか?特に男性の皆さん、女性はこんなことはしない、とどこか決めつけていませんか?それが言いたいことの1つ目です。
2つ目は、他人を理解することは不可能だということです。だからお互いに手を伸ばし合い知ろうとするのが大切なのです。
本来ならこんなところで伝えたいこと書くのは変なのですが、いろいろ考えた結果書くのが自分のためになると思って書きました。
よくわかんない小説を書く男子高校生ですがこれからもよろしくお願いします。