7日間で変貌した世界
「もし、この世界が水に覆われたら。もし、不毛の大地へと変貌したら。今の生活を続けられなくなったとしたら。これらの不安が現実のものとなったら、人はどうするだろう。ある人はうろたえ、嘆き悲しむだろう、またある人は対応し力強く生き抜くだろう。」この物語は空想であって現実には起こらない、私はそう思っていた。世界が今とは違うものだったらどうであったかを想像するのは好きだった。楽しいし、現実逃避にもなる。・・・ただここまでの話は一週間前までの話。私が大好きな物語は想像の枠を超え、現実となって私の前に広がっていた。一週間前、世界は変化し始めた。1日目、海の水が増え始めた。最初は満潮と思われていたが、どんどん増える水を前に人は恐れた。2日目、水は増え続け、海沿いの町へと迫っていた。町の人々は荷物をかかえて高台へと移動した。3日目、あちこちから木やつた、花が芽生えた。都市にも木々が生え、家やビルにも侵食していった。4日目、植物は成長を続け、水が海沿いの町を飲み込み、川から溢れ、街や都市にも行きついた。人は逃れてきた人々を受け入れ対応を模索していた。5日目、植物の成長は止まり始めたが水はどんどん侵食していた。ついに建物の1階部分が埋まるくらいになった。6日目、水は2階部分を埋めるほど流れ込みやがて止まった。7日目、なにもなかった。見渡す限り海と人工物、植物に覆われた世界。人は唖然とし、うろたえる者、嘆き悲しむ者、言葉が出ない者、皆状況を飲み込めていなかった。勿論、私もその一人だ。「まさか、本で読んだことが現実になるなんて・・・。嘘でしょ・・・。」一通り見渡してから私は言った。1週間で世界が変化するなんてまるで創世記の天地創造だと思った。いくら嘘であってほしいと願ってもその願いは届かず、与えられた状況で生き抜くほかない。周りではこれからをどうするかを話し合っていた。海に沈んだ暮らしを取り戻すのか、新しい暮らしを作り上げるのか、話し合いは夜通し続いたが結論は出なかった。徐々にとはいえ変化してしまった生活はもう戻らないだろう、と心の中に浮かんだがとてもそれを口にできる雰囲気ではなかった。しばらくは話し合いを聞きながら対策を考えていたがふとあることを思い出した。「みんな・・・大丈夫かな。」そうつぶやき友人達へ連絡をし始めた。